ゴールデンウイークも始まり、私と同世代の者達は都会に住んでいる子供達が孫を連れて帰ってきて、家族団らんの時間を楽しんでいることだと思います。

晴天の今日は家族揃って出かけるには持って来いですね。

そんなゴールデンウイークの完璧な日に畑で汗を流して肉体労働をし、1日で2.5㎏も体重を減らす可哀想な奴がいるのです。

 

それが私です。

 

これまでの私の人生の大半はゴールデンウイークを味わったことがないのです。

日本企業で働いていた頃は技術部開発課の課長をしていたのですが、悲しいことにゴールデンウイークの期間に毎年ヨーロッパ国(ほとんどドイツ)で我々の業界のセミナーがあり、私は海外出張で家にはいませんでした。

可哀想な私の息子は父親と子供の日に一緒に遊んだことはありません。

 

セミナーでは英語でのプレゼンをするのですが、あの頃の私の英語はいい加減なものだったので、大変でしたよ。笑

プレゼンの内容は私が開発したものの中で、技術を共有すれば我々の業界のエンジニア達が役に立つものを無料で公開します。

 

まぁ、早い話がお互いに得する情報を共有し合うのが目的です。

そのセミナーは我々開発者にはとても有益でしたね。
お互いに開発したものを著作権に関係なく使わせてもらえるのですからね。
 

しかし私のプライベートは散々なものでしたよ。

あの頃は私の英語はいい加減なものだったので、英語でのプレゼンをビデオカメラで撮影し、帰国子女で英語がペラペラの開発課の部下の女性にチェックしてもらって、ダメ出しをしてもらったり、想定される質問を全てリストにし、その回答を準備するのも大変な作業でした。笑

ゴールデンウイーク前は私にとって地獄の日々でした。

 

それで海外の電子機器メーカーの者達と3日間同じホテルで過ごします。

そして折角ヨーロッパに出張したのだから、スイスの取引先に挨拶しに行って、我々の注文を作ってくれているエンジニア達と一緒に飯を食って人脈を作っておけという酷なことまで言われるのが普通だったので、素直にセミナーから返してもらったことは一度もありませんでした。

でもそれが私がシカゴで働くキッカケになったのですが...

 

私は技術部長と大喧嘩し、こんな会社もう辞めてやる❕と判断しました。

私は技術的に自分が正しいことを主張しているのに、立場を利用して強引に私が間違っていることにしようと必死で努力している上司を黙認する幹部連中を見て、一生働く仕事場ではないと判断したのは今でも大正解だったと思っています。

 

そしてそのヨーロッパでのセミナーで親しくなったエンジニア達にこんな会社辞めるぞ❕Eメールを一斉に送ったら、その直後に3社からそれじゃ、うちの会社で働いてくれというオファーがありました。

シンガポールとテキサス、そしてシカゴの会社でした。
何年間も同じセミナーで顔を合わし、同じホテルで飯を食うのですから、お互いに会社の愚痴の言える親しい相手になったのは自然なことでした。
 

御存知の様に私はシカゴの会社で22年間働くことになったのですが、アメリカにはゴールデンウイーク休暇なんてものはありません。

だから日本企業に勤めていた時も、シカゴの会社で勤めていた時もゴールデンウイークの恩恵に与ったことはないのです。

 

2020年の年末に帰国し、翌年には確かにゴールデンウイークを味わいましたが、嫁さんの抗がん剤治療が終わった直後であり、そのあとに毎日受ける放射線治療が控えていましたので、ゴールデンウイークを楽しむ気分になれるはずがありませんでした。

そしてレモン栽培を始めてからは3月と4月は一年中で一番大切な期間なので、バイクに乗る時間もないぐらいです。

 

身を粉にして働いたシカゴでの生活を卒業し、帰国したあとは滋賀の静かな山村でのんびり農業をやりながらスローライフを楽しむことを信じていたのが大間違いでした
朝起きて、嫁さんと今日は何をする❓ あそこのラーメン屋さんに行ってみようか❓というゆるい会話をしているはずだったのに...
 
シカゴで計画していたように確かにお目当てのハーレーは買いましたよ。
でもハーレーに乗れる時間までは保証されていなかったのです。

そんな事態になるなんてシカゴで暮らしていた頃は夢にも思いませんでした。

 

今年もゴールデンウイークは始まってからずっと私は比叡山の麓にある本農園で汗びっしょりになりながらマイヤーレモンの苗木を植えているのです。

 

【昨日の私。晴天で暑かったです】

 

 

【今日の私。曇りだったので働き易かったです】

 

 
普通の人はゴールデンウイークは家族で遊びに行ったりして、楽しい思いをしているのに...
俺の人生、惨めなやなぁ...と思っても当たり前なのですが、現在の私は全くそんな風には思わないのです。
 
前述した様に、日本に帰国した後はそれまで味わえなかったゴールデンウイークを楽しみ、ハーレーをぶっ飛ばして人生を楽しむ積りでいましたが、今の私は畑で汗をかいている方が充実した日を送れるのです。
そんな風に私が成るなんて、シカゴ時代は全く考えられなかったことでした。
 
その最も大きな理由は4月の特別な自然の圧倒的な爆発力に私は感動しているからです。
 
これは滅茶苦茶面白いです❕
 
つい二週間ほど前には農園に雑草はほとんど生えていませんでしたが、現在では膝より高い雑草が農園全体に生えています。
このまま二週間も放っておくと軽トラが農道を走るのに支障が出てきますので、草刈りをしなければなりません。
でも草刈りをしても1円の儲けにならないので、出来るだけ後回しにします。笑
 
雑草が生えてくるということはマイヤーレモンの苗木も急激に成長するのです。
実は4月5日にイゼ立てという周りの農家の方達が集まって用水路を掃除する奉仕作業があったのですが、我が農園から比叡山の湧き水の源流地へ入るフェンスを閉じるのを忘れた農家の方のお陰で鹿が夜中に我が農園に入ってしまい、我が家の120本の苗木の葉っぱが全て食べられてしまいました。
 
源流地から用水路に流れる湧き水の量はお米作りをしている農家の方達が調整するものです。
レモン栽培をしているほそみち農園は全く用水路の水は使わないので、私が湧き水の源流地へ入ることはありません。
ある農家の方が「作業が終わったら必ずフェンスを閉じておくから、今は開けたままにしてほしい」と言われたので、私は言う通りにしたのですが、閉めるのを忘れていたのです。
 
私は鹿に荒らされた苗木達を見て、終わったなと思いましたよ。
苗木達は冬を越してもしっかり葉っぱが付いていたので、今年の収穫は期待できると楽しみにしていたのに...
苗木に葉っぱななければたたの棒ですよ。
沢山の棒だけが立っている滑稽な風景でした。
 
私は民事裁判をしてその農家の方から損害賠償を取ってやろうと一瞬だけは考えたのですが、近所に住む嫁さんのお笹馴染みの農家のKちゃんは裁判なんかは絶対にやるべきではないと私を説得しました。
Kちゃんも何度も同様の事をやられており、絶対に他の農家の方を信用してはいけないのと、他人に害獣用のフェンスを上げさせたら必ず自分自身で確かめに行くのがこの村のプロ農業の常識であり、それを怠った私にも責任があると言われてしまいました。笑
 
仮に一本の被害が1万円だとしても120万円の損害になりますし、今年に予定していた収益や、それまで育てた作業を考えると一本の被害が2万円でも全然足りません。
そして全ての葉を食べられた苗木は茎が茶色に変化し、枯れてきました。
 
定年退職まで農業開発センターで指導員をしていた嫁さん従弟のMちゃんに見て貰って、何とか苗木が枯れるのを食い止める方法がないかを訊きました。
 
ありました❕
 
Mちゃんはそのまま放っておいたら4月末までに新葉が生えてくるので問題ない❕とのことだったのです。
3月に苗木には十分な肥料を撒いていたのですが、Mちゃんはあえて何かをするなら、リンだけの肥料をやったら新葉が生えるのを促進するとアドバイスしてくれました。
だから絶対にその苗木達を引き抜いて新しい苗木を植えないように私に念を押しました。
じっと我慢して待っていろと...
 
ほんとかよ❓と思ってましたが、4月末になってMちゃんの言う通りになりました。
全ての葉を食べられて棒状態になった苗木の全てに沢山の新葉が生えていました。
 
 
私はビックリしましたね。
雑草が急に成長するのと申し合わせた様に同じタイミングで棒状のレモンの苗木にも一斉に新葉が出て来たのです。
 
大自然の逞しさに感動しましたよ❕
 
大自然には摂理に準じたタイミングというものがあることを私はよーく知っています。
日本で生まれ育った我々が英語を習得するには小学校から大学までの何年間もややこしい文法やらを全て勉強する必要がありますが、今日生まれたアメリカの赤ちゃんは5年後に貴方よりも上手が英語を話します。
詳しい説明は省きますが、耳から聞いたものをそのまま無条件で頭の中に入ってしまう時期が人生で一度だけあるのです。
 
今日生まれたアメリカの赤ちゃんは過去分詞や現在完了形などは一切知りませんが、3年や5年後には貴方よりも上手が英語を話します。笑
日本人の我々も日本語の文法なんか全然知らなくても保育園に行く頃は保母さんを困らせてしまうほどの上手な汚い日本も話せるようになるのと同じです。
 
マイヤーレモンもタイミングというものがあり、4月に生えた枝にだけ実を付けるのです。

夏にも秋にも枝は生えてきますが、実は成りません。

この時期に苗木を一本でも多く植えておくと今後の収益が異なるのです。

 

サラリーマン時代はゴールデンウイークに働くのは凄く惨めな思いをしていましたが、現在ではゴールデンウイークに一本でもレモンの苗木を植えたらお金が儲かると思えば喜んで畑で汗を流して働きますよ❕

 

Mちゃんの話ではベストは3月と4月ですが、ゴールデンウイークが終わる頃まではレモンのタイミングなのです。

その後に生えた枝葉には実が付かないものが大半なのです。

 

半額で買えるバーゲンセールに行くようなものであり、今ここで無理してでも頑張って苗木を一本でも多く植えておけば頑張った分だけ収入が増えると思えば疲れ方が半分ぐらいになります

2年前の3月と4月に植えた苗木がその年に2個や3個の実が成りました。

そしてその苗木は去年には20個ほどの実を付けました。

自然の摂理に準じたタイミングで植えてやるとちゃんとレモンの苗木は応えてくれるのです。

 

3月末から4月初旬までは農園で肉体労働をするのは気持ち良かったですね。

暑くも寒くもなく、太陽の陽が心地よかったです。

でも現在の4月末になると気温の高さで体力が多く消耗されます。

今までは6時間も7時間も心地よく作業出来ましたが、これからはそうは行かないでしょう。

 

帰国してから3年以上が経ちましたが、農業の仕事の醍醐味は作業している間は無になれることだと悟りましたよ。

世間では底辺の仕事だと言われてますが、スコップで穴を掘ったり、一輪車で土を運ぶといった単純な繰り返し作業をずっと続けていると頭を全く使わないので、脳細胞がその間はリラックスできるのです。

これは経験した者でないと私が大袈裟に話を盛っていると思われるかもしれません。

 

作業を終えて自宅へ帰る時は軽トラを運転できないほど身体は疲れていますが、頭の中は滅茶苦茶スッキリしています。

そして身体が疲れている分だけ充実感があるのです。

帰宅した直後に風呂に入って汗を流しますが、今日は5本植えたぞ❕ 3年後には各苗木から毎年1万円の利益をもたらしてくれる❕と風呂のお湯に浸かりながら捕らぬ狸の皮算用をするのが楽しいのです。笑

 

でもね、宝くじが当たったらいいと願っているのではなく、3年前に植えた苗木が成長して、現実に収益をもたらせてくれているのですから、捕らぬ狸の皮算用であっても、かなり現実的なものなので余計に私はワクワクするのです。

 

と言っても、たかがレモン栽培ですので、還暦を超えても大手企業の幹部として働いている方の収入の足元にも及ばないと思います。

自分が植えた植物が新葉や新芽を出せば単純に喜べる者でないと農業は割に合わない職業であることを言っておきます。

 

嫁さんも今日は出荷した切り花や花の苗が即日完売して喜んでいますが、その儲けた金額はセブンイレブンで1日バイトした給料よりも遥かに低いですよ。

セブンイレブンのコンビニスタッフの平均の時給は1003円だそうですが、8時間働けば8024円になります。

 

未だかつて嫁さんの出荷したものの売上が8000円に達したことは一度もありません。

以前の日記に書きましたが、年末に大王松で作った正月飾りが売れた時は8000円に達したかもしれません。

あれは年末だけに売れる期間限定商品であり、数個売れただけでそのレベルの売り上げになります。

 

以下の写真は帰国後に植えた最初のマイヤーレモンの苗木の内の一つですが、これだけ沢山の花のツボミを付けてくれたら、お金儲け関係なしに嬉しくなります❕

まだまだこれから増えてきます。

その成長を見るのがその日の売り上げ金額を見るよりもワクワクします。

繰り返しになりすが、雑草も含め今の時期の植物って日に日に判るぐらいに成長するのですよ。

 

しかし堅実にお金を儲けようと思えば農業よりもコンビニのバイトを勧めます。

嫁さんの出荷した苗や切り花は今のところは完売しているので、嫁さんの機嫌が良いのですが、昨夜にパソコンのエクセルデータを集計したら、嫁さんの時給は580円でした。

調子の良い時でこれです。

セブンイレブンの時給の約半分であることを言っておきます。笑