「K、D。行くぞ」
 ミーティングが終わった後、俺とDは店長に連れられ外に出た。


 これから写真撮影なのだ。


 俺はようやく来た、と思った。
 実はここ二週間、俺もDも一度もキャッチに成功しなかったのだ。
 そんなもんだ、とキョウスケさんやアイルさんには言われたのだが、やはりキャッチに一度も成功しないとホストを辞めたくなる。収入が日払いしかないからだ。日払いは5000円。労働時間と参照してみると、コンビニで働いていた方がずっと良い。しかも仕事柄、どうしても煙草の量が増え、身だしなみも整えなければならない。まだ大丈夫だが、これが続くと赤字だな、と俺は焦り始めていた。
 写真撮影された後、それは店の入り口に並べられる。それに、新規の客が来た場合に見るアルバムにも載る。後は様々な雑誌にも「新人」と書かれて掲載され、店のHPにも載る。
 つまり、今までキャッチでしか自分の顔を広める事が出来なかったが、メディアを使う事により不特定多数の人間に自分の顔が見られるわけだ。当然、それを見て来店する客もいるはずだ。そう俺は思っていた。

 外に出た俺達は店長の車に乗り、20分ほど目的地へ向かった。

「緊張するな、K」
「あぁ、めっちゃ緊張する」
「俺こんな感じで写真うつろうかな」
「えー!? それはないやろ! ウケすぎやって!」
「いやいや、K。ゆいとさんの写真とかこんな感じやん? ウケ狙ったら誰か来るかもしれへんで」
 ちなみにDは二枚目で、ウケなんて狙わなくても普通に写真にうつった方が人気が上がったような気がするのだが――
 結局彼は鼻の穴を広げ、目を上にし、舌をべろんとした顔で撮影された。
「Kはどうすんの?」
 Dが聞いてくる。そういえば、全然どんな格好で写ろうかとか考えていなかったな、と思い、しばし黙考。キザな感じで写るのも恥ずかしいし、かといってDのようにウケ狙いも恥ずかしすぎる……というか痛い。
「Kはマダムウケしそうやから、微笑って感じにしとけ」
 店長が言った。ミラー越しに店長と目が合う。
「あぁ、母性本能くすぐるって感じだもんなぁ」
 自覚はなかったのだが。
 やはり店長。
 自分がどのようにすれば売れるのか、という事に後々気づいたのは、この言葉がキッカケだった。
「じゃあ、微笑にするっす」
 と、店長に言う。そう言えば、店長と言葉を交わすのも久しぶりだった。二週間、俺はほとんど喋っていない。


 車が止まる。出た先にあった店は、狭そうな写真屋。
 しかし、中に入ってみると、ホストのポスターや写真がずらりと壁に貼られていた。どうやら、ホスト専門の写真屋さんらしい。
「じゃあ、Dさん、来てくれますか?」
 まずは俺よりも一日先輩のDが店員に呼ばれ、写真撮影をする。
「あはははは! めっちゃ楽しかったわ~」
 二十分ほどして撮影室から出てきたDは、大笑いしながら出てきた。
「どんな顔で写ったん?」
 と聞いた所、車の中でしていた顔で写ったらしかった。すぐにパソコンにデータが転送される。俺とD、店長はそのディスプレイを確認する。
 ……変顔でDが写っていた。
 大爆笑だった。
「これ絶対ウケるやろ~! 百パー俺ナンバーワンなれるわぁ~」
 と大口を叩くDだったが、店長に小突かれた。
「じゃあ、どこか修正しますか?」
「D、どっかしたい所あるか?」
 店長がDに聞いた。

 ホストの写真は第二の顔。
 売れるか売れないのかの二割程度は、この写真によって左右される。なので、必ずとは言わないが、たいていの写真は加工・修正される。
「そうっすねー。うーん……」
 Dが考えていると、
「次はKさん、よろしいですか?」
 と店員さんに声をかけられた。俺はDの修正を見ずに、撮影室へと連れて行かれた。


 正直写真屋で撮影なんてした事のない俺は、「あぁ、テレビでこんな感じの見た事あるなぁ」程度の感想だった。
「何か自分で決めてらっしゃいますか?」
「微笑で」
 店員さんの問いに簡潔に答える。マダムウケしそうな感じで、と言うと、「じゃあ、ここをこんな感じで」と店員さんが指示してくれた。あまり具体的に決めていなかった俺にとっては、かなり気が楽になった。
 指示された通りの格好をする。
 カメラに向かって少し体を斜めにし、目元を柔らかく、カメラ目線。口元を少し緩ませ、微笑。


 ――撮影。


 その後、Dと同じようにパソコンに顔写真が転送された。
 実は撮影前日に頬にニキビが出来てしまっていたのだが……修正してそれを消した。俺の修正はその一部だけで終わった。
 この写真はすぐに持って帰る事になった。その日から、店の入り口には並べられるらしい。雑誌は申し込みなどがあるから、暫くかかるらしいが……。


「これからだな、俺達」

 Dが言う。

 俺もそうだと思った。

あとは――とにかく電話だ。
面接官が雰囲気のよさそうで親切な人だったら、たいていそこの店は良い所である。
ちょっと考えて、とりあえず一日体験入店をしてみよう。
あとは一日ホストとして働いて、従業員もよさそうな人だったら、やってみると良い。


ちなみに、従業員の多い所だとどうしても派閥が存在してしまう。
俺の所は始めは派閥がなかった――というより、俺が入店する少し前に一派閥のメンバーが辞めたらしく、ない状態だったのだが、やはり人数が増えるにつれて派閥は出来てしまっていた。どうしても、新人の中にこの人についていく、と言った感情が芽生えてしまうと、派閥は出来てしまうらしい。


話が逸れてしまったが。
そういう派閥が嫌ならば、なさそうな小さな店を選んでも良いだろう。ただし、ここだとただ楽しいだけで稼げる可能性は少ない。やはり、店全体が売れている所だと、枝が頻繁に来るので新人時代からある程度の収入は得れたりする。自分がホストをやる理由によって、店の大きさは決めれば良いだろう。ちなみに、大きさは一日体験入店の時にこっそりと従業員に聞いてみると良い。間違っても店長などには聞かない方が良い。殴られるぞ、と言っておく。


一日体験で自分がホストに向いていない、と判断するのは早い。
ホストは育っていくものである。最初からホストとして上手くいくものは少ない。逆に、ドン底は知っていた方が後々楽だ。上がりっぱなしのホスト生活を送ると、後でとんでもない事になってしまう。
だから、もし体験したのなら、自分が向いているかどうかよりも、周りの環境が自分に合っていそうかを判断すると良い。


一日体験をやって、それでもやる気があるのならば、正式にホストになれば良い。
ホストは人生の中で一度でも体験してみるべきだ。
長くいればいるほど、表とは違った世界観を知る事が出来る。
長くいすぎると、表の世界には戻ってこれなくなるが。


そしてまた以前書いた事を書くが――
今回で一応「男性用・ホストクラブの選び方」は終わるが、これは抽象的な書き方になっている事を考慮していただきたい。
これが貴方に当てはまらない場合もあるだろう。参考程度に、という事にしていただきたい。これを読んで実践したけど超最悪な店だった、とか言われても俺に責任はありません(飛ぼうかな俺)もし具体的な内容があって質問があるようだったら、答えるつもりでいるのでご容赦を。


偉そうな事を書いているが、ようは「店選びは雰囲気で」って事。

女性用を書いたため、今度は男性用を書いてみた。


以前も書いたが――

今回の話は「元ホスト」そして「男」という視点からの私的意見である。
そのため、読まれた方の中には違和感を覚える方いるかもしれないが、ご容赦願いたい。
ちなみにこれは、一度もホストになった事がない男性を前提に書いている。


まず最初に――
もしもこれからホストになろうと思っている男性に一言。
「ワンクッション置け」
女性に対して書いた時と同じであるが……ようは、ホストに関係するものは全て、ワンクッションを置くべきなのだ。

もともと勢いで行くもの、というイメージもあるが、そういう人はたいてい後で苦労する。それが後で自分の人生の財産にはなるが、金銭的な財産はすっからかんになるので、そこは考慮せよ、と言いたい。と、これは女性に向かって言っているが。
ホストクラブを本当に楽しみたいのなら、初めが肝心である。これは男女共通だ。


ホスト、というとイメージ的には、
「酒と女で金もらえる」
こんな感じであろう。
最近はホスト漫画や小説なども出ているから、多少イメージの違う人もいるだろうが、そういう知識の全くない男性がホスト、と聞くとたいていはそういうイメージを持っていたりする。

確かに合ってはいるのだが――ホストをやっていない人には分からない駆け引き、上下関係などがそこには存在する。
それは後々書くとして。
ちなみに本で言えば「Deep Love」や「爆弾ホスト」は面白い。
もしホストに興味があるのならば、一度読んでおいた方が良いだろう。あれがホストだ、とは言わないが。普通に面白い。


今回はホストクラブの選び方である。ようするにどこで働くか、だ。
まず、最初に。男性がホストを始める理由として、三つがあるだろう。
・何か格好良い
・とりあえず金
・女と遊べる
とりあえずはこの三つだ。細かく言うと色々とあるのだが……それは漠然としている場合が多い。明確なものとしては、この三つであろう。


男性の場合、たいていは自分がホストをやりたくて、雑誌を見て電話をして、面接に行く。
たまにあるパターンとしては、
・雑誌に書かれている「バーテンダー」という項目で面接に行って「ホスト」にされた。
・街角でホストにスカウトされた。
雑誌に書かれているホストの時給や待遇は、たいていが嘘である。
あれは、店の従業員全員の月給を平均化して、時給に直したものである。
もしかするとちゃんと時給にしている店もあるかもしれないが――女性のキャバやラウンジなどとは違って、完全歩合制を取っている所ばかりだ。一応、日払い制度はあるだろうが……。
俺はホストになる前から疑っていたので、「Club Lucifer」に入店する前に、9つほど面接に行ったり電話をしている。
面接の時にちゃんと説明されるのだが、面接に行く前の確認電話では「それは面接に来てから説明します」と言って説明してくれなかった。どの店もだ。男性は一度、試してみると良いかもしれない。
来るかどうかも分からない電話相手に説明はしないだろう。している店は逆に馬鹿である。自分の首を絞めている事になるのだから。


ただ、待遇は全てが嘘ではない。一応リストを出し、一つ一つコメントしてみる。
・高級ブランドスーツ貸与
・高級マンション
・慰安旅行
・日払い
・ノルマキャッチ一切なし
・週一からOK
・面接だけでもOK


高級ブランドスーツ貸与、と書かれていたら信用しても良いだろう。お古、ではあるが。
この高級ブランドスーツ。わざわざ貴方のような新人のために買っているものではない。
全てがそうだとは言い切れないが……たいていは今いる従業員や元従業員のお古のスーツである。なので、たまに穴が開いていたりもする。もちろん、貸与だからといって後で金を請求されるような事はないので安心を。一応確認はした方が良いだろうが。


高級マンションというのは、店にもよるだろうが……。たいていはボロである。だが、一応あるだろう。
慰安旅行というのはなかなかしない。よほど店全体が売れている所じゃない限り、やらないだろう。
日払いはたいていの所はやっているが、その額は人材派遣などの日給よりも額が少ない、という事は言っておく。歩合が重視されているので、日給はかなり低い。

ノルマキャッチ一切なし。これは店の大きさによるだろうが、たいていはキャッチ有りである。ノルマはたいてい無いだろう。

週一からOK、などと書かれているものは信じても良い。ただ、面接官の威圧に負けてシフトを増やしたりしてしまうかもしれないが……。歩合なので、やはり週一では売り上げは厳しいからだ。

面接だけでもOKというのはそのとおりである。ただし、女性とは違い交通費が出る所は少ない。


このように、多少の嘘とごまかしがある。じゃあ雑誌は信用できないじゃないか。どう判断すれば良いんだ。と、貴方はお困りかもしれない。俺も、自分の店は当たりだと思ったが、本当にラッキーな事だ。
ただ、一つだけ店舗のレベルを図る項目がある。

それは「一日体験入店」制度を取っているかどうかである。

この制度を取っていない店舗は、よほど人数が少なくて一人でも強引にホストにしようと思っているか、ただ単にホストの波に乗り遅れている店、という事だ。流行っている店はたいてい一日体験入店制度を取っている。
これは、名の通り一日だけホストになる、という事である。
これでだいぶ篩にかけれただろう。

俺は出張の経験がないし、友人の中にもいないので何とも言えないのだが……。

間違っている点があれば指摘などして頂けると有難い。


出張ホスト、というものがある。

ホストクラブと何が違うの?と思うかもしれないが、ようはホストが出張するのである。

この出張ホストは通常のホストクラブと違い、ボックス(店)がない。

ネットでサイトを見つけ登録したホストが、ネット上に写真や電話番号、メールアドレスを掲載する。その情報をネットで見た女性からがホストに連絡し、会う約束などをするのである。


これを書くため、というか元々興味があったのでちょこっと「出張ホスト」とワードを入れてサイトを見てみたのだが……。


これも結局相手がホストということなので、料金が発生するらしい。


相場は一時間5000前後といったところか。まぁボックスと大差ない。だが、ボックスと違うのはコース内容があるという事だ。デートコース、セクシャルコースなどに分かれており、それは三時間、五時間などとまとめられ、その分料金が安くなるのだ。通常三時間なら15000円の所が10000円になるのである。ボックスの場合はそんなものはない。一時間何千円という風に固定されているはずである。驚いたのは24時間コースなどもある事だ。


しかし――さらに驚いた事がある。


出張ホストの顔である。


明らかにホスト独特の雰囲気というか……ホスト臭が感じ取れないのである。

掲載されている写真も携帯から撮ったようなものであり、加工もされていない。

簡単に言ってしまえば、普通のおっさん、というような人が多いのである。もちろん、そうでない人もいたりするが、プロフを見てみるとホストから転身した人が多かった。

余談だが、スーツを来てリーマンに見えるかホストに見えるか判断出来ないだろうか?あれでリーマン風な人が多いのだ。髪型もそんなに若々しい人はいない。


この出張ホストになるためには、金が必要らしい。

ボックスの場合は金がいらないのだが。ネット上に掲載する料金として、数万円必要らしい。

金が必要だからホストになるんじゃないのか?と思ったのだが――ボックスと出張ではだいぶ違うようだ。

ボックスの場合、自分の売り上げの何十パーセントは店に取られてしまう。だが、出張の場合は自分の売り上げがそのまま収入になるようなのである。つまり、そのサイト側にとっては収入がないのだろう。だから、最初のうちに金を取る。あとはその出張ホストがどうなろうが知ったこっちゃないと考えている。――と推測するが、どうなのだろうか実際。


先ほど出張ホストの顔を書いたが……本当におっさんばかりである。

若い人は少ない。逆にボックスのホストは二十代が多いのだが。出張には50歳のおっさんもいた。何故、こんなにも年齢層がバラバラなのだろうと考え、これが客層による違いなのだろうか、と思った。


ボックスの場合、ほとんどはお水の女性をターゲットにする。もちろん、一般の人も多いのだが、やはりお水の女性が上回る。逆に言うと、そういう女性をターゲットにしているので、ホストクラブはそういう店の近くに建てられていたりする。しかし、出張の場合はお水の女性をターゲットにしていないのではないだろうか。寧ろ、一般の人をターゲットにしている気がする。


俺がホストをしている頃、俺の客が誕生日だという事で自分で金を払い、出張ホストを連れてきた事がある。その出張ホストと俺、そしてヘルプに誕生日を祝ってほしいとの事だったのだ。ホストクラブに男性が来るのはおかしいと思うかもしれないが……大蔵省として来る場合がたまにある。出張ホストが来るのは珍しい事だったが。

ちなみに、俺はその時の出張ホストの話などを元に書いていたりする。


その出張ホスト君曰く、お水の女性はほとんど客としていないそうだ。やはり一般の人が多いらしい。

俺が推測するに、ボックスと出張は、いわばお水優遇か一般優遇か、だろう。もちろん、そんな具体的には分けていないだろうが……ボックスの仕事はキャバの仕事と対象性別が異なるだけで後はほとんど同じである。その分、お水の女性にとって仕事上の苦労や愚痴は喋りやすいだろう。

書き忘れたが、この出張ホストは専門でやっている人もいるが、通常の仕事をしながら副業としてしている人もいるようだ。なので、一般の人にとっては、出張ホストに苦労や愚痴が喋りやすいのかもしれない。

他にも、一時的な楽しさを求めるか、彼氏のような存在を求めるのかとか、さまざまな理由があるのかもしれない。


なかなか興味深い職業である。

一度体験してみようかな、と思う今日この頃。

雑誌とは違い、まだぼんやりと行きたいなーと思っている程度なのではないだろうかと思う。
まだ雑誌を見て行こう、とは思っていない。けど興味がある。
そんな女性はキッカケがあれば行くだろう。


そのキッカケとして、キャッチがある。

街角でホストが「今暇?」みたいな感じで話しかけてくる。特にその相手に嫌悪感がなく、興味があれば、行くのじゃないだろうか。もちろん、金銭的に余裕があれば、の話だが。

だがこの時、一つだけ気をつけよう。
相手がどんな人間なのか、貴方は知らないのだ。
なので、もし第一印象が良ければ、少しお話してみると良い。これは雑誌では得れない貴重な体験だ。
もしこれで印象がよければ、お店に――と言いたい所だが、その時は「金ないから」とでも言ってアドレスや番号交換だけにしておこう。当たり前だが、名刺はもらっておいた方が良い。もしホストが持っていなかったら、せめて店の名前だけでも聞いておこう。あと雑誌に載ってるかとか。載っていないホストはまだ新人君である。それか、売れないホストだ。


ちなみに、これは貴方が何度か通うかもしれない、という可能性を考えて書いている。
一度きりで遊びに、という考え方ならば、キャッチされてすぐに行っても良い。
もう一つちなみに――初回料金が安いからといって、いろんな店の初回を転々と回っていく「初回荒らし」と呼ばれる女性がいるが、これはあまりやらない方が良い。意外とホストクラブ同士は繋がりのある所が多い。一度噂が出回ると、ホストから嫌な目で見られるようになる。


番号やアド交換していれば、必ず相手からメールか電話がかかってくる。
少しまだ行く勇気がない、という方はこのやりとりをして、信頼出来るようになったら行くと良いだろう。
前回の雑誌の件でも同じである。雑誌を見るけど行く勇気がなければ、メールをしてみると良い。雑誌にはたいてい載っている。

ちなみに、電話派のホストもいるだろうが、たいていは仕事中か寝ているので、迷惑のかからないようにメールの方が良い。
それに、電話だとまだ行く勇気がないのに誘われたりして、少し断りづらくて何だか嫌な気分になってしまったりと、色々と面倒くさい事もある。
この段階では、まだホストにとって貴方はただの「客候補」でしかないという事を頭に入れておいてほしい。
来るかどうかの相手よりも、今いる自分の客に時間を費やすのは当たり前だ。なので、電話よりもメールにしておこう。


忙しいのにメールを(何日か送れたりする場合もあるだろうが)きちんと返してくれたりする人だったら良い人だ。迷わず行きましょう。
逆に、「店来てや~」とかばっかりしか言わないホストは「しょぼホス」であり「売れないホスト」であり「オラ営」の可能性が高い。
たとえ外見が良くとも、店来てやしか言えないホストの元へは行くな。これだけは断言。後々貴方が金に困って破産する事になる。身体的、精神的に傷つく可能性もある。それでも良い、という人なら止めないが。

ちなみに、これは一人の時にキャッチされた場合を言っている。二人の時は勢いで行ってしまっても良いだろう。


次に友達に誘われて、の場合だが。
これは友達との付き合いなので、貴方とその友達との関係によるだろう。貴方自身が興味を持っているならば行けば良いし、なければ断ってしまっても良いだろう。


今回で一応「女性用・ホストクラブの選び方」は終わるが、これは抽象的な書き方になっている事を考慮していただきたい。
これが貴方に当てはまらない場合もあるだろう。参考程度に、という事にしていただきたい。これを読んで実践したけど超最悪な店だった、とか言われても俺に責任はありません(若干ビクビク)もし具体的な内容があって質問があるようだったら、答えるつもりでいる。


偉そうな事を書いているが、ようは「ホスト選びは慎重に」って事。

今回の話は「元ホスト」そして「男」という視点からの私的意見である。
そのため、読まれた方の中には違和感を覚える方いるかもしれないが、ご容赦願いたい。
ちなみにこれは、一度もホストクラブに行った事がない人及び一人で行く女性、を前提に書いている。


まず最初に――
もしもこれからホストクラブに行こうと思っている女性の方に一言。
「ワンクッション置け」


女性がホストクラブに行きたい、と思う時のパターンが三つある。
1 ・ 未知の世界に対する好奇心。
2 ・ 日常生活で何か嫌な事があった。
3 ・ 酔った勢い


だが、これだけでは行く事はないだろう。
キッカケが必要である。
今回の話は、そのキッカケの話である。

キッカケとしてはだいたいこの三つのパターンに分かれると思う。
1 ・ 雑誌を見て。
2 ・ キャッチ。
3 ・ 友人に誘われて。(ここには彼氏がホストだったorホストになったも含まれる)

この中の1について今日の話を展開する。といってもすぐに終わるのだが。


どれだけ街角でキャッチされようと、そもそも女性自身にホストクラブに行きたいという気持ちがなければ、ホストクラブには行かないだろう。だが、1の場合は、既に行きたいという気持ちがあるという事だ。雑誌を見るぐらいだから、少しでもキッカケがあればすぐに行く。

行きたいという気持ちによって意見が変わるのであまり細かくは書けないのだが――
雑誌を見ているという事は、キャッチされて行こうかどうか迷っているような状況ではない。時間がある。
もしもホストクラブに行きたいのならば、じっくり慎重に選ぶべきである。

雑誌以外の媒体ではネットやテレビ等があるが……俺は雑誌をオススメする。ホストクラブが密集する地区のコンビニならたいていは売っている。
何故、雑誌なのかというと、まずはたくさんの店舗が載っているからだ。ホストが顔写真付きで大勢記載されているのである。ネットの方にも載っているが……あれは更新されていない場合があり、そのホスト目的で行ったのに実はいない、というような事がある。ちなみに俺も辞めてだいぶ経っているというのに、まだHPに載っていたりする。今の所ここで公表するつもりはないが。

雑誌が最も最新の情報であり、利点が多い。


雑誌でお気に入りのホスト、店舗をまずはチェックしよう。
その後は、そのホストや店についての情報を出来るかぎり収集する。特集が組まれていたり、他の雑誌にはコメントが書いていたりするので、一つの雑誌には頼らず、出来れば二、三の雑誌を購入すべきだろう。

その後、本気でホストクラブに行く気ならば、電話をしてみる。
これは店の方に電話をした方が良い。
ホストとしては直接かかってきた方が嬉しいが……。女性の貴方は今は選ぶ立場。まだ電話をしているものの、行くと決めているわけではない。だが、この時点でホストに電話をかけてしまったら、強引に誘われて約束を取り付けられる場合がある。
そして行かざるを得なくなるのだ。もしも行かなかったら、ホストによっては怒りの電話がかかってきたりするので要注意。

ホストには店舗によって違うが、ミーティングがあるのだ。その時に、今日来る予定のお客さんを店長やマスターに話したりする。なので、ドタキャンされたりすると店長に問い詰められたりするのだ。その時に溜まった怒りを、ドタキャンした相手にぶつける。そういうホストは新人じゃなくてもやったりする。なので、基本的にドタキャン、無理な約束は絶対に断ろう。


店に電話すると、たいていは役職についている人が出てくれる。
この人に、店について色々と聞こう。聞くべき事は、大体こんな感じだ。
これは、雑誌に載っている事と間違っていないかどうかの確認でもあるので、一応しておいた方が良い。

・初回料金はいくらか。
・フリータイムか、それとも1時間だけその初回料金なのか。
・飲み物はだいたいいくらか。
・後は、目的の子(さっきのお気に入りのホスト)はいるのか。

だいたいこの四つだろう。これを聞いたらメモしておいた方が良い。
その後は一度電話を切ろう。そして深呼吸。
来店した時にちゃんと説明されるのだが、緊張して頭が真っ白になっている場合があるかもしれない。
行く前に、これは事前に理解しておいたほうが良い。
ホストとの人数は何人ぐらいなのかとか、余計な事は聞いても意味がないので、それは来店した後にしよう。


もしこの店で良いや、と思ったら、もう一度店に電話しよう。
二度電話かけると申し訳ない気が、とか思うのならばホストに直接電話でも良い。
後は約束して、遊びに行くだけである。


存分に、楽しんでいってほしい。
好奇心を満たしたり、嫌な事を忘れるのは大切な事だ。


俺は一度は行ってみた方が良いと思う。
ホストクラブは女性に対しては決して、ダークなところではないだから。


ホスト1 ― 1日目はこれで終わる。

この話だけでも、たいていの事は書けたと思う。

まだまだどんなお客さんが来店してきたとか、こんな新人ホストが入ってきたとか、書きたい事はたくさんある。しかし、この一日目である程度、ホストの基本的な部分は知ってもらえたと思う。もしかすると、これ以降の話は魅力が半減してしまうかもしれない。

最初に言っていた通り、本当にただの排泄行為で終わるかもしれないということを、考慮して読んで頂けたらな、と思う。


2日目の事を書いても同じ事の繰り返しなので、次回は二週間後から書くつもりである。

写真撮影をしてから、のお話だ。その前に、ここに少しだけ俺とDが所属していた店の説明をしたいと思う。


あらかじめ言っておくが――

ここに記載する名は全て源氏名であり、店名も俺が実際に働いていた店名とは違う。もし実在する店名、過去にこのような名のホストクラブがあったとしても、全く関係ないのでご了承ください。


俺が一日目に写真を見た時、売り上げ順はこのようになっていた。


    店長

No1 エイジ

No2 カイ (マネージャー)

No3 牙狼

    アイル

    ゆいと

   キョウスケ

    SAKI


ここに、Dと俺Kが含まれる。二週間後の写真撮影が楽しみだな、と思ったものだ。

ちなみに、エイジさんから牙狼さんまでの写真は全て他の従業員よりも大きかった。といっても、ナンバー順でさらに大きさが違うのだが。


俺が入店して一週間後。
SAKIさんは飛んでしまった。店長に何も言わず、辞めるとも告げず、ぱったりと店に来なくなった。
彼はかなりのイケメンだったのだが――二ヶ月働いて、一人も指名が取れなかったらしい。かなりの口下手だったらしいのだ。
彼の存在は、俺に「顔だけではホストは売れない」と教えてくれたような気がする。
一度もちゃんと会話した事はなかったのだが。


俺が一つだけ言いたい事がある。
前にも同じような事を言った気がするが。


「俺、ホストやっててナンバーワンやった」
と言う事を妙に自慢してくる男があなたの周りにはいないか?
もしいるとしたら、こういう奴は真っ先に疑った方が良い。

ちなみに、この男が嘘ではなく本当にナンバーワンになっていた事があると仮定して疑えと言っている事を了承してほしい。


実はナンバーワンなんて、誰にでもなれるのだ。

長く続けていればいるほど、その確率は上がる。

何故か。

客が増えていくからである。オラ営や色をしているホストだと切れるのが早いが、たいていは三ヶ月は関係が続く。長く続けていれば、そういう客が増えていくので、必然と売り上げがあがるのだ。新人がもしもこの人の売り上げを一ヶ月だけ抜いたとしよう。しかし次の月には必ず負けているはずだ。


ちなみに、ナンバーワンの寿命が短い。

ナンバーワンとは、月の売り上げによって決定される。ということは、三ヶ月店が経営を続ければ最大三人のホストがナンバーワンになれるのだ。

ナンバーワンを維持するのは難しいのである。


店には、必ず「売り上げ表」というものがある。

これはどの店も当然あるものだ(客は見る事は出来ないが)。逆にない店はおかしい。

それにはその日の売り上げが書かれている。

新人時代はあまり関係ないのだが――先輩達はその一冊のノート、一枚の紙面に書かれた数字で恐ろしい争いを行う。

ホストの売り上げは一ヶ月単位であり、最終日は「締日」と呼ばれる。

要はその日に売り上げ一位になっていれば良いのだ。

なので、その一日前に暫定一位の男が、二位の男に三十万、五十万の差をつけていても、安心してはいけない。

締日が終わっていざ結果を見てみると、二位の男に一万円の差で負けていたりするのだ。二位の男は油断して売り上げ表を見ていなかった一位の男と違い、毎日売り上げ表を見ていたからこそ一位になれた。

……少し説明が難しいので、また後日書く事にする。申し訳ない。


――故にナンバーワンとは実はそこまで凄くはない。

なので、もしも自慢する奴がいたら即聞こう。


「へぇ、あんたナンバーワンだったの? どれくらい大きな店? 何ヶ月間維持したの? 従業員は何人?」


質問攻めすれば、落ち込む可能性70パーセント。

ホストはそりゃナンバーワンだったら響きは良いが、それよりもどれだけ稼いでいるか、である。
大きな店舗でナンバーワンだったとしても、ナンバーワン。
小さな店舗でナンバーワンだったとしても、ナンバーワン。

稼ぎは全く違うのに、両者はナンバーワンという言葉で一括りにされてしまう。
ようするに、店に一人は必ずナンバーワンがいるのだから……そこまで自慢できる事ではないのだ。
もし自慢するなら「月何百万何千万の収入」とかを自慢するべきだろう。ナンバーワンを自慢しても全く意味はない。
……というよりも、本当に稼いでいる人は既に雰囲気を持っているから言われなくても分かる。
それに、自分から自慢しなくても、自然と周囲には理解されるものである。


不細工なナンバーワンほど、自慢したがるのだ。


そんな奴は、やはりしょぼホスである。


以上、終わり

「ホストってさ、どう思うよ?」
 ラーメン&から揚げを食べながら、Dが聞いてくる。
「一日じゃよく分からへんけど……案外なんつーか……」
「楽、っぽいよな」
「いや、逆に難しい気がするなぁ」
「そう? 酒飲んで、女喜ばせりゃ良いんやん。こんなの簡単やわ」
 俺にとっては難しい事でも、Dにとっては案外楽だったのかもしれない。

 互いにラーメンを食しながら、自分が以前していた仕事の話をした。
 俺は居酒屋でのバイト。就職は一度もした事がない。高校を出てからはアルバイト生活だ。色々なバイトをしてきたが、居酒屋のバイトが一番楽だった気がする。朝早起きするのは苦手なのだ。引越し業やコンビニを一時期していたが、何度も遅刻していた。それでクビになりまくった。


 Dも俺と同じようだった。
 人材派遣やイベント業、出会い系のサクラや、レストラン、居酒屋。
 色々とやってきていたらしい。やはり、朝は苦手らしく、それで人材派遣やイベント業をクビになったのだという。 

 居酒屋は時間帯的に楽だったよなー。そんな共通点が見つかり、俺達は急速に距離が縮まるのを感じた。


 何故、俺達がホストを始めたのか――。

「楽に暮らしたい」が俺。

「ホストクラブを経営したい」がD。

 微妙に違うが、共通点は「金が欲しい」という事である。

 金、女。格好良さ。
 ホストになる理由はたいていがこの三つに含まれる。


 四つ目の理由で入店してきた男がいたが――それはまた別の話である。


「K、俺達でナンバーワンとツー張れるようになろうな!!」
 Dが言った。


 その言葉は後に重く、俺の心に突き刺さった。

 その後の記憶は何となく、でしか覚えていない。


 時計を見て、残り30分で終わるんだな、と思ったこと。


 あの後さらに飲んだこと。


 一緒にポコさんも飲んだこと。


 カイさんやキョウスケさんが椅子に立ち上がって、瓶で酒を飲んでいたこと。


 曲を誰かが歌っていたこと。


 その曲に合わせて、ビールではない何かを飲んでいたこと。



 全てが映像として記憶にあるが、何を喋っていたのかは思い出せない。
 一体、何をしたんだろう。
 気がついた時には、俺はガランとしている店の中でソファーに座って寝ていた。
 カイさんも、キョウスケさんも、もちろんポコさんもいない。音楽も流れておらず、照明も明るい。
「あ、おはようK」
 俺の顔を覗き込む顔があった。


 Dだ。


 俺は意味が分からず、とりあえず眉を寄せてみた。照明が明るすぎて目が痛い。身を起こしてみる。
 ……どうやら、仕事は終わったようだった。俺とD、それとボーイの鬼ちゃん以外、誰もいない。先ほどまで記憶にあった空間とは異質な雰囲気が漂っている。
「あれ、俺、何してた……?」
 とりあえずDに聞いてみる。Dは苦笑していた。
「ポコさんと飲み勝負したんだよ」
 D曰く、どうやらそれで負けて途中でぶっ倒れたらしかった。
「でもすごかったぜ? シャンパンコールとか覚えてる?」
「シャンパンコール?」
「あ、やっぱり記憶なかったんやなぁ。かなり目が虚ろやったしな。……とりあえず水飲み」
 Dが水を出してくれる。俺は少し飲み、グラスをテーブルに戻した。
「K、酒弱いんやなぁ。あんま無理したら体悪くすんで? 気ぃ付けや~」
「あぁ、うん」
「歩ける?」
「大丈夫」
 俺は肩を借りながら、立ち上がる。
「大丈夫か?」
 ボーイの鬼ちゃんが話しかけてくる。
「大丈夫っす」
「そうか。明日……ちゃんと来いよ」
 無愛想な顔で、それでも少し心配そうな表情で、鬼ちゃんが言った。俺は苦笑いをしながら「はい」と返事をした。

 実は、一日で辞めるホストはかなり多い。

 そういう消えていったホスト達を数多く見てきた鬼ちゃんからの、励ましの言葉だったのだろうと、今では思う。

 二人に肩を担がれ、俺は店を出た。



 こうして、俺はぐだぐだなホスト一日目を終えた。



 店の鍵を鬼ちゃんが閉める。エレベーターを降りた所で、鬼ちゃんとは別れた。
「K、腹減ってる?」
「あ、微妙に減ってる」
「じゃあ、ラーメン食い行こうか」
「ラ、ラーメン? 重いな~」
 はは、と軽く笑う。頭はがんがんするのに、不思議と腹は減っている。
 奇妙な感覚。
 ラーメンのような重いものを食べるのも悪くはない。


「いいね、行こう」

 俺達は歩き出した。

「そうそうポコちゃん、俺昨日映画見に行ってん」
「まじでー? 前言ってたアレ? どうやった!?」
「めっちゃおもろい! 今度行ってみてくださいよー。絶対はまりますから!」
「えー、でもなぁ」
「そういや、俺も見に行ってないなー」
「カイさんも行ってないんすか? 絶対見に行ったほうが良いっすよ!」
「え、カイもまだ見てないの?」
「おう、時間ないからなぁ」


 三人が次々と言葉を交わしていく。俺はその間、灰皿の交換やらグラス拭きをしていた。まるでお掃除屋さんだ。全く会話に入れない。自分的には入ろうとしているのだが、その映画を見てもいないし、この三人の輪の中にどう入っていけば良いのか分からない。
 ちらっ、ちらっと、カイさんと目が合う。その表情が無に等しく、冷徹な獣を思わせる。俺の焦燥感はさらに増す。しかし、言葉が出てこない。

 そんな俺を見かねてか、カイさんが俺に話しかけてきた。
「Kって何か昔の俺に似とるわ~」
 俺は慌ててその意味を汲み取り、言葉をつむぎだした。
「え、そうなんすか?」
 それはあまりに短く、単調でカイさんの言葉を膨らませるような力もなかったが……繋ぎとめる程度には機能したようだった。
「あぁ、最初の頃、俺も全然喋れんでなー。グラス拭きばっかしとったわ」
 ……これって、公式なダメ出しですか? 客の前で言われている事に対し、若干打ちのめされつつも、俺はその言葉の繋ぎのために相づちを打つ。
「へぇ~、全然想像つかないっすよ。カイさん、めちゃくちゃホストって感じがするし……」
「まぁ三年前の話やしな」
 どうやらカイさんはホスト暦三年らしい。
「あー、懐かしいねえ。私と会ったのもその頃だよねー」
 ポコさんとカイさんが出会ったのも、三年前らしい。
 ホストと客の付き合いは短い。三年というのは実はかなり長い方なのだが……この時の俺は知らなかった。

「ほんでな、よく叱られとったわ。罰ゲームでよう酒飲まされたなぁ」
「え?」
「さて、K。飲むか?」
 なんだか急な振り方だが――話を広げる才能がないのなら、飲め、という意味が込められているらしい。少しでも多く飲んで、単価を上げろ、と。この時の俺はそれには気づかなかったが、これを断ったらその時点でホストをクビになるような気がした。


「鬼ちゃーん、アイスビール5つ持ってきてー」
 ちなみに、アイスビールとはその名の通り、ビールに氷が入っているお酒だ。ホストが飲むものであり、これは客には出されない。ホストが酔っては仕事が出来ないため、客よりも若干薄めに作られているのだ。とはいっても、それを5杯飲めば通常のビール三杯ぐらいにはなるだろう。
「ほら、ライ!」
 ライーラララライーラララライソラライソライケイケゴーゴー♪ ライーララララライー――

 俺が一気飲みをしている間、カイさん、ポコさん、キョウスケさんの三人は妙な手の動きで俺を煽っていた。誰かが一気飲みする時の掛け声らしい。俺はその言葉に違和感を覚えつつも、1杯、2杯とグラスを空けていく。


 ライーラララライーラララライソラライソライケイケゴーゴー♪


 3杯……4杯……。
 酔っているわけではないのだろうが、酒が喉を通らない。
 半ば垂れ流し気味で、それでも俺は飲み続けた。


 5杯……。
 飲み終わると、「おー!」とカイさんが感嘆の声を上げた。
 と、同時に俺の頭を掴んでぐるぐると回す。

 酔いが、回る。


 俺の中の何かが、切れた。