安藤サクラ主演他。怪物、だーれだ。大きな湖のある郊外の街。息子(黒川想矢)を愛するシングルマザー(安藤サクラ)、生徒思いの学校教師(永山瑛太)、そして無邪気な子供たち。それは、よくある子供同士のケンカに見えた。しかし、彼らの食い違う主張は次第に社会やメディアを巻き込み、大事になっていく。そしてある嵐の朝、子供たちは忽然と姿を消した―。いったい「怪物」とは何か。登場人物それぞれの視線を通した「怪物」探しの果てに、私たちは何を見るのか。その結末に心揺さぶられる、圧巻のヒューマンドラマ。第76回カンヌ国際映画祭脚本賞・クィア・パルム賞受賞作。

7/10点!!伝えないことで守れるもの、傷つけるもの、守ろうとしたが故に取ってしまった間違った選択、人々が無意識に行ってしまう加害的な言動、それぞれの思惑から生まれた混沌の悪意はルーレットのように一人をめがけて直撃する。ほんの少しの差があったら、違う人物に直撃していた可能性が高い。子どもたち、特に湊(黒川想矢)が自身の混乱と未熟さゆえに一人の人間の人生を壊したことは「幼い、純粋」では済まされない。間違った選択をし、コミュニケーションで解決することを諦めた人たちの罪も重い。誰も死ななくて良かったけれど、誰かが死なないと気付かないんだろうなと感じた。日本の「臭いものには蓋を」精神は子どもにまで根付き、同じく根付いている「嵐が過ぎるまで待つ」精神では、取り返しのつかない事態になることを歴史の中で何度繰り返されてきたはずなのに、その前例から抜け出すことを億劫だからしない。これまでの私たちの常識といわれる事々や法律、社会のルールで明らかに間違っていて、前例をぶっ壊すべきものはたくさんあるのだけど。子役の黒川想矢くんと柊木陽太くん、是枝さんって本当に同じタイプの子選び続けるのだなぁと思った。怪物は積み重なるディスコミュニケーションの末に生まれてしまった思い込みのナイフかな。誰も責められないけれど、全員が加害者で被害者という、言葉で説明しにくいけれど、誰もが体感したことのあるイヤミスでした。2023年公開。