朝起きると、また昨日がやってきた。
古典の先生のネクタイも同じ柄、体育館の会話地震火事も昨日と同じ。
来るはずの明日がこない。
明日の私は、どうなってしまったの?
「時をかける少女」大林宣彦監督1983年104分
原田知世、高柳良一、尾美としのり、岸部一徳、根岸季衣
(画像お借りしました)

公開時、薬師丸ひろ子さんの「探偵物語」と2本立てでした。

ラベンダーりといえば、この作品。
80年代の匂いがぷんぷん漂う懐かしさ。
フラスコからただよう白い煙、紅茶の湯気、たき火の
一人の少女が下駄を鳴らしながら、尾道の石段を降りていく。

劇場でエンドロールの斬新さに驚いたんです。
エキストラの若者たちがリズムをとりながら、カメラ目線で歌う姿。
学生たちの名前がずら~~~~と並びます
あぁ、監督って、若い人たちを応援する気持ちの強い人だなぁ。
愛情たっぷりだなぁ・・・って。
しかも締めくくりが、原田知世さんの笑顔でしょう?
画面いっぱいに広がるやかさとさ!
新しさ×ノルタルジック=大林宣彦ワールド
あらためて、新鮮な映像だなぁと再認識しました(^ー^)


【ネタバレ感想】

本編が始まる前に、テロップが映ります。
現実よりも理想の愛を知ったとき
それは幸福か不幸か?

昔、どういう意味なのか、ピンとこなくて。
ただポカーンとみていたんです。

今は、せつない幸福って思える。

私が大好きな場面は桃栗三年柿八年のシーン。

女子高生 和子ちゃんが覚えている幼い日思い出

ひなまつりを幼馴染の男の子と2人きり。
の晩、障子の外に庭の枝のシルエットがうつります。
ホラー風味ミステリアスなんです。
雛段飾りと赤い毛氈、晴着を着ておめかしした女の子。

童が2人並んで歌の本の端を持ちながら、一緒に口ずさむ唄。

「もも、くり、3ねん。 かき、8ねん。ゆずは9年でなりさがり~」

追いかけっこして、鏡台が倒れる。
割れた鏡の破片で手を怪我する女の子。

破片をとってあげようとした男の子も、親指を切る。血がにじむ。

互いの指の傷をなめあう。
こうした無邪気さの中にあるエロティックな妖しい味わい。
秘め事のようなシーンが面白い。

和子ちゃんの幼心に芽生えた淡い恋心

その特別な記憶が、もしも別人との思い出だったら・・・?

「あなたは昔から優しかったわね」
謎めいた同級生が、初恋の相手だと思い込んでいたのに。。
彼の親指をじっと見つめても、あるはずの、傷がない。
別の人の親指に見つけてしまう。
この衝撃!
はっとして、現実記憶をみくらべる原田知世さんの表情。

「まさか、そんなはずないわ」


から

「そうだったのね」

に変わっていく。

理想の愛と大切な思い出が、すーっと遠ざかり小さくなっていく。
現実を知った動揺と、哀しみ。
ぐっと成長した瞬間がみえますねぇ。

謎の青年の言葉が、しくよりそいます。
「あの歌の続きはウソじゃない。僕の本当の気持ちだよ。」

好きな人と一緒にすごす幸せな時間、
「時よこのまま止まって!」と願う。

でも、非情にも、現実の時計の針は進んでいく。

時間はどうしてすぎていくの?
「過ぎていくんじゃない。やってくるものなんだよ。」

ふたたび時がめぐりあう優しい結末。
ほのぼのと温かい気持ちになります。

今はまだ互いに気づかなくても、
きっと2人はこれから・・・


未来に対して
「若者よ、怖がらずに希望を持って歩いていきなさい」
そんなメッセージを感じるSFファンタジーです。

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