11/7〜8、1泊2日で防災震災対策調査特別委員会の視察を行いました。

視察目的は、平成30年7月の豪雨災害の教訓についてです。

 

【11/7 広島県呉市視察】

初日は広島県呉市へ伺い、平成30年7月の豪雨災害での教訓について視察。

記録的豪雨によって土砂崩れや河川の氾濫、浸水などが発生。

死者28名(災害関連死3名含む)、家屋の全壊・大規模半壊・半壊が計1211件。

鉄道、道路網が寸断され、断水が1週間から1ヶ月続いた地区もあったとのこと。

土石流による被害が大きかったようです。

現在は呉市復興計画のもと、復旧・復興にあたっています。

 

まずは呉市役所で被害状況や対応について、その後は大きく3点の教訓についてヒアリング。

(1)大雨特別警報等警報、避難指示等発令のタイミングに関する教訓

・県の土砂災害危険度情報の予想値が、気象庁の警戒レベルを超過することが分かり、避難勧告発令。

避難指示等発令のタイミングは県のガイドラインに基づいて発令している。結果的に発災の30〜40分前くらい。

・短時間に目まぐるしく変化する土壌雨量や河川状況に対する情報収集分析をして 情報発信をしなければならなかった。

→余り早く発令すると、オオカミ少年のようになりかねない

・防災行政無線、防災情報メール、緊急メール、Lアラートなど、ツールが連動しておらずそれぞれで発信が必要だった。

・避難情報発信により問い合わせや相談等が殺到し対応に追われた。

・人員不足により対応が十分に出来る状況ではなかった。事後の対応として各対策班でのフローチャートを作成中。

 

(2)避難所運営に関する教訓

・身近に存在する一時避難場所の必要性

・避難所のエレベーターや空調など施設整備の必要性

・ペットの同行避難が可能な避難場所の必要性

しかしこの対応が難しい。専用の避難所を作ったとして、誰が面倒をみるのか。

・避難者ニーズを適格に把握できる手法の取り入れ

水→お茶やジュース→炭酸飲料など避難者のニーズが移り変わる。

・長期避難生活における住民主体とした避難者の運営委員会を立ち上げ、役割分担をして地域の方々に自営して頂く必要

・被災者への対応は、行政からみるとエブリワン(全体)の対応を考えてしまう。

しかし被災者それぞれはオンリーワン(個々)だと思っているので、視点が異なる。

これを踏まえての対応を行う必要があった。

 

(3)被災者の健康対策に関する教訓

◆呉市保健所の対応

保健総務課…医療機関への支援(断水・救援物資)、感染症対策・消毒等の防疫

生活衛生課…井戸水の水質検査、入浴施設の提供

健康推進課…被災者の健康支援・心のケア(避難所・仮設住宅・在宅被災者)、 避難所等の医療救護班の支援、被災した施設の被害対応)

 

◆保健師の活動

1.避難所の巡回相談 

・感染症予防、食中毒予防では、泥まみれの床や、トイレ清掃などがポイントだった。

・避難所の医療・保健活動

 

2.発災後の家庭訪問

・被害の大きかった地区の全戸訪問

・遺族世帯や負傷者への訪問はケースごとに丁寧に対応

・被災の規模と心の傷は比例しない

 

3.通常業務の再開こそが市民全体のケア

・乳幼児検診、育児相談、育児教室、特定健診など通常業務再開を急いだ。

これが市民へのケアになる。一部の地区を除き7月下旬に再開。

 

・新型インフルエンザのBCPを活用して業務対応。

・保健医療対策は単独自治体だけでは難しい。対策の期間が長期に及ぶため

・保健師の派遣パターンは3つ(法に基づくもの、自治体間の協定に基づくもの、

自主的に応援してくださるもの)

→沢山の支援チームが来てくれたが、呉市保健所ではコーディネートが出来ない。 災害医療センターや日赤のコーディネーターなどが調整してくれた。

DHEAT(ディヒート)による支援が大きかった。全国から5チーム、寄り添いながらやって下さるチームとは仕事がやり易かった。

・消毒はペストコントロール協会へ委託

・生活再建が出来るか出来ないかで、ハサミ状格差が生まれる。自主再建困難の場合、取り残され感が生まれ、心が不健康になる

・広島こころのケアチームは、医師(精神科)、保健師、看護師、臨床心理士で構成

・地域支え合いセンターは、主任生活支援員、生活支援相談員、生活支援補助員

・訪問とこころのケアが大切。継続した対応

住まいの再建実現性、日常生活の自立性により、訪問頻度を検討している。

毎月1回〜3ヶ月に1回、年に1回など。

 

その他

・救急の連絡が1時間で200件以上。救助に行ききれず公助の限界。

・入浴支援が大変だった。自衛隊の支援が早くて大きかったが、撤退を決めた後の撤収も早いので、自前での準備も必要。

・大きな災害になると、支所などでは足りず小学校などの体育館など開放。プライバシーの確保など課題。

・孤立集落では透析患者への対応に苦慮。ヘリを飛ばして一人ずつピックアップ(10数名いらっしゃった)。

・流入した土砂の殆どは廃棄物混入のもので、宅地内にも土砂が堆積。

土砂はしばらく経つと固くなって掘るのが困難になる。

自力やボランティアでは人力で手掘りするしかなく、民地でも行政が申請により公費で重機を入れて対応。

・災害ボランティアによる支援には助けられた。全国各地から述べ38949人のボランティア。こうしたボランティアの方々がいないと復旧はなかなか進まない

・道路など仮復旧をしないと物流が動かない、被災者への対応と並行しておこなった。

・ハザードマップの想定は殆どその通りだった。

 

◆ 議会の対応

議会の対応要領(7条)を作ってあった。

これに基づき連絡会議(32名の議員中7名が委員となるもの)を立ち上げた。

連絡会議は議会事務局の職員が担当した。

各議員からの問い合わせは連絡会議へ集約し、まとめたものを行政の災害対策本部へ連絡。

 

その後、現地の視察を行いました。

 

左側の空き地は災害前には住宅があったところ。

土石流により目の前の川は全て埋まったとのこと。


 

左側のコンクリートが剥き出しのところは歩道だったところ。

 

避難所となった公民館。呉市では公民館が小規模な避難所になるとのこと。

市役所支所や学校などは規模の大きな避難所となり職員も配置。

 

国交省の事業で砂防堰堤を造っています

 

大雨特別警報等警報・避難指示等発令のタイミングに関する教訓、避難所運営に関する教訓、被災者の健康対策に関する教訓、の他、議会の対応についても伺うことが 出来ました。

特に情報発信のタイミングや方法、避難所運営の教訓については、本区での台風19号の対応とも照らし合わせながら今後の改善につなげることが出来る内容を伺えたと思っています。

 

議会の情報共有のあり方についても、大変参考になりました。

これは今期の議会改革検討会の検討項目として私たちの会派から検討項目候補に挙げさせて頂いている内容です。

視察後に他の会派の方々と意見交換をしましたが、議会側への情報共有の必要性がある一方で伝達方法の課題がある事は共通認識として持てそうです。

今後の議論を通じて改善していきたいです。

 

【11/8 岡山県倉敷市視察】

2日目は岡山県倉敷市へ移動し、やはり平成30年7月の豪雨災害で甚大な被害に遭った真備地区の現地視察を行い、復興に向けた施策などにつき伺いました。

 

平成30年7月の豪雨では甚大な被害が出た倉敷市ですが、特に真備地区の被害が大きく、小田川及びその支流の8カ所で堤防が決壊するなどして3日間に渡り広範囲で水没、5700棟以上の住家が全壊・大規模半壊・半壊など。倉敷市全体で59名(災害関連死7名含む)の犠牲者が出ました。

現在は真備地区復興計画の策定、真備緊急治水対策を行うなど、復旧・復興に努めています。

また、国交省による大掛かりな川の付け替え工事や堰堤の工事などが行われています。

災害の対策工事に関しては、国や広域自治体との連携も大事な視点となります。

 

被災地の視察を行いながら、随時担当の方に質問させて頂きました。

 


豪雨災害時の航空写真。

地区全体がほとんど水没しています。


小田川合流点付け替え事業の現場状況


付け替え工事後に小田川を通す貯水池。プラントは、工事に際し下流に流す水を浄化するためのもの。

 

 

小田川の付け替え工事現場。近くの山も少し削り、川を流す方向を変えます。


建設型仮設住宅(トレーラーハウス)の状況

北海道、長野県の業者に委託して確保

 

この道路は堰堤の上にあります。豪雨災害時はこの箇所が決壊しました。復旧工事中ですが、堰堤の高さは変えずに、幅を広くし法面の勾配を緩くして機能強化するとのこと。


この写真のうち、橋桁以外は全て水没した地域だとのこと。被害地域はかなりの広さです。


水位の目安を示す線。

豪雨災害後、水位の高さを固定カメラから遠隔で見られるようにしたとの事。ネット上で確認可能です。


近年は毎年のように日本列島を自然災害が襲っています。

本区でも豪雨災害や首都圏直下型地震への備えを極力行う必要があります。

真備地区では川の決壊に備えた対応を取っている最中ですが、本区でも東京都との連携しながら治水対策が十分であるか、不断の検証が必要であると考えます。

 

視察については以上です。