入院している妹の長女と東京から駆けつけてきた2番目の妹からほぼ同時にLINEの長いメッセージが着ました。
 

「ゆうちゃん(私の息子)の提案は心強く思いました。有難い話ですが、我々は現在の先生を信じてお任せしているので、ゆうちゃんのお気持ちだけを受け取っておきます」

 

私は何のことだかさっぱりわかりませんでしたので、直ぐに二番目の妹に電話して説明を求めました。

 

そしたら実は息子は私には何も知らせずに既に行動を起こしていたことを知りました。

息子はワシントン大学の医学部の抗生物質を研究している同僚に相談に行ってたのです。

そして既に色々とアドバイスを貰っていたり、息子がサポート出来る態勢を作っていたのです。

 

私が息子と話した限りでは敗血症の病原体を特定することはそんなに難しいものではなく、大学病院の研究室みたいな所でやってもらうものではないと説明していたのに、敗血症の治療の要になる抗生物質を研究している同僚に相談に行っていたのです。

私に話したことと違うことを息子が私に何も知らせずにやっていたのです。

 

実は嫁さんは何もかも知っていたのです。

 

入院している妹は耐え難い痛みを和らげるために医療用麻薬(多分モルヒネ)を最大限に投与されているのですが、その処置は末期癌で最後を迎える患者の処理であり、私の妹は命に係わる危険な状態であることを精神的に弱い私が何もかも知ったら、ショックを受けてしまうと嫁さんは感じたので、余計な詳細な話はなるべく私にしないでおこうと判断していたのです。

 

えっ、俺だけが除け者だったんかぃ❕

 

最終的には息子も嫁さんも私に全てを話す積りだったみたいですが、嫁さんは「話の途中でアンタが入るといつも面倒くさいことになるので、物事が素直に進まへんからや❕」とハッキリ言われてしまいました。

まぁ、これまでの事例から考えたら私はそれを否定することは出来ません。笑

 

息子が言った”大学病院の研究室みたいな所でやってもらうものではない”というのは決して嘘ではなかったのです。

抗生物質による治療は研究し尽されている状況であり、発展途上国の病院であってもアメリカの病院の治療であっても殆ど同じレベルだそうです。

世界でもトップレベルの医療である日本の病院の検査や治療よりもワンランク上の検査や治療は世の中には存在しないらしいです。

 

ワシントン大学ではESBLを抑える細菌が土壌に存在することを発見し、10年前に科学雑誌の『ネイチャー』誌に発表されたのですが、この10年の間に更に進歩していると嫁さんは息子から聞いているのです。

 

ESBLって何なん❓

 

ESBLというのは治療の為に投与した抗菌薬を分解してしまう極悪の酵素。

つまり治療の妨害をしてしまう悪い菌なのです。

妹の敵はESBLと呼ばれる薬剤耐性菌だったことを初めて知りました。

 

息子は入院している妹の長女と私の二番目の妹と直接に話をして、ワシントン大学は妹が戦っている敵を長年研究している者達が周りにいるので、何か役に立つことがあると説明していたのです。

 

ノーベル医学賞を20人近く排出したワシントン大学だからと言って、滋賀の田舎町の総合病院のドクターに上から目線でものを言うのではなく、またそのドクターの治療に異議を唱えるのことでもなく、ワシントン大学の新薬を試すことでもなく、ほんの少しだけ息子がアドバイスするだけでも命が助かることもあるということを妹の家族に説明していたのです。
 

医療用麻薬を多く投与されると食事があまり取れなくなります。

身体の中の栄養分が不足すると身体の抵抗力が無くなっていくのが危険らしいのです。

しかし医療用麻薬を投与されると何も口に入らないのは仕方がないことらしいです。

それでも患者は病院の食事を一つでも多く口に入れようと頑張って無理するのですが、病院の食事を食べているのでは医療用麻薬に負けてしまう可能性があると息子達は言っているのです。

 

入院している妹は頻繁に血液検査を受けているのですが、その血液検査の結果票をスマホのカメラで撮影し、それをLINEで息子に送ってくれることで息子達は妹の身体に不足してきた成分を判断することが出来ると言うのです。

例えば、ずっと病院のベッドで寝ている妹は床擦れが起きているのですが、身体の筋肉を使わないと筋肉が細っていき、プロテインが排出されるので、サプリメントとしてプロテインを飲ませた方が良いらしいです。

 

嫁さんも医学的なものをあまり理解していないのですが、人間の生命を維持するには幾つかの栄養が絶対に必要であり、血液検査の結果を分析することで現在の妹の身体に必要なものを息子達は判断できるのです。

たとえばプロテインであれば、私の嫁さんに我々が行く薬のアオキで買えるので、それを買って妹の病室に行って、息子達が指定した分を飲ませればいいのです。

もし私の地元のドラッグストアで手に入らない物だったら、セントルイスから航空便で直ぐに送ると妹の家族に説明したそうです。

 

病院で出される食事は入院患者さん全てが食べても毒にならないものですが、それは妹の生命を維持するための適切な体力エネルギーを作ってくれる十分なものではないのです。

現在の妹が口に出来る量は少ないので、息子達は病院で出してくれる食事は無視してもいいから、現在の妹の身体に一番必要なものを摂取した方がいいと説明したようです。

 

以前の日記に書いた様に、アメリカのファーストクラスの病院は高額であっても患者の食事のことも考えてくれるそうです。

妹を担当してくれるドクターは担当している患者の数は30人か40人かは判りませんが、妹の治療を考える時間は1/30程度になります。

妹の生命力を維持するための特別の食事の献立を指示してくれるわけではないのです。

息子達は現在の妹の身体に不足しているものをほんのちょっとサプリメントなどで摂取することで、生命力を維持する力が増すことがあると言うのです。

 

でも、妹の家族は息子達のアドバイスを受け入れることはしませんでした。

血液検査の結果を先生から貰って、他の病院の先生に見せるようなことをしたら、その先生に妻のを救ってくださいとお願いしているのに、その先生を疑っているように思われると言うのです。

それに先生は妻が何を食べたかを把握した上で治療をしているので、勝手に薬局で買ってきたサプリメントを飲ませれば先生の治療に支障が出るかもしれないということでした。

 

息子達はそれじゃ、薬局で買ってきたサプリメントを飲ませる前に担当してくれているドクターに見せて、許可をもらえばいいと説明したのですが、先生が指示した食事が不十分だと思われてしまうので、先生に任せたのなら、全てを先生に任せて、我々は余計なことをしないのが一番であると息子は言われたそうです。

 

だから妹の家族はそこまで考えてくれた息子には感謝するが、そのお気持ちだけを受け取っておくという結論になったのです。

 

彼らの気持ちは全く理解できないことはありませんが、そんなことをしていたら助かる命も助からないかもしれないと私は思うのです。

 

このブログに何度も書いており、先日の日記にも書きましたが、私の嫁さんの場合はシカゴの病院のドクターをあのまま信頼して治療をしてもらっていたら今頃嫁さんは死んでいた可能性が高かったですよ。

最初は私も息子達に「余計なことをするな❕」と言いましたが、息子達がシカゴの病院のドクターに電話して直接話してくれたことで、息子達が言った通り、検査の見落としが発見され、嫁さんの命は助かったようなものでした。

 

今回も同じことを言います。

治療してもらっている先生を100%信頼し、家族は祈ってあげるだけというのは私にはどうしても自分が苦労したくないだけ、言い難い言葉を言えるだけの小さな勇気がないだけとちゃうんか❓と思ってしまうのです。
 
私は嫁さんの時は嫁さんの主治医を怒らせてしまいましたが、言わねばならぬことはハッキリ言ったので、嫁さんの命が助かったと言っても過言ではないと思っています。
嫁さんの主治医にとって嫁さんは担当している患者さん達の何十分の一ですが、私や息子にとっては妻や母親は100%一人なのですから。
 
人を100%信じてしまうのは楽なのです。
祈ってあげるという行為は他人にしてあげられる一番楽な作業だと私は思います。
 
何れにせよ、やはり妹の運命を決めるのは妹の夫であり、娘と息子です。
ICUで処置を受けていた妹に私は家族ではないので面会を断られたように私も嫁さんも私の息子も嫁のGちゃんも部外者なのです。
それがどんな判断であっても、我々部外者が彼らが決めたことに口を出すのは間違いですね。
今回息子は私に隠れてですが、ここまでしてくれたことに私は高い評価をしています。
息子は私以外の者達には優しいのです。