クロエ・グレース・モレッツ主演他。憧れのニューヨーク・ポスト誌で働く21歳のスザンナ・キャハラン(クロエ・グレース・モレッツ)は、1面を飾る記者になる夢へと突き進んでいた。付き合い始めたばかりのミュージシャンの恋人スティーヴン(トーマス・マン)を両親に紹介し、仕事も恋も順調だ。ところが、“それ”は足音もなく突然やって来た。物忘れがひどくなり、トップ記事になるはずの大切な取材で、とんでもない失態を犯してしまう。幻覚や幻聴に悩まされて眠れず、遂には全身が痙攣する激しい発作を起こして入院するが、検査の結果は「異常なし」。日に日に混乱し、会話もできなくなってしまったスザンナを見て、精神科への転院をすすめる医師たち。だが、両親とスティーヴンが、スザンナの瞳の奥の叫びを感じていた―。ある日突然、原因不明の病にかかったら―愛だけを信じて闘った一人の女性と家族の感動の実話。

 

8/10点!!ガッツリと「抗NMDA受容体脳炎」を起こすと心身的・社会的にどうなるかを真っ向から描いた作品です。しかし、脳が攻撃され、壊れていく病なので、症状の度合いやパターンは十人十色なのだと思います。脳が攻撃されているから時間との勝負の病気で、90%を回復できたスザンナでさえ、歩き方も話し方も1から覚え直さなきゃいけないなんて、本当に怖い病気です。体が鉛みたいに動かなくなるのにひたすら苦しいキツさ、骨伝導まで伝わる音や肌刺激なのに、すべてが水の中にいるように、けれど鋭く通過していく強烈なダメージ、幻覚や幻聴。ここまでは私も経験があるので、今まで健康で、未来に希望しかない若者がいきなりそういう状態に放り込まれたら、脳より先に心が壊れてもおかしくないというのがリアルに解りましたし、スザンナの全身からも強く伝わってきました。本当に、よく抵抗を止めないで乗り越えたと思います。家族も、「医者にもっとプレッシャーをかけて原因を見つけ出さなきゃ。」なんて、一ヶ月で何人もの医師に診せるなんて、なかなか出来ることではないです。正直、スザンナが羨ましくてたまらなかった。すべての患者の家族が、彼らのようなら、患者はどれだけ救われることか。精神科に入院していた時、完全に心が壊れて何もわからなくなっている患者を何人か見ました。2007年に難病指定されたばかりの病気なら、もしかしたら、彼らもそうだったのかも知れないと、恐ろしさとやりきれなさを強く感じました。常に何が最良かを探り、完治を諦めないことの難しさと大切さを同時に描き切った、すべての医者と患者、その家族に観て欲しいファイティング・ムービーです。2017年公開。