四万温泉へ向かう道は、中之条の市街地を抜けると四万川に沿って山あいへと続きます。
標高は約650〜700m。
緑に包まれた道を走っていると、「本当にこの先に温泉街があるの?」と思うほど静かな景色が広がります。
この日は、なかなか本気の雨。
近くの山々は真っ白な霧に包まれ、木々の緑はいつも以上に鮮やか。
まるで水墨画の中を走っているような幻想的な景色でした。
四万温泉に着くと、まず空気が違います。
雨に洗われた澄んだ空気を深呼吸すると、旅の疲れがすっとほどけていくようでした。
駐車場から温泉街へ向かうと、細い路地の両側には昔ながらの商店や土産物店が並び、どこか懐かしい雰囲気。
「こういう温泉街、最近は少なくなったなあ。」
と、つい足を止めながら歩いてしまいます。
路地を抜けると、川沿いに石造りの共同浴場「河原の湯」が現れます。
目の前には四万川のせせらぎ、背後には旅館街。
四万温泉は昭和29年(1954年)には優れた環境が認められ、国民保養温泉地第1号に指定されました。
落ち着いた木造建築の旅館、近代的なホテル、歴史と新しさが調和している温泉郷です。
雨の日は霧も加わり、温泉情緒はさらにアップしていました。
河原の湯は無料で利用できる共同浴場です。
石けんやシャンプーは使えませんが、その分、源泉そのものの良さをじっくり味わえます。
共同湯をあとにして再び路地を歩くと、鮮やかな赤い欄干の慶雲橋が現れます。
橋を渡った瞬間、四万温泉のシンボル・積善館が目の前に。
創業は元禄7年(1694年)。
本館は2022年に群馬県の温泉宿として初めて国の重要文化財に指定されました。
雨に濡れた木造建築と霧に包まれた山々の景色は、まるで映画のワンシーンのようでした。
積善館でぜひ入りたいのが「元禄の湯」。
レトロなアーチ窓と高い天井が印象的な浴室は、大正ロマンを感じる趣ある空間です。
浴場を含む建物の一部は国の登録有形文化財となっており、歴史を感じながら四万の名湯を楽しめます。
四万温泉の泉質は塩化物硫酸塩泉、温度は40~80度の高温が特徴。
湯はやわらかく、じんわりと体の芯まで温まり、湯上がり後も心地よい温もりが続きました。
四万温泉は、豪華さや派手さではなく、静かな時間を楽しむ温泉地です。
雨に煙る山々、懐かしい温泉街の路地、共同湯、そして赤い橋の先に佇む積善館。
その一つひとつの風景が心に残り、帰る頃には「また来よう」と自然に思っていました。
次は晴れの日も歩いてみたい。
でも、霧に包まれた四万温泉にも、また会いに来たくなる――そんな魅力あふれる温泉地でした。








