我が家はSchaumburg市という日本人が多く住んでいる町に住んでいます。
長年住んでいた購入した一軒家を売り、Elk Grove Village市の借家に住んでいたのですが、大家さんがリタイアするので持ち家を売ると言われ、1年前から現在のTownhouseに住んでいます。
 
Townhouseを管理してる人が我が家の玄関の前の植木の作業をするために電気を使わせてくれと言ってきたのがキッカケで、嫁さんは庭師の人と花や植木の手入れの方法について色々と教えてもらっていたのですが、突然に話し声が聞かなくなって一時間ぐらいが経ちました。
 
おいおい、あの庭師の爺さんに誘拐されたんじゃないだろうなぁ...と少し不安になりましたが、私と同年の嫁さんも還暦を迎える立派なオバサンだし、貧乏家族なので誘拐されるわけがなかったのです。
 
実はその庭師の人が親しくしている日本人が歩いて直ぐのところにいるので紹介したいと言われ、その日本人の家に遊びに行っていたのです。
それからその日本人家族と付き合いが始まりました。
それまで近所付き合いしていたのは全てアメリカ人家族だったので、近くに日本語で話せる家族が裏庭から歩いて直ぐのところにおられるの初めての経験でした。
 
「アメリカに20年以上も...米国企業にお勤めですか...それじゃ英語は何の問題もないでしょう!」なんて言ってくれたのですが、嫁さんはそう言われた時に必ず話すものがあるのです。
私は「それだけは話さんといてくれ!」と幾ら頼んでもその話がウケるので「いやいや、この話は絶対に一生話すで!」と言います。
 
そして嫁さんがこの話を近所に住む日本人家族に話したら、やはり例外なく爆笑されてしまいました。
 
この話だけは絶対に誰にも話さないで欲しかったのに...
 
その日本人家族の方達は日本企業の駐在員家族なので、20年以上も米国企業の研究開発部でエンジニアとして働いてきたという話を聞いて褒めてくれていたのですが、が嫁さんの話で何もかもぶち壊されてしまいました。
私を見る目が少し変わったと思います。
 
2011年3月、シカゴ唯一の日本語チャンネルであるTV-JAPANでは東日本大震災関連のニュースばかりを放送していました。
私は朝風呂に入るのが日課であり、ベッドから起きて風呂場へ直行すると、いつも嫁さんがTVのボリュームを大きくしてくれて、TV-JAPANで朝のニュースを風呂に浸かりながら聞きます。
テレビは別の部屋にあるので画面は見られませんが、ニュースは聞いているだけでも十分理解できます。

日本人の誰かが世界に向けて震災への援助のお礼を早口の英語で話していました。
やぱり日本人が話す英語は分かり易いですね。
いくら早口で話そうとも、Nativeに近い発音で話そうとも、その話し声には日本語の発音の癖が含まれいるのは隠せません。
 
私の場合は同僚のアメリカ人と話す時は未だに知らない単語が一つや二つ無い方が珍しいのですが、ニュースでインタビューされている日本人女性の英語は全ての単語が完全に理解できました。

私は仕事柄、人々の話す英語でどの国の人(ドイツ人、イギリス人、インド人、シンガポール人など)なのかを当てることができます。
またアメリカ人でも南部から来た人なのか、東部から来た人なのかも発音で大体検討がつきます。

私は風呂に浸かりながら、嫁さんに「10年以上もシカゴで生活しているだから、TVで話している女性の英語ぐらいはちゃんと理解できただろうなぁ?」と訊きました。
嫁さんは Harper Collegeという市民大学でのESLのクラスやSchaumburgの図書館で無料で受けられるESLクラスを10年近く受けていても英語が上達したようには思えないのです。
 
そのくせ嫁さんはランチなどを一緒に行く親しい友人はVALというアメリカ人の友人なのですが、どんな会話をしているのだろうと不思議になります。
VALは元某銀行の融資担当の社員でしたが、動物好きが高じて銀行を退職し、動物病院の看護士になりました。
我々がVALの家の前に引っ越してきた時は銀行で職場結婚した夫と仲良く暮らしていたのですが、犬二匹に猫4匹を飼い始め、とうとう夫まで追い出してしまいました。
 
我々がワシントンDCに住む息子夫妻のところに遊びに行ったりしている間はVALに家の鍵を渡し、愛猫華ちゃんの世話をしてもらっています。
VALの娘が同世代の息子の大学の先輩だったので、嫁さんとはそれをキッカケに親しくなったのですが、VALは相当なやんちゃなオバサンなので嫁さんと気が合ったようです。
 
19歳になる愛猫の華ちゃんは何か問題があると動物看護士のVALに診てもらえるので凄く助かっています。
華ちゃんは19年も一緒に住んでいるので、18歳で大学進学のためにで家を出たままの息子以上に一緒に住んでいることになります。
因みに嫁さんにとって一番大事な家族は息子、次は華ちゃん、そして私の順であると皆に言っているだけではなく、本当にそうであることは肌で感じています。
 
 
嫁さんとVALは近所の人達に映画「テルマ&ルイーズ」だと言われているんです。
いつもVALが運転する赤いオープンのスポーツカーで二人が何処かに遊びにいくのを見らえているからです。
近所の人達からテルマ&ルイーズなんて言われているだけあって、二人とも無茶をする人達なので夫としては少し心配です。
 

 

おっと、話が随分横道にずれましたので元に戻します。
 
嫁さんは「そんなESLで習うような教科書英語では実際には通用せえへんのやで!」と生意気な言葉を残し、VALが運転する赤いスポーツカーで何処かに遊びに行ってしまいます。
私の方は部下に指示するドキュメントにスペルの間違いなどがあったら、いちいち書き直しを命じられているというのに...
 
「せめて俺の足元ぐらいまでの英語を話してくれよなぁ!」と風呂場からニュースを見ている嫁さんに言いました。
そして続けて「TVで英語を話している日本人女性は相当に英会話学校に通ってアメリカ人に発音を矯正してもらったみたいやけど、まだ少しは日本の発音が混じっているので残念やなぁ...東部、多分NYに数年住んだこともある発音や。」とも言いました。
 
そうしたらTVの前にいた嫁さんは突然大きな声で笑い出したのです。

何だ?何だ? ここは笑うところではないぞ!

何か私は変なことを言ったのか?
 
「今テレビで話している人の英語の能力から比べたらアンタの英語は1/10000ぐらいやで!」と全く失礼な事を嫁さんが言うのです。

「アンタの英語が如何に当てにならないいうことがよーく判ったわ!」

人を馬鹿にするような笑い声で更に追い討ちをかける嫁さん。
 
嫁さんの笑いが止まらない! 返事も出来ないほど笑っているではないか!
 
一体何かあったのだ?
 
私が英語で毎日仕事をしてお金を稼いできているから嫁さんは生活できているのであり、嫁さんが私の英語を馬鹿にする権利はないはずだ!っと心の中だけで叫びました。
それを口に出していうほど私は勇気のある夫ではありません。

そして笑いがひと段落ついたときに言った嫁さんの一言のセリフでその日一日落ち込みました。
 
ほんと、その後の3日間ぐらいは落ち込みましたよ。
 
「今テレビで話している人、シンディ・ローパーやで!今東北に来てはるんやで。」

「.....くぅっそー!シンディ・ローパーめ!昔から大ファンやったのに!」