ながら歩き | 「ありのまま」でいいんじゃない

ながら歩き

12/31(水)19日目。暖房がない部屋だったので持参の寝袋に入り布団をかけて寝た。まだ暗いなか目を覚ます。すぐさま寝袋から出ると身支度を整え、部屋で食事をとり、早々に1階に降りる。廊下を通ると女将さんの部屋の灯りはついていた。玄関で靴の紐を結び直して、何度か「ありがとうございました」と声をかけても返答はなかった。

 

宿の前にある自販機で温かい飲み物を買い飲みほして歩き始める。時計を見ると6時。しばらく歩くと海と朝焼けが心を癒してくれた。

 

 

2日前にくぐった新伊豆田トンネルの少し手前まで戻り、土佐清水市から三原村に向かう県道に入る。そこに一般住宅を改装した遍路宿があった。手持ちの地図には載っていない宿。宿泊していたお遍路さんが宿の方と玄関から笑顔で出てきた。彼は登山仕様で身をかためていた。軽く挨拶を交わし、その流れで宿の人に声をかけて気持ちよくトイレを使わせていただいた。

 

 

 

県道は川伝いで手つかずの自然が沢山あった。歩くスピードも勢いを増していく。気がつけば宿であった彼に追いついていた。「お先に」と声をかけると「どうぞ」と返ってきた。自分のペースであることをお互いが崩さなかった。さもすると、話をしながらとか、相手に合わせてとか、なりがちだが。遍路は「ひとり歩き」が基本。

 

 

約20km澄んだ空気と木々の匂いを浴びながら歩いた。2014年も大晦日。人影もない第39番札所で拝礼をすませる。時刻は14時半、どこにテントが張れるか、歩きながら探していた。国道に出る。地図を見るとこのまま歩いてもテントを張れるところは多分ないなぁと直感した。目の前を見るとバス停があった。自販機も近くにある。ここで年越しをっと決めた。

 

バス停から見える駐車場で高校生らしき青年がドリブルの練習をしている。少しすると足を手に変え、リングに向かってシュートを打ち始めた。彼は足も手も板についていた。

 

 

次の日歩くと直感は当たっていた。テントを張れる場所は20km近く歩いても見当たらなかった。もし歩いていたらと考えたらゾッとした。

 

考えてから感じて、感じてから考えにもどる。何度も何度も繰り返しながら歩き続ける。いつの間にか、何かに気づくもの。