AMPUTECHTURE/THE MARS VOLTA | 10,000Days

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今回はTHE MARS VOLTA(ザ·マーズ·ヴォルタ)が2006年にリリースした3作目のオリジナルアルバム『AMPUTECHTURE』のご紹介です。


アルバムタイトルの『AMPUTECHTURE(アンピュテクチャー)』とは「AMPUTATE(手や足を切断する)」或いは「AMPUTEE(手や足の無い人)」という言葉と「ARCHITECTURE」という二つの言葉を組み合わせた造語で、アルバムジャケットの不気味なアートワークは、そのアルバムタイトルのイメージにぴったりという事で起用されたカリフォルニアの画家、ジェフ·ジョーダンの『BIG MUTANT』というタイトルの絵画です。

これらの情報を聞いただけでも得体の知れないアヴァンギャルドな作品を期待してしまいますが、実際に『AMPUTECHTURE』は期待を裏切らないカオティックなロックアルバムに仕上がっています。

ただでさえマーズ·ヴォルタの音楽は、サルサのリズムを基調としつつも、ダブやヒップホップ等、あらゆる要素を呑み込んだ膨大な音楽的情報量のプログレッシヴ·ロックなのですが『AMPUTECHTURE』に関してはマーズ·ヴォルタが解散する(近年は再結成の話も出ているようですが..)2012年までに発表した6枚のオリジナルアルバムの中でも最も"やりたい放題"な作品なのではないかと思っています。

マーズ·ヴォルタの個人的名盤は2005年リリースの2ndアルバム『FRANCES THE MUTE』で、1曲30分を超える長尺の即興音楽のようなプログレッシヴ曲が収録されているこの作品はまさに"混沌の極み"です。

しかし、そんな"混沌の極み"のような30分を超える長尺の曲も起承転結ははっきりとしており、言葉は矛盾していますが"計算して練りに練られた即興音楽"とでも言うべき丁寧な曲の組み立て方は感じられたのですが『AMPUTECHTURE』はそうではありません。

『AMPUTECHTURE』には『FRANCES THE MUTE』のような30分超えの曲はありませんし、アルバム中盤までは1st、2ndを経て順調な進化を遂げたラテン風プログレッシヴ·ロックを聴かせてくれるのですが、アルバム終盤、8曲目の『DAY OF THE BAPHOMETS(バフォメットの日)』辺りからマーズ·ヴォルタ史上最も"やりたい放題"なこのアルバムの本性が姿を現します。



本編最長のこの曲は『FRANCES THE MUTE』同様、即興音楽のような目まぐるしいプレイが特徴のプログレですが、そこには『FRANCES THE MUTE』で聴かれたような"計算された即興音楽"の要素は感じられず、言ってみれば本当にその場の思い付きでプレイしているような整合性の感じられない楽曲が展開されているのです。

1曲の中で唐突に変化するリズムや曲展開は明らかに『FRANCES THE MUTE』の楽曲より忙しないですし、僕もそうでしたが、初聴きだとほぼ間違い無く楽曲に着いていけずに置いてけぼりを喰らいます(笑)

そして、極めつけの最終曲『EL CLERVO VULNERADO(傷ついた雄鹿)』
は、ハードな演奏の最中、ブツ切りのように突然楽曲が終わり本編終了という、リスナーの心情をとことん無視した残酷な幕引きとなっています(僕などはCDプレイヤーが壊れたと勘違いしたほどです..)

勿論、意図的にこれらのような楽曲を作ったのだと思いますし、寧ろバンドにとってもこの終盤2曲こそが本作『AMPUTECHTURE』でやりたかった事なのかも知れませんが、それにしたってあんまりです。

アルバム『AMPUTECHTURE』は、このような自己陶酔に振り切った作品でもあるので、ファンなら誰もが名盤のひとつに挙げる2nd『FRANCES THE MUTE』と比べると「いくらプログレバンドでもこれはやり過ぎだろ!」或いは「メジャーバンドとしての自覚を持てよ!」といった本作に否定的な声も少なからずあったようです。

...とは言え、基本的に"変な物好き"の僕にはこの『AMPUTECHTURE』の作風はどストライクだったようで、初聴きの時こそ戸惑ったものの、今では僕にとってこの作品は『名盤』でもあり『迷盤』でもあったりします。

既存のフォーマットに収まったお上品なロックに飽きた方は是非どうぞ。