鉄のアングルを抱えて部屋に戻ったものの、もちろんすぐさま作業しようなんて思わない。
少し置いて、アングルを熟成させた。
なんてのはウソで仕事が忙しかったのだ。
機を見て一気に行動に出た。
先ずは調べると、リッケンのネックや指板はトラスロッドが2本も入っているので薄いことこの上ないらしい。つまり、無理にトラスロッドを回そうとすると最悪の場合指板とネックが剥がれたりするんだそうな。
こんな脅し文句みたいな事例をネットでいくつも見かけた。
さらにモアイさんも魔太郎のように「指板は恐いよ〜恐いよ〜」いうもんだから、完全に引け腰になったね。どのぐらい引け腰かっつーと、昔のさ、巨人にいたロイ・ホワイトって外人助っ人のバッティングフォーム。あのぐらいの引け腰だったね。
しかし、俺の場合は少し反りが戻ればいいだけなので、そんなにネックは動かないだろうと思い、何も考えずにアングルにクランプでもってネックを固定したのだ。
まぁ、用心のためにネックにたっぷりとオイルを塗り、フレットやネックがクランプの圧で壊れないようにコルクを指板の幅に切ってかました。
そしてクランプを3箇所設置し、グイグイと締め上げていった。鉄のアングルは鬼水平だから、この3箇所のクランプを締めれば、ネックがアングルに這わさって水平になるはずである。
そうして家のアイロンを使い、アングルを熱しようとしたが、何せL型のため、きちんとアイロンの熱い底部分にうまいことアングルが接しない。仕方がないのでアイロンがけは諦めた。こっちは1mmでもネックの反りが直れば御の字なのだ。無理はせずにそのまんまアングルをクランプで固定した状態で、放置プレイすることに決めた。
特に使う必要もないベースなので1カ月くらい放置した。季節が君だけを変えるほど放置した。
ちょうどエディパンのスタジオ練習とライブが重なるタイミングだったので、この大リーグ養成ギブスのようなクランプ矯正を解除してみようと思った。
しかし、この後Rickenbacker 4004に壮絶な運命が待っていたのだった。
つづく