顔の血色もよくなったところで、昨日の夜からのことを振り返ってみることにした。

昨日の夜、いつものように寝る前のドロッとした緑の薬を飲み、横になった。
一瞬気持ち悪い感じがしたが、薬飲んですぐ横になったからだと思ってあまり気にしなかった。
そして自分の部屋のよくわからないニオイの原因を考えつつ眠りにはいった。
9時半のことである。

それから1時間後、不意に目が覚めた。
急な吐き気と頭痛を感じたからだ。
これは部屋のニオイが原因だと考えた私は窓を開けようと立ち上がった。
すると立ち眩みで動けなくなり、ベッドに倒れ込んだ。
そして急に激しい吐き気を感じ、ベッドのわきにあったゴミ箱に吐き出した。
暗闇ではあったが、その量とニオイから血だとわかったため、すぐさまナースコールのボタンを押した。
駆けつけた看護婦が電気をつけると、それはやはり血で、吐き気が収まらず、吐き続ける私を置いて、看護婦は医師を呼びに行った。

少しして看護婦が医師を連れてくると、医師は内視鏡手術の準備を要請し、私にはものすごい速さで点滴が行われ、意識朦朧としながら採血、血圧と脈の測定などがなされた。

看護婦が慌てふためいている中、初めが兄、そのあと両親が血相を変えてやってきた。
「大丈夫や」を連発しながら手を握る母があまり大丈夫じゃなかった。
数分経って、手術の準備ができたらしく、移動式ベッドに乗せられ、一階の内視鏡室へ移動した。

家族の心配した表情に見届けられながら奥の部屋へと連れられた。
そして地獄の50分間へ突入する。

内視鏡、つまり胃カメラによる手術が始まった。
口にワッカをはめさせられ、喉ににが辛いスプレーをかけられ、あの黒い棒が口から入ってきた。
喉を通るあの痛みに吐き気とともに涙が溢れた。
意識朦朧として、胃を内側からつつかれ、吐き気と戦った。
深呼吸して吐き気を紛らわすも、自らの血のニオイにやられ、何度も体をくねらせて吐き気から逃げようとした。
喉の痛みは限界を超えていたが、それを表す余裕はなかった。
胃にホッチキスやらゴムやらを取り付けるため、何度も出し入れが繰り返され、その度に激しい痛みと吐き気に悩まされた。
そのうち、看護婦が言っていることもわからなくなり、ただただ歯を食いしばり、拳を堅く握るしかなかった。
もう限界だ、そう思ったころにやっと手術は終わりを告げた。

胃の数ヶ所に軽い痛みを感じながらICUへ運ばれた。
家族の安堵した顔に安心はしたが、頭痛と軽い吐き気に寝つくことができなかった。
だが肩に筋肉注射をしてもらい、頭痛が収まって、眠りにつけた。

そして今に至る。

あの部屋で感じていたニオイは自らの胃からきていた血のニオイだった。

私の体はどうなってしまったのであろうか。