9/25、会派を代表して一般質問をしました。

「多様性を尊重した共生社会の形成」と題して、特別支援教育についての質問でした。

豊島区議会では新型コロナの感染予防対策として、区の出席者を絞る、採決以外の場では本会議場の議員を定足数を欠かない範囲で調整、議長と登壇者の前にアクリル板設置、などの対応をしています。下の写真のスクリーンに表示されているのは、質問に合わせた手話通訳です。

 

今回は特別支援教育に絞っての質問としました。

第3回定例会の補正予算で「学校におけるインクルージョンに関する実践的研究事業」が計上されています。

これは東京都教育委員会(都教委)からの研究事業で、本区の要小学校が研究校として選ばれています。都教委が当該研究事業を行うきっかけとなったのは、都民ファーストの会所属の龍円あいり都議の提言によるものです。龍円都議は、障害のある子が通常の学級で支援を受けながら共に学ぶインクルーシブ教育は、共生社会の実現に必要不可欠だという信念のもとで働きかけたとのことです。

この研究事業を行うにあたって研究事業の目的や内容を確認するとともに、改めて本区の特別支援教育全般について質問を組み立てたものです。

 

Q:本区の現在の取組みは?

A:就学相談の件数は最近5年間で1.5倍(前年度386件)、困り感を感じる児童生徒は年々増加傾向。

知的固定学級を小中学校8校、自閉症・情緒障害学級と言語難聴学級を小学校にそれぞれ1校設置。全小中学校30校に特別支援教室を設置。特別支援教室の巡回指導では、個別の教育支援計画や個別指導計画を作成し、きめ細かな指導。

 

Q:H29.3に改訂されて特別支援教育に関する記述が充実した幼稚園教育要領、小学校・中学校学習指導要領の反映は?

A:総則に「障害のある幼児児童生徒との交流及び共同学習の機会を設け、共に尊重し合いながら共同して生活していく態度を育むこと」が明記。知的固定学級と通常学級、通常学級と都立特別支援学校との交流及び共同学習に取り組んでいるが、今後は更に回数や内容充実が課題と受け止め。

全ての学校で「特別支援教育に関する委員会」を設置し具体的な手立ての検討、区教委でも取組の焦点化を図り各校を全面的に支援。

 

Q:教育現場での個別指導計画の活用は?

A:教育支援計画及び個別指導計画を、障害の特性に応じた指導や支援が必要な児童生徒一人一人に対して作成。在籍の学級担任と巡回指導教員が一緒に対象の児童生徒が抱える課題を解決する手立てを考え、その成果を評価。2つの計画の他、各校に配置の特別支援専門員の活動記録、保護者との相談内容等も合わせ指導を改善しながら対応。

 

Q:個別指導計画の作成時期は?

A:就学相談を経て特別支援学級の在籍や特別支援教室の利用等が決定された後、指導開始するまでに必ず作成、年度当初には完成されている。

平成27年第3回定例会での一般質問で、個別の指導計画は新年度前に作成されているべきですが、実際はそうなっていない実態を指摘し、作成時期について確認をしたことがあります。当時の回答では「担任が決まり次第、速やかに作成することを目標にしていく」と明確な答弁はありませんでした。今回改めて質問をしたところ、既に改善が図られている内容の答弁でした。担当者ごとに見解のブレがあってよい内容ではありませんので、今後も確認していくつもりです。

 

Q:「学校におけるインクルージョンに関する実践的研究事業」では、交流及び共同学習を可能な限り頻度を増やして頂きたい。また、特別支援学級を含む全学年を縦割りにした縦割り班を活用し、掃除などの特別活動を毎日行うことで、障害のある子もない子も共に活動する機会を設けるなどして、学校内のインクルーシブな環境づくりを行うことも検討してはいかがか。

研究事業の目的、今年度の具体的な取組み内容は?

A:目的は「障害のある児童・生徒と障害のない児童・生徒との交流及び共同学習」「早期からの就学支援」を充実し、障害の有無に関わらず、個々の教育的ニーズに的確に応え、多様な学びの場を備えた教育の促進。

取組み内容は、固定・通常学級間の交流及び共同学習充実個別の教育支援計画及び個別指導計画の改善

学校内のインクルーシブな環境づくりに関しては、既に全校で学年縦割り班の活動、運動会や音楽会などの学校行事での交流は取り組まれているが、教科等の狙いを達成する目的の共同学習までには至っていないことから、今夏の研究事業を要小学校をモデル校として実践することとした。

 

Q:今年度の取組みを経て、次年度以降の展開は?

A:要小学校では、縦割り班活動や給食交流に加え、教科の学習における共同学習に取り組む

来年度は年度当初から、活動の狙いを明確にした交流及び共同学習の実践、頻度も増やすよう準備。教員や関係課などと情報共有しやすい仕組みを構築する計画。最終的には、研究成果を踏まえ本区の特別支援教育の体制改善を目指す。

 

Q:就学相談の流れ、就学相談が行われない場合の対応は?

A:早い段階から保育園・幼稚園などと連携し、保護者の不安などに寄り添いながら丁寧に事前相談。就学相談委員会からの提案を保護者に伝えるが、これは提案であり就学先は保護者が決める。入学後も希望に応じて事後相談を行っている。就学相談が行われない場合も、子供の利益を最優先に保護者と相談しながら対応することには変わりない。

 

Q:特別支援教育におけるICT環境の活用方法及び課題は?

A:聴覚よりも視覚からの情報の方が優位な場合が多く、これまでもタブレットや大型テレビ、実物投影機などを積極的に活用。

一人一台のタブレットの活用で、多くのアプリや動画で楽しく学習することや、自分の考えを伝える機会も増える。家庭に持ち帰ることで学習の機会を持つことも可能。発達段階や習熟度に応じ、自ら課題を選択し、意欲的な取組みが増えることを期待

課題は急激な変化に対応できず、タブレット活用に差が生じること。「特別支援・不登校対策チーム」の設置により、課題の洗い出しを行う。

 

Q:これまでの特別支援教育は、障害のある子もない子も同じ場で共に学ぶ、という観点が弱かった

これまでの取組みの他、特別支援教育に関する記述が増えた学習指導要領の改訂、ICT環境の充実などツールの強化、要小学校の「学校におけるインクルージョンに関する実践的研究事業」の研究成果が加わる。

これらを踏まえ、本区での特別支援教育の今後の展望、併せて改めて特別支援教育の目的は?

A:研究事業の成果を踏まえ、固定学級等で指導を受ける児童生徒が、行事等の特別な場面での交流から、日常的に児童生徒同士で交流できる環境を確立したい。教科ごと、単元ごとに通常学級の授業と行き来しながら学べる「多様な学びの場」の仕組みも構築したい。

特別支援教育の目的は、特性に応じて適切な指導や必要な支援を行いつつも、障害のある子供のみの教育にとどまらず、児童生徒も周囲の大人も、障害の有無やその他の個々の違いを認め合いながら、「誰一人取り残さない共生社会」の実現こそが目指す姿であると受け止めている。

 

一般質問でのやり取りは概ね上記の通りです。

要小学校の研究事業で、交流及び共同学習をこれまでよりも深化する旨の答弁があります。

特に教科等の狙いを達成する目的での教科ごと単元ごとの共同学習の仕組みの構築は、これまでの特別支援教育から一歩踏み込んだ成果を上げることが期待される事業です。

交流頻度の増加、縦割り班などの特別活動の強化などにより、インクルーシブな環境づくりが同時に進むことも期待しています。

最後に確認できた、特別支援教育の目的が達成されるよう、今後も注視していきます。