ソロトレッキング Vs グループトレッキング 独りとグループ どちらが良い? | 情熱山脈(passion mountains)のブログ

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ともかく山が好き...春~秋はトレッキングを...冬~春はバックカントリースキーを通して雪山の魅力を...

昨日は、高齢者の遭難について年齢別に検証して、決して高齢者だけが危ないのではない...というお話をしました。

 

 こんにちは、情熱山脈です。

 

今日は予告通り

 

単独行と複数行を山岳安全から考えてみたいと思います。今日も最後までご覧くださいませ。

 

 さて、昨日と同じ考え方で現状を見て見ましょう。

今年の長野県のデータです。詳しくは下の山岳通信を是非ご覧ください。

さて、単独登山者が遭難者全体に占める割合は上表から計算すると...

今年が37.3%(発生件数) 50%(死者数) 25%(行方不明) 33.8%(負傷者) 34.2%(無事救出)34.2%(遭難者計)です。

昨年のデータも参考に計算してみました。

33.2%(発生件数) 46.9%(死者数) 100%(行方不明) 24.3%(負傷者) 30.7%(無事救出)30.2%(遭難者計)

 

あまり変化は無いように見えますが、発生件数、遭難者共に増えています。

これは、コロナ禍開けて入山者が増えている事にもよると思います。

 各山小屋でも、コロナの時に比べると一人一畳が基本で定員は増えました。ただし、コロナを機会として宿泊を予約制にしたのは継続しておりこれは良い事であるとと思います。

 

少し古いデータではありますが...

https://www.pref.nagano.lg.jp/kankoki/sangakusounan/kentou/documents/06shiryou3.pdf

これは長野県が出している情報ですが...

のようなデータが出ています。

 山域でも大分違うんですね。

ただし、この論文では単独行は遭難した場合重大な事故になりやすい、と記載されています。

その反面、グループの場合、気象状況の悪化などでの遭難の際多数の遭難者が出やすいとも記されています。

 遭難件数の比較では、昨日の高齢者の遭難と同様となります。

 

そこで。遭難が起きる原因を探ってみると・・・

  1. 経験の浅さ
    装備が不十分、余計なものを持ってきて大切なモノを持ってきてない。マナー、基本的な動作(梯子を上り下りする時縦木を掴むなど)が理解できていない。登山計画の適切な立て方を知らない、もしくは、登山届自体を提出していない。
     
  2. 中高年の場合、体力の衰えや持病に合わせた計画となっていない。標準タイムで計画を組んだり、翌日に残るような飲酒をするなど。
     
  3. レジャー感覚での入山。よく遊歩道から登山道への入り口に”ここからは登山道となります。登山に必要な装備がない方は立ち入らないでください”の表示がありますね。これの意味が解らない人が、スニーカーに短パン、Tシャツで入山してしまうなど、お弁当持ってハイキングのノリで入山する。特に東京の高尾山などはそのような人を良く見かける。

     

     

     
  4. インターネットでの情報入手のみに頼る。そのまま信じ込む。経験者から教わるのではなくインターネットにあふれている情報(Youtube 山レポなど)でのみ情報を得て入山する。
     
  5. 山のグレーディング表に頼り過ぎ。あくまでも参考である。同じルートでも体力レベルや天候、グループ人数によって難易度が異なることを考慮していない。
     
  6. 1にも共通するが、山では”セルフレスキュー”という概念がある。なんでもかんでもすぐ110番ではない。自力下山もしくは自力避難をするための知識と装備、技術が必要である。
     
  7. グループ登山であるが、グループ内の人間関係や統率が悪いと、本来遭難しなくても良い人までが遭難してしまう。例を挙げると...

     

     

    実際に起きた事例を詳細に解説している動画をいくつか挙げてみました。

さて、上の問題点を単独行とグループ行で分けて考えてみます

  1. 単独行は自分だけが頼りである。
    天候を読む力、自らの身体の状況(まだぜんぜんイケル、疲れてる、腹が減ってる、そろそろ尿意が...)をきちんと把握する力、一般的な登山技術などが備わった人であれば単独行はそれゆえの危険は少ないのではないかと思います。
     ただ、上記のように偏った情報、経験の人が増えてしまう傾向があります。(この前、大キレットをストック突いて行く人を見ました。)
     
  2. グループ行について。
    家族、友達、山岳部、最近はインターネットで知り合った人たち、ツアーなどの形態があります。
     いずれにしても、組織で動くことの難しさが出てきます。1はマイペースで疲れた時はすぐ休憩もとれますし、食事もとれます。
     しかしながら、グループの場合、全員が統一された行動をとる必要があります。
    よって、足が遅い人がグループに迷惑をかけてはいけないと無理に急いだり、自分勝手な人が居ると、自分だけ別ルートを行って後で合流しようなどと言い出したり。
     山のグレードで難しい山なのに、誘われたからとか、ガイドさんがいるから大丈夫と自己申告で嘘の申告をしてしまうとか...その時点で組織組成の失敗が起きていて、それが露呈するのが山行をスタートしてからというので始末が悪い。
     ガイドさんに任せるのは決して良い事ではありません。全員が個々に地図を見て、雲を見て、天気を調べて、一人はぐれても大丈夫なように装備を持って(例えばレスキューセットを2人で1個はいけません)行くのが必要です。それでこそ、トラブルが起きた時にお互いが助け合って救助するというグループ登山のメリットが出てきます。

以前ブログにあげた図をもう一度上げて見ます。

私のブログを以前からご覧いただいている方は、またこの図か...と思われたでしょう。

実際の遭難という事象をひきおこす行為を分類したものです。
 おおざっぱに言うと、無意識に行われる行為と意識的に行われる行為があります。

 

そこで、重要なのは上記は顕在化した失敗を現わしています。例えば岩場で三点支持を忘れた、先ほど述べた、ガイドさんがすべて道を決めるのだからという思い込みで道を一緒に間違う規則ベースのミステイクなど。

 

 そして、この顕在化した失敗が起きる原因としては顕在化していない失敗がベースにあることを忘れてはいけません。それは...

つまりは、組織として動く場合は、この図にあるようないろいろなプロセスを経て組織が形成されます。登山で見ると重要な項目がいっぱいですね。
設計、建設、操作はあまりピンとこないのですが、それ以外は重要です。グループ登山の場合、参加する全員がこのプロセスを共有する必要があります。

 さて、その中で組織の運営が悪いと、つまりは課題/環境の部分ですが、無理な目標設定、組織の中の不穏な人間関係、情報伝達が偏ったりしていて共有されていないなど...
 これらのことは不顕在化している失敗ですが、これがあって先ほどの図の意識的 無意識的な危険行為が発生します。

 

 今日は、単独行とグループ行でどちらが危険なのかを解説してきました。

 

インターネット全盛の時代でも、やはり、先輩からの生の教えって大切だと思います。

そのような先輩がいない?いやいやいますよ。山小屋の主とか登山相談所などの職員さんなど。

 最後に単独行がほとんどの自分の場合、どうやって大キレットやジャンダルムに登れるようになったか?というと...
 確かに、山ブログ、雑誌、インターネットなどからの情報で登山を始めました。

ただ、百聞は一見にしかず...上記のような情報を実際に自らが試して自分のモノにしてきました。

 かつてホンダの創始者 本田宗一郎がいいました。

 

”人まねするな。みずから試せ” と

 

上記の人まねするなは人が言っていることはそのままマネしないで自分で試して見なさいという意味だったのでしょう。