覚悟と時間が整ったなら
1/2(金)21日目。前日はビジネスホテルに素泊まり。ホテルに着いたのは14時半頃だが、このところ、この時刻が歩き終わる定時だった。ホテルの前にはコンビニがあった。必要なものを最小限買いだめる。コンビニがなかった時代のお遍路だったらおそらくこのペースでは歩ききれていないと思う。
早く着いたぶん、出る時間は早い。6時過ぎにはチェックアウト。暗いなか国道を歩き始める。夜が明けると、とうぶん見ることのできない海が現れる。
この日は40km近く歩いた。程よい距離でテントを張れるところは見当たらなかった。暗くなるまでにはと思いながら地図を見るとトイレマークがあるのに気づいた。「どうにかなるだろう」という思いで天赦公園を目指した。
綺麗なトイレがあった。ここでのテント泊で2つの出会いがあった。
一つはソフトボールのピッチング練習をしていた親子。二人の娘さんは高校生と中学生。ピッチャーとキャッチャーを姉妹で交互に変わりながら投げ合っていた。後ろで見守るお父さんは彼女らが中学生まで専属のピッチングコーチを続けてきたそうだ。彼はソフトボール経験者ではない。彼の足元にはスピードガンがあった。
私から近づいていって姉の投げたボールの速さを体感させてもらった。お父さんは中学生の娘さんとあと数ヶ月でコーチという立場から離れるみたいだ。帰省しても練習は休まない親子がなんとなく昔を思い起こさせてくれた。
もう一つの出会いはトイレの床でいびきを響かせてそのまま寝入っていた若者。トイレを使うために入ってびっくり。まさか、まだいるとは思わなかった。通路に張ったテントを静かに畳んで暗いなか歩き始める。
飲んでついついうとうと、乗り過ごして起きたら終着駅。タクシーで帰るには高すぎる距離。たいしたお金もなく、始発を待ちながら駅近くの公園のベンチで横になったことを思い出す。初めての野宿、携帯電話のない時代の出来事だった。
昔を思い起こさせてくれることで、「人がやることってなんて、昔も今もそんな変わらない」ってことを時々感じさせてくれる。「無駄かなぁ」と思えたことも実は身になっていることは多い。便利さにかまけていると効率ばかりを考えるようになる。
生半可ではなく、時間をかけたいものにはしっかり時間を費やす覚悟があるかどうか。そして、その時間をつくるかどうか。覚悟と時間が整ったならやり始めることで何かが変わり始める。