「おぉ!色の美しいサイコだ!」
お馴染みの音楽、台詞、場面.。
だけど、
一体私は何を見せられてるんだろう?
モノクロの世界からカラフルな世界へ。
明るい金髪のマリオンが
ピンク色のスーツに身を包んでる!
襟元は大きく開き、ミニ丈のスカート、
まるでバービー人形みたい。
しかも、服を脱いだら緑色の下着。
 

 

 
サイコ
ガス・ヴァン・サント監督
1998年
ヴィンス・ヴォーン
アン・ヘッシュ
ウィリアム・H・メイシー
ヴィゴ・モーテンセン
ジュリアン・ムーア

 

 
主人が心理スリラーの傑作「サイコ」を
レンタルしてきました。
 
「ヒッチコックの代表作なのに
観たことなかったから」
 
ところが!
 
「これヒッチコックじゃないよ(笑)」
「ほんとだ!しまった。間違えた(汗)」
 
サイコの映画感想は↓こちらです。
「でも、同じ食材で別の味付けを食べたい♪
むしろ間違えてくれてラッキー!
観終わったら貸して
 
ガス・ヴァン・サント監督が
ヒッチコック監督に捧げた映画、
美味しくいただきました(*^。^*)
 
【ものがたり】
会社の金を横領して逃走する女。
雨宿りで立ち寄ったモーテルで、
女の運命が一転する。
 

  感想

 

「金で不幸を避けられる」

と、成金男。
「薬で不幸を追い払える」
と、同僚。
 
「人間は何からも逃れられない」
と、ノーマン・ベイツ
 
本家「サイコ」では
アンソニー・パーキンスが演じ、
神経質で抑圧された男の内面に迫っています。
今作ではヴィンス・ヴォーン
現代風なノーマンを演じています。
がっしりした体格、むっちりとした肉感的な男、
抑えた性欲怯える子供の顔が
交互に出現します。
 
の風景からビルの一室へ。
ブラインドが半分下りた窓から、
部屋へ入っていくカメラワーク。
 
会社のお昼休みに逢引きするカップル
アン・ヘッシュの瑞々しい肌。
ヴィゴ・モーテンセンの美しいこと!
扇風機がまわる蒸し暑い部屋。
昼食も忘れて、肌を重ねていたようです。
サンドイッチにはハエが。
(ラストと繋がるカットに、ときめきます)

女はこんな状況から抜け出したい!

隠れてコソコソする関係から、
堂々と恋人として付き合いたい。
 
そんな欲求が高まったとき、
向こうからきっかけがやってきた。
 
白い歯でニヤつくセクハラ顧客。
札束をちらつかせる。
マリオンは、ネコババした金を手に街を脱出する。
運転席でハンドルを握っていると、
頭の中の妄想が
次々と湧いてくる。
 
サングラスをかけた警官に呼び止められ、ドキリ。
 
不安になってミラーをチラ見したかと思うと、
顧客が悔しがる顔を想像し、
してやったりの笑みがこぼれる。
運転と妄想に疲れてきた頃、
追い打ちをかけるようにが強くフロントガラスをうちつけ、
モーテルの赤いネオン
吸い寄せられるように車は横道へ。
モーテルの管理人は、愛想笑いを浮かべ
白い歯がこぼれる。
「12室全部、空室なんですよね。」
 
鳥のはく製にかこまれた応接間のシーン。
シャワーシーンよりも100倍怖い
大好きな名場面です。
人里離れたモーテルを経営するノーマンは、
母と二人暮らし。
マリオンは慰めるつもりでかけた言葉。
しかし、彼の神経を逆撫でする。
お友達と出かけたりしないの?」
 
「息子にとって一番の友人は母親さ」
 
マリオンは急に食欲がなくなり、サンドイッチを皿へもどす。
 
「母を置いて出ていけないよ。
一人で可哀想だ。ほっとけない。」
 
どこかへあずけてみたら・・・?」
 
「みんな、施設のことを『どこか』っていうよね。
親切な顔をして
遠回しに言うんだよね」
 

愛想笑いをしていた男の目つきが鋭く光る

 
マリオンは、彼の顔をいぶかし気に見つめ返す。
 
自分の失言にハッとする。
髪に手をやりながら、目が泳ぐ。
 
「悪気はなかったの」
というのが精一杯。
 
この気まずい緊張感と異常な気配から
早く逃げ出したい!
 
自分の部屋へ急いでもどるマリオン。
 
応接間の絵をはずすノーマン。
眼が光る。荒い息づかい・・・
シャワールームのカーテンが素敵です。
幾何学模様で、キラキラ光沢があって。
暑いシャワーでほっとしたのも束の間、

人影が万華鏡のように映る!
 
どすぐろい雨雲
大きな肉切り包丁
不思議なイメージカットが切り替わる。
 
ガス・ヴァン・サント監督ワールドです。

そして、一気にの世界に。
 
マリオンの彼氏サムが働く雑貨店では、
客と店員が殺虫剤の話をする。
 
「虫も人も死ぬとき
苦痛を伴うのはダメよ」
 
こういうブラックユーモアが面白い。
行方不明の姉をさがす妹。
ジュリアン・モーアが演じています。
幾何学模様のシャツを着ているのが、印象的。
 
「モーテルの母子が、
姉を襲って大金を強奪したのかも?」
 
仮説をたて、
モーテルへ乗り込んでいくが・・・。
 
 
ヒッチコック監督の描いたは、
真っ黒に口をあけた底なし沼の
恐ろしさがありました。
 
ガス・ヴァン・サント監督のは、
なんとなくロマンティック
見えて不思議です。

 

 

色のあるサイコは、
怖くて美しいアートホラーでした。