今日から弟子がレモン栽培の見習いにやってきました。
今日は悪友のT君とM君も比叡山の麓にある本農園に手伝いに来てくれる日だったので、4人で作業しました。
弟子になったK君は25歳、還暦を過ぎた我々オッサン達との体力の差を見せつけられましたね。笑
K君の母親は以前の日記「ほそみち農園の慰安旅行。カニ食べ放題の巻」に書いた我々の遊び仲間のヒロちゃんの息子です。
現在彼は農業とは全く関係のない仕事をしています。
就農するのは5年後辺りになります。
我が本農園から歩いて2分の場所にK君が親から引き継いだ農園があります。
その農園は40年ほど手付かず状態のままです。
事の発端は私がヒロちゃんに手付かず状態の農園にマイヤーレモンの苗木を植えて置けば5年後にそこそこの収入が見込めることを話したことでした。
嫁さんのお父さんが育てていた自宅前の畑のマイヤーレモンの木はお父さんが亡くなってからの7年間、全くの手付かず状態でした。
2020年の年末に我々がシカゴから帰国した時に自宅前の畑に生えていた背丈ほどの雑草をかき分けながら進んで行くとマイヤーレモンの木に300個ほどの実が成っていたのです。
7年間、全く肥料もやらず、草刈りもしなくてもマイヤーレモンの木は勝手に毎年300個の実をつけていたのです。
こんな楽な仕事なら俺でもレモン栽培が出来ると思いました。笑
実際にレモン栽培を始めて判ったのですが、苗木を植えてから3年間はかなり手間がかかりますが、4年目からは草刈りをせずに放っておいても勝手に実を付けてくれるものだったのです。
勿論、ちゃんと草刈りをし、適切な肥料を適切な時期に適切な量をやれば成る実の数や大きさが違いますが...
この話をヒロちゃんにしたら、ヒロちゃんは息子のK君に話しました。
するとK君が興味が沸いてきたのです。
そしてK君が我が本農園を見学しに来ました。
還暦を過ぎたオッサンの私がやってることなので、若いK君は俺でも出来ると思ったのでしょうね、私に弟子入りしてレモン栽培のノウハウを学ぶことを希望しました。
今の若者は賢いですね❕
昭和の人間である私はシカゴで働く時に後先考えずに何とかなるさ❕という考えでいきなり飛び込んでしまうものですが、今の若者はちゃんと将来のことを考えて行動しますね。
いきなり新天地に飛び込むのではなく、現在の生活を維持しながら5年後や10年後の新しい生活を計画して進んで行くのです。
今は現在の仕事をしながら少し無理しててマイヤーレモンの苗木を沢山植えておき、ある程度の収入が見込めるようなる5年後にそれで生活できるのであれば現在の仕事を辞めて農業に転職するのです。
恐らくそれまでは週末農家になると思います。
彼が継いだ40年ほど手付かず状態の農園にレモンの苗木を植えられる整備された状態にするまでに週末農家の彼には半年や1年かかるかもしれません。。
そうであっても5年後や10年後には真面目に作業していればそれで生活できるようになるでしょう。
彼はレモン栽培のような農業は世の中で一番に安定した仕事だと判断したのです。
どんな大企業で働いていようとも会社の都合でリストラされるかもしれません。
たとえば最近の例で言うと、竜王にあるダイハツの滋賀工場は去年末に認証試験で不正があったことを公表し、国内の完成車工場での生産を停止したことは記憶に新しいと思います。
真面目に働いていた従業員達はいきなり工場が生産停止になり、生活が変わってしまうのです。
ところがレモン栽培農家は人々がレモンを食べなくならない限りは失業しないのです。
私の様に米国企業で電子機器の開発をしているエンジニア達は日々進歩している新しいテクノロジーに付いて行けなくなった時点で確実にリストラされます。
エンジニアは会社にとっては工具箱にあるひとつのツールであり、それが型落ちになれば単に工具箱の中のスペースを無駄にしているだけの厄介者になるのです。
一方で農業は一度身に付けた技術は一生使えるものです。
それがK君にとって農業に魅せられた大きな理由の一つでもあります。
日本では弥生時代から農耕が始まったとされていますが、弥生人が持っていた農耕技術と現在の我々が持っている農耕技術とは基本的なものは全く同じです。
作物の遺伝子組み換えという邪道な分野はありますが、我々生産者にとってはトラクター等の便利な農機具が使えるようになっただけで、現在でも肝心なところは全て同じなのです。
もし弥生人が現在にタイムトラベルしてきたとしても、農機具を一切使わずにちゃんとお米を作ってくれるでしょう。笑
現在日本の自給率は38%辺りであり、先進国の中では一番低いです。
レモンの自給率になると16%です。
スーパーマーケットに並べられている84%のレモンはカリフォルニアやチリなどの外国からの輸入物です。
安全にこだわるならやっぱり国産レモンですからね。笑
無農薬栽培のマイヤーレモン1個は100円ぐらいで出荷されていますので、レモン農家が大金持ちになることはありませんが、500本ほどのレモンの木を栽培すれば普通のサラリーマンの収入以上は見込めます。
繰り返しになりますが、地味な仕事であっても人々がレモンを食べなくならない限りは失業しないのです。
前述した様に嫁さんのお父さんが育てていた自宅前の畑のマイヤーレモンの木にお父さんが亡くなってからの7年間、全くの手付かず状態であっても毎年300個ほどの実が勝手に成っていたことは彼には農業は公務員と同じぐらいに安定した仕事だと判断したのです。
人には向き不向きの仕事がありますが、彼には太陽の下で働くのが好きなのです。
私は600本のマイヤーレモン栽培する計画で働いており、現在は500本以上の苗木を植えました。
そして私は彼のレモン栽培を応援してあげることを約束しました。
営業が得意な彼に今年の秋に実が成ったら、それをサンプルとして営業したらいいと確かに言ってあげましたが、彼は本業をしながらサンプルも持たずに営業していたのです。
そして既に2件も注文を取っているのです。
本農園近くにある彼の農園は今でも手付かず状態であり、一本もマイヤーレモンの苗木を植えていないのに売り先だけは確保したのです。
若いから4年も5年も待てない気持ちは判りますよ。
そして自分の得意な分野で活躍したいと思う気持ちは理解できます。
我が農園には500本以上の苗木を植えたとはいえ、今月や先月に植えた苗木を含めた数ですからね。
今年に実を付ける苗木はその半分ぐらいだし、我が農園は去年にJAさんと契約しているので、K君が注文を取ってきた取引先に沢山のレモンを渡すわけには行かないのです。
K君は「マイヤーレモンは有望っすね❕ まだまだ注文取れますよ」と言うのです。
それはアカン❕
先ずはちゃんと苗木を植えて、立派な実を提供できるようになってからや❕
私は営業の経験がないので勘違いしていたかもしれないのですが、取引先を一軒増やすのに半年や一年通い続けなければ取れないものだと思っていました。
しかも我が家のマイヤーレモンを何度も試食してもらってからだと思ってました。
恐らく去年に幾つもの店舗でほそみち農園のマイヤーレモンが一斉売り出しになった時に買ってくれた業者さんかもしれません。
何れにせよ、彼の農園を整備して苗木を植えてからになると最低でも5年ぐらいはかかるので、最短でお客様にレモンを提供するにはほそみち農園のレモン畑を増やして、苗木の数を増やすことでした。
ほそみち農園はレモンの苗木を更に1000本ほど植える農地があるのですが、それをやったらお金は儲かっても還暦を超えたオッサンの私には過労で死んでしまうことになるでしょう。
だからK君に自分で取ってきた注文は自分で育てた苗木に成ったものを販売するように話しました。
農地と私が4年前から育てている苗木を提供してあげます。
苗木を植えるのもK君自身がやってもらわないとこれ以上の労力は私には無理です。笑
と言っても、私が提供する4年物の苗木でもそこそこの収穫が見込めるのは2年や3年後になりますので、今まで嫁さんが直売しているレモンをK君に回すことにしました。
申し訳ないと思いますが、嫁さんの親戚が営んでいる直売店に出荷するレモンは今年の秋からほとんどなくなるでしょう。笑
彼は若いからどんどん事を勧めたいのです。
そしてやる気のある若者を応援してあげるのが我々の勤めですからね。
しかし先ずレモンの苗木を植えることから始まると私は思うのです。
スコップを握って泥だらけになり、鶏糞などの臭い肥料にまみれて一本一本苗木を植えてこそ、農業者と言えると私は思います。
だから彼に先ず苗木を植えに来い❕と伝えました。
そしてそれが今日になったのです。
私の農園にK君が苗木を植えて育てた分は自分が営業したものに提供してもらえるとことになったので、彼は目の色を変えて頑張って苗木を植えていました。
ピアスをしているお洒落な若者は一本一本苗木を頑張って植えていけば近い将来に自分の収入になっていくことを肌で感じたのです。
そして私の農園で真面目に真剣に辛い肉体労働でも喜んでやるのです。笑
この分だと農業に転職するのが5年先ではなく、もっともっと早くなるかもしれません。
やはりお金というものは人を一番にやる気にさせるものなのでしょうね。笑
何れにせよ、やる気のある若者と一緒に仕事をするのは楽しいものですよ。