シカゴから日本に帰国してから二週間以上が過ぎましたが、帰国直後に嫁さんの乳癌手術がありましたので、気分的に日本に帰国したぞ!っという実感があったのは嫁さんの退院後のクリスマス以降です。

 

嫁さんの手術が成功に終わったこともあり、私は今までのストレスを発散させるために毎日贅沢三昧をしています。

っと言っても普通のサラリーマンだった私が贅沢できる範囲というのは限られてくるものなので、このブログの読者の中には”これが贅沢になるの?”って思われるかもしれませんが...

 

我々がシカゴから帰国した直後には友人や親戚の者達が玄関に差し入れを置いてくれました。

厚生労働省の規則に従い、帰国後二週間は病院に行く時を除き、誰とも会えないことを伝えておいたのですが、わざわざ家まで来てくれて、玄関のドアの前に差し入れを置いてくれたのです。

 

私が日本に帰ったら本物の寿司を食べたい!と言っていたせいで、差し入れの大半は寿司でした。

もう感動のしっぱなしだったのですが、3日以上寿司が続くと飽きてくるものですね。

シカゴで暮らしていた二週間前には考えられない贅沢な悩みです。

 

そしたら妹夫妻からの退院祝いとして「近江牛のすき焼セット」を持ってきてくれたのです。

滋賀名産の近江牛は日本の3大ブランド和牛として知られています。
日本で働いていた時は滋賀県人の私でも近江牛なんて滅茶苦茶高いので滅多に口にはできなかったものでした。
 
この近江牛のすき焼を食べていると段々腹が立ってきたのです。
22年間我々がシカゴで”糞”料理を食べていた頃に私の妹や友人達はこんな美味しいものを食べていたかと考えると...
 

 

以前の私のブログを読んで頂いている人は御存じだと思いますが、ほそみち家の家訓として「人生、美味しい物を食べた者勝ち!」というのがあります。

美味しい物を食べるには沢山のお金が必要であり、その為に極寒のシカゴにまで22年間も出稼ぎに行ってたのですが、日本企業よりも遥かに高い給料は貰えたものの、以前に日記に書いたホットドッグ以外に美味しいものは食べられませんでした。

 

「近江牛のすき焼セット」を嫁さんと二人で食べた時は感激し過ぎて涙が出そうになりました。

 

何だか本末転倒の人生を歩んでいたような気持ちになりました。

 

妹夫妻に「近江牛のスキ焼に感激した!」とお礼を言ったら、「お兄ちゃん、そんな大袈裟な!こんなもん、いつでも食べられるやん」と妹は言うのですが、その時に我々が22年間シカゴで暮らしたことが無駄ではなかったことに気付きました。

シカゴで暮らしたことと言うより、グローバル企業で働いていたことで海外の支店に出張で行ったことにより、世界の人々が如何に不味い物を食べているかを知ったことです。

 

ハッキリ言って、妹や滋賀の私の古い友人達は私のSNSに投稿した写真に騙されていたのです。

 

イギリスやトイツ、フランスなどのヨーロッパの支店に出張すると現地の社員達はシカゴ本社の研究開発部からやってきたことを喜んでくれ、その土地で有名なレストランに連れて行ってくれます。

18世紀からやっているという老舗店などに連れて行ってくれるのですが、そういう店で写真を撮るとまるで私が世界の美味しい物を味わっているように見えてしまうのです。

 

確かに店の雰囲気や、皿やカップは素晴らしいものですが、肝心の料理は”糞”なんです。

 

このブログで何度も書いていますが、ドイツのスモークサーモン(ノルウェー産を使用)、フランスのパン、オランダのチーズ、この3つだけは日本でも到底敵わないと思いますが、99.9%の世界の美味しいものは日本のコンビニやスーパーマーケットにあると私は思っています。

 

一般的にシカゴは”肉”が全米トップクラスだと言われてますが、妹が差し入れしてくれた近江牛には足元にも及びません。

生粋のシカゴ育ちの同僚が出張で東京支店に行った時に神戸牛のステーキを食べてに連れて行った貰ったのですが、あまりの美味しさに同じ牛肉だと思えない美味しさだったと言ってました。

次回日本に出張する時は絶対に奥さんを連れて行くとも言ってました。

 

「俺のSNSの写真に騙されたらアカン!世界で最も美味しいものの多くは常にお前の周りにあるんや!」と私は声を大にして言いたいです。

 

それが判っただけでも極寒のシカゴの会社で22年間も頑張って働いた甲斐があったと思うのです。

 
嫁さんは刺身が大好きなので、ここ最近は近所のスーパーマーケットで刺身の盛り合わせを買ってきて食べています。
乳癌の手術を受けたばかりの嫁さんは脂質を控えるように言われており、刺身が安心して食べられるものなのであるのも理由の大きな一つです。
 
私は近江牛のすき焼やステーキを食べたいのですが、それを封印しました。
友人達と外で会った時に嫁さんに内緒で食べてこようと思ってます。
昼飯に3000円~5000円も使うのは我が家にとっては贅沢なものですが、還暦まで頑張って私と共に海外で苦労してきた嫁さんへのご褒美としてしばらくは少しぐらい贅沢しても罰は当たらないと思っています。
 

 

下の写真は2000円ぐらいのフグの刺身なのですが、嫁さんも私もこれが美味しくて病みつきになっているのです。
嫁さんも私も歳をとったからでしょうね、”フグ刺し”のようなあっさりした刺身が美味しいのです。
日本で暮らしていた頃は滅多にフグなんて食べないものでしたが...
 

滋賀の田舎町のスーパーマーケットに売っている2000円もしないフグ刺しでもこれほど美味しいのですから、嫁さんが手術の抜糸をしてもらって、日本中何処でも自由に遊びに行ける身体になったならどんな美味しいものが食べられるのかと考えるとワクワクしてきます。

しかし現在はコロナで遊びに行けない状況なので、せめて美味しい刺身を売ってる店を色々と調べて買いに行く積りです。

 

 

嫁さんが「日本の刺身は美味しいわ!」と味わいなから食べているのを見ていると、「明日も昼前に買いに行ったるわ!」とついつい言ってしまうのです。

嫁さんは”ええ顔”をして刺身を食べるのです。

私にとってはそれを見るだけでも価値があります。

 

 

クリスマス以降は二週間の自宅隔離の期限が過ぎたので、我々の友達や親戚連中が嫁さんの見舞いにやってきています。

嫁さんは私の着る服がなくなったので、そろそろ買いに行かないと同じ服を着ていたらカッコ悪いと言うのです。

シカゴで着ていた服は船便なので一月末に届くのです。

現在の服はスーツケースに詰め込めたものだけです。

 

嫁さんは私が一応アメリカの大手企業で活躍していたので、みすぼらしい恰好をしていたらカッコ悪いと言うのです。

だからそこそこの服を買いに行く予定だったのですが、私はユニクロに行きました。

お洒落のセンスのない私はシカゴの部下達に見下されないように$200や$300もするブランド物のシャツやセーターを着ていましたが、ユニクロだったら同品質の服が$50でお釣りがくるぐらいです。

ブランド物を着ていたら馬鹿にされないし、無難だと思っていた節がありました。

 

しかし着る服をユニクロにしただけで何回フグ刺しが食べられるかを考えたらブランド物の服を買うのは馬鹿らしく思ってきたのです。

親戚や友人達が”あの会社で研究開発のエンジニアのトップまで登り詰めた人が上から下までユニクロを着ているの?”って思われても、フグ刺しを一回でも多く食べられることの方が価値があるように思えるのです。

 
上等な服を着て、周りの人達には幸せそうに見えたとしても、自分の胃袋だけは絶対に誤魔化せられないのです。
そしてよくよく考えたら、この世の中で一番にいいカッコしたいのは嫁さんの前だけだったのです。
変に思われるかもしれませんが、嫁さんの前だけはカッコつけたいのです。
私は親戚や知人やどんな友人達から幾ら私が下に見られても私は痛くも痒くもないのです。
 
しかし嫁さん、多分息子や嫁のGちゃんの前でも私は一生”カッコいいオヤジ”を演じるだろうと思います。
それはブランド物の服を着たり、少々お金を沢山貰えるようになった程度のものでは”カッコいいオヤジ”を演じられるような簡単なものでないのが厄介なんですよね。
結婚して34年になりますが、嫁さんから”カッコええやん!”と言われたのは今までに2回しかないですからね...