最近、夜にオレと母さん、そして兄ちゃんの3人で話し合いをしている。
父さんの話だ。

父さんが就寝のために一階に降りて行ってから始まるこの会議。
最近はほぼ毎日開かれている。
理由は簡単。
父さんが変わったから。

最近、とは言ってももうここ数年の話だが、特にこの一年酷くなった。
父さんがひねくれ者になった。

昔から怒りやすいタイプではあった。
姉ちゃんが高校生の頃、回し蹴りされたこともあったらしい。
会社でいつまでも出世できなかったのも上司に一度キレたからだ。

父さんには表の顔と裏の顔がある。
一番の欠点だ。
仕事のお客さんにはめっぽう親切で、人気もある。
ところがそれは作られた姿。
家ではただの頑固親父だった。
前にも述べたように、キレやすく、そして何より自分以外の人間に敬意を表さないのだ。

まず自分より頭の悪い者は全てダメな人間だと考えている。
すぐに馬鹿にする。
そして女性は基本的に下に見ている、男尊女卑の典型だった。

もちろん母さんに感謝を表したことなど見たことがない。
亭主関白もいいところだ。
常に自分が一番偉いということを主張したがった。

それでも前はやっていけていた。
なぜか。
父さんの理論には筋が立っていたからだ。

家族に注意をするにしろ、世の中に文句を言うにしろ、その理由には聞いているオレたちを納得させる、何かがあった。
説明も上手かった。
でも変わった。

過食の多い生活でみるみる大きくなった体のせいか、行動範囲がかなり狭くなった。
家の中でもソファーからほとんど動かなくなった。

そしてひねくれ者になった。

オレを含め、家族の行動が気に食わないらしい。
なんでもかんでもオレたちに文句をつける。
しかもその理由に以前のような理論性はなく、ただ単に自分の意のままにできないことに腹を立てているだけのようだ。

原因はいくつか考えられる。

まずは体。
太って活動が減り、自分ができることが少なくなってきた。
それに伴い外出が減りイライラがつのるようになった。

次に仕事。
自宅勤務によって人と話をする機会が減った。
以前のように親切心を持つ時間がなくなった。

そして何より老化。
明らかに口が回らなくなっている。
思考が単純になってきている。

自分の思った通りにならない=家族が自分を大切にしないからだ
そんな考えばかりしている。
自分が一番偉いのに自分に反発するヤツがいる。
そして理不尽な理由でキレる。

もうこんな父さんはいやだ。

父さん。
あの頃の父さん。
怖いけど賢い父さん。

どこへ行ったのかな。