ゴミ捨てーション戦記2 | BOOGIEなイーブニング!

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ゴミステーションに放置された謎のゴミ袋をめぐり、町内会の精鋭4人が集まった。これはその闘いの記録である。

ゴミ捨てーション戦記1はこちらから。





4人はゴミステーションに着いた。


まずは田代さんが木曜日にかけてくれた緑色の網からゴミ袋を取り出す作業にかかる。当然ながらそんな役は、この俺しかいない。


俺はこれから見ず知らずの家の

ゴミ袋を勝手に開ける。


映画ハートロックの爆弾処理班のように、やる前からすでに尋常じゃない脂汗が流れてくる。いま、ゴミ袋に手をかけようかというタイミングで後ろから田代さんが「あのー」って声をかけてきてビクッとなった。


あのー、軍手持ってきましょうか?


確かに緊張のあまり素手でいくところだった。本来ならモビルスーツで行きたいところだ。危ない危ない。中にはどんな恐ろしいモノが入っているのか分からない。付けまつ毛が入っているからって、中にきゃりーぱみゅぱみゅが入っているわけではないのだ。俺は昔、きゃりーぱみゅぱみゅのことをきゃりーみぴゃみぴゃと覚えてしまって、そいつを矯正するのに時間がかかったのだが、そんなこと今はどうでもいい。


一旦軍手を取りに家に戻った田代さん。しかし、ゴミ袋の結び目は硬く、素手でないとほどけないので、田代さんが戦線に復帰する前に俺はこの硬く結ばれたゴミ袋の結び目をなんとかこじ開けようと、くにくにくにくにくにくにとチャレンジしていた。しかし、この何重にも硬く閉じられた結び目をほどくことを諦め、ハサミでチョッキンすることにした。小走りで戻って来た田代さんと入れ替わりで、今度は俺が新しいゴミ袋とハサミを取りに家に帰り、速攻で戦線に復帰した。


いよいよ横綱の断髪式、じゃなかった身元不明のゴミ袋の開封である。


俺は硬く結ばれたゴミ袋の結び目の下にハサミを入れた。ああ、もちろん息を止めてジャックマイヨールばりの無酸素状態だ。袋の側面は梅雨の雨が入り込んだのか、もともとの湿気なのかわからないが、寺尾聡のルビーの指輪ばりに水滴で曇っていたあなたを失ってから。そして、びっしりとゴマが付着していた。ああ、ゴマでもこぼしてそのまんま捨てたのかな。なんて、思っていたが、それはゴマではなく無数の子バエだった。


ぎゃっ!


俺は車に轢かれた猫のように短い悲鳴をあげた。人間は本当の恐怖に直面すると、きゃーーーではなく、ぎゃっなのだ。


ゴミ袋に手を突っ込む前になるべく子バエちゃん達をお外に解放してあげたいので、ゴミ袋の口を全開にして、トントントンと上下に揺さぶって差し上げたのだが、子バエちゃん達はこの湿り気と臭気が心地いいのか一向に出る気配はなかった。


諦めてゴミ袋から速やかに個人情報を入手して、このゴミ袋の持ち主にお返しするという作業に戻った。その際、腕に触った子バエの感触は無かったことにしておこうそうしよう。


寝ているゴマを起こさないようにそーっとゴミ袋からゴミを取り出して、隣の俺が用意した新しいゴミ袋に入れていく。


まずは、なんの汁が付いてるのかわからないけど、茶色い液体が付着したティッシュの固まり。


ゔぉえぇぇぇ〜

ゔぉえぇぇぇ〜


次に黒くて長くて力のない抜け毛の固まり。


こわいよう

こわいよう


ここで、リーダー武田のオバちゃんから俺に昭和な激が飛ぶ。


黙ってやりなさいよ!

男でしょ。


すると、オバちゃんの檄で冷静になれたのか、運良く3投目のサルベージ作業でハガキを見つけ出した。


あべ歯科医院


そうハガキには書いてあった。早速そのハガキの宛名から、このゴミ袋の持ち主の住所を見るとウチの班とは違う道路一本隔てた地区の住所が書いてあった。


名前は宮崎ペケペケ子。


この名前に我が隊の全員が首を傾げたが、ウチのオカンだけは、住所で場所を特定出来ていた。


おろおろと頼りなく歩くパーキンソン病のオカンを水先案内人に、我々4人は宮崎家を目指す。


おっと、先ほど伝えてあったと思うが、残念ながら俺はまだパジャマを後ろ前逆に履いたまんまだ。オカンにちゃんとパジャマ着替えなさいと言われてはいたが、履き替える暇や思考力が無かったのだ。


もう一度言うが、後ろ前にパジャマを履くと前はきっつきつ、お尻はだぶだぶ、紙おむつをしている赤ちゃんのようなプロポーションで班境の道路を渡ろうとしている。


メリーズスタイルで

ゴミ袋は俺が運んでいる。


道を隔てた班の外に侵入した。ここからウチの班は治外法権だが、ウチのオカンはこの辺のボスとも茶飲み友達である。なので安心してゴミ袋を持ってこのエリアに入れるのだ。


隔てた道からすぐそばにある横道に入ると真正面に宮崎家は見えてきた。築20年くらいだろうか普通の住居である。色は鶯色、外にはシルバーのVWゴルフが停まっている。外観からはとてもルールを無視してゴミを捨てる家には見えない。


宮    崎


表札には間違いなく先ほどハガキに書いてあった名前が刻まれていた。


俺がピンポン押すの嫌だなぁなんて思ってたら、武田のオバちゃんが速攻で押していた。さすが頼りになるリーダーだ。


ピンポーン


はい。


結構な時間待たされて、ピンク色のTシャツに短パンを履いたおばさんが出てきた。


つづく