10/16に突如IOCが東京2020大会のマラソン及び競歩会場を札幌へ変更すると発表しました。

開催地である東京都との調整を行うこともなく、IOCが一方的に「決定事項」としていることに違和感を感じます。

本日夕方からの「IOC調整委員会会議」にて競技会場の件が取り上げられるとのこと。

東京での開催へと再考をして頂きたいです。

 

小池百合子東京都知事や都民ファーストの会都議団などの情報発信、マスコミ各社の報道などで報じられている通りです。

 

都民ファーストの会東京都議団の白戸太郎都議の発信や尾島絋平都議の記事、報道の資料などを参考にこれまでの経緯や課題をまとめました。

白戸太郎都議会議員 10/25「都民ファーストの会東京都議団検証 PT 会見」書き起こし 「本当の意味でのアスリートファーストとは

白戸太郎都議会議員 10/26アゴラ「札幌開催は本当に「アスリートファースト」なのか?

尾島絋平都議会議員 PRESIDENT Online10/29「このままマラソンを「札幌開催」としていいのか

 

◆時系列経緯など

9/15 マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)兼 東京2020 オリンピック日本代表選考競技会(コースは東京2020大会と同じ)

9/27 陸上世界選手権(カタール ドーハ開催)女子マラソンで出場選手の4割が棄権、9/28男子競歩50km、9/29女子競歩20km

10/4 男子競歩20km、10/5 陸上世界選手権(カタール ドーハ開催)男子マラソン 9月末より気象条件が改善

10/8 東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(以下、組織委)が、オリンピックチケットの二次抽選販売を無期限延期

10/15 組織委の武藤敏郎事務総長から都へ連絡があり、会場変更の件を小池百合子東京都知事が初めて聞かされる

10/16 IOC調整委員会のジョン・コーツ委員長が東京2020大会のマラソン・競歩会場を札幌へ変更したと発表

10/25 IOC調整委員会のジョン・コーツ委員長と小池百合子東京都知事が会談

10/30 第9回IOC調整委員会会議

11/1 IOC/東京2020合同記者会見(ジョン・コーツIOC調整委員長、クリストフ・デュビIOCオリンピック競技大会エグゼクティブディレクター、森喜朗組織委会長、武藤敏郎組織委事務総長)

 

東京2020大会のテストイベントでもあったMGCでの運営をIOCのトーマス・バッハ会長は高く評価していたとのこと。

東京の暑さを前提にこれまで準備をしてきたにも関わらず、これまでの積み重ねを覆してしまうのは余りに乱暴です。

 

報道によると以下の面会があり、この時に札幌移転案が伝えられたとのこと⇒10/19スポーツ報知

10/9 組織委 森喜朗会長が安倍晋三首相と、萩生田光一文部科学大臣と面会⇒10/9首相動静

10/10 組織委 森喜朗会長が橋本聖子五輪大臣、秋元克広札幌市長と面会

 

◆都民ファーストの会東京都議団の動きなど

10/25 都民ファーストの会東京都議団 検証PT会見

 

10/26-27 都民ファーストの会 緊急街頭アンケート実施⇒アンケート結果

 

10/29 検証PT山田都議、白戸都議 日本外国特派員協会会見

※この会見の様子は、世界中のニュースで配信されました⇒まとめはコチラ

 

10/30 小池百合子東京都知事へ都民ファーストの会東京都議団が要望書提出

 

◆都議会の動き

10/21 「オリンピック・パラリンピック及びラグビーワールドカップ推進対策特別委員会(以下、オリパラ特別委員会)」理事会において、10/28に開催予定の委員会における質疑を模索も合意ならず

10/28 オリパラ特別委員会開催

10/28 「東京2020大会のマラソン及び競歩会場の変更について」決議

・IOC及び組織委などの関係者に対する

・東京と札幌をどのように比較したのかなど、IOCの考えやその経緯について、都民に分かるよう明確にすること

・開催都市である東京都、両競技のアスリート、競技団体の合意と納得のもとに決定するよう求めるもの

10/29 議長・副議長が組織委を訪問、決議を手交

 

◆都民の声 JX通信社東京都内世論調査結果

JX通信社が26、27日に行った世論調査です。

・マラソン札幌開催「支持しない」57.9%

・札幌開催の費用を都が負担することに「反対」70.4%

 

詳細はリンク先をご覧ください

⇒JX通信社 東京都内世論調査「五輪マラソン札幌開催案 都の費用負担に反対70.4%

 

◆IOCの主張

IOC委員長が都知事に説明した資料が都議会に示され、内容について鈴木邦和都議が公開をしています。

鈴木邦和都議会議員blog「【全文公開】IOCから都知事への説明資料が酷すぎる件

 

鈴木都議によると、IOCの示した札幌開催の根拠は気温(暑さ)のみで、運営や警備などは考慮されていないとのこと。

①先月のドーハの世界陸上では多くの選手が暑さで途中棄権した。東京はドーハと暑さ指数が近い一方で、札幌は東京より平均気温が低いので望ましい。
②東京で開始時間を早めても意味がない。真夜中に誰もいない路上をアスリートに走らせることになる上に、日の出前ではヘリを飛ばしてレースを取材できないため良い画が撮れない。

 

◆札幌開催における課題

(1)本当にアスリートファーストになっているのか

この観点は先ほどお示しした白戸都議の検証PT会見やコラムに詳しく記載しています。

・陸上関係者は「温度だけで語ることは適切ではない」としている

・暑さの中で戦える選手を選考してきている

・暑さ対策、セキュリティーなどの運営面のクオリティも大事

 

その他、以下も挙げられると思います。

・東京で走ることを目標にしてきた選手たちがいる

代表に内定している選手からの声もあります⇒週刊新潮10/31号

(テレビでも同内容のものを拝見したのですが、他にソースが見つかりませんでした…)

 

白戸太郎都議会議員 10/25「都民ファーストの会東京都議団検証 PT 会見」書き起こし 「本当の意味でのアスリートファーストとは

白戸太郎都議会議員 10/26アゴラ「札幌開催は本当に「アスリートファースト」なのか?

 

(2)準備が間に合うのか

開催まで10か月程度に迫っている中、準備が整うのだろうかという問題。

大型マラソンは通常3年近く準備にかけるとのこと(白戸都議のコラム参照)

ざっと挙げるだけでも、

・選手、スタッフなどの宿泊施設、交通手段確保

・コースの計測、計画など

・スタッフ、ボランティアの確保

・施設整備。既存施設を使用なら調整。

・同時期に毎年開催されている札幌市内のイベントもあるので、その調整も必要。

 

(3)販売済みのチケットの扱いは

東京での観戦を前提にしていた方々の大半は札幌開催になると観戦しに行くのは困難だと思われます。

チケットの払い戻しはどうするのか、マラソンの単独チケットではない場合の扱いはどうするのか、などの課題

 

(4)費用負担をどうするのか

IOCは開催都市と組織委、北海道や札幌市は組織委と東京都で負担と主張。

組織委はIOCに負担をお願いする。東京都は札幌開催なら負担できないとの立場。

札幌開催をすると、更に340億円以上の経費が掛かるという試算もあります。

 

予備費を使えばよい、とコメントしているテレビのコメンテーターがいましたが、これは大きな誤解を生むことになります。

予備費が何のことを指しているか曖昧なところはありますが、いずれにせよ予備費は何もない所から生じるお金ではありません。

組織委が負担することになったとしても、組織委の予算で足りない分は開催都市である東京都が負担することになっています。

すなわち、予備費を使えばよい、という主張は、東京都が負担せよ、と言っているのに等しいことです。

 

◆その他の問題点や課題

(1)決定プロセスが不明瞭

IOCに決定権はありますが、開催都市である東京都と何ら協議をすることもなく一方的に競技会場を変更するのは遺憾。

どのように比較検討したのか、プロセスを明確化する必要あり。

 

(2)東京開催の可能性を探ったのか

現在は6時スタートをするということを前提に準備を進めてきています。

更に前倒しして5時スタートも可能であるという情報もあります(3時スタートは小池知事がテレビ番組で否定していました)。

スタッフなどの移動手段の懸念については、公共の交通機関を臨時に動かすことは可能だと思います(年末年始など実施している実績あり)。

東京開催を前提に、どのような対策を講じることができるか、という観点での検討が必要ではないでしょうか。

 

(3)これまでの準備経費は

遮熱舗装に300億円など、これまでに掛かっている経費があります。

この投資についてはどう考えるのか。

 

(4)東京でのマラソンコースになるはずだった沿道自治体、ボランティアの方々などの準備や思いは

マラソンコース沿いになる自治体ではこれまでも準備を重ねており、沿道の方々で開催を楽しみにしておられた方も多くいらっしゃいます。また、ボランティアの方々のご活躍の機会が多い競技でもあります。

(台東区の区議から小池知事へマラソンの東京開催を求める要望書が出ています)

マラソンは観戦チケットがなくても観戦できる数少ない競技であり、花形競技の一つ。

開催都市としてこの協議を都民に観戦して頂く機会が奪われるのは到底納得できるものではありません。

 

◆10/25都民ファーストの会検証PTの意見

上記の内容と重なりますが、都民ファーストの会の検証PTの意見も掲載させて頂きます。

 

<プロセスの著しい不透明さ>

1.競技会場の変更に都との事前調整は必須

・競技会場は立候補ファイルに記載されたもの。立候補ファイルを提出したのは開催都市である東京都

2.組織委員会の業務の著しい不備

・国・北海道・特定の都議に対する事前調整は前週のうちに行われたとのこと。しかし、組織委員会から都知事への伝達はIOCによる対外公表前日の15日

3.都民の大きな失望

・マラソン・競歩はチケットがなくとも、沿道での観戦やボランティアなど、幅広く都⺠が参加できる大変貴重な機会

 

<アスリートファーストの比較検証:暑さ>

 

<朝の街並み>

 

<アスリートファースト「暑さ以外の観点」>

1.アスリートの再調整の大きな負担
• 年単位の時間をかけてコース・気象条件への対応を行い、東京を前提とした選考レースを既に実施済み
• コース変更により、一から再調整を求めることが本当に「アスリートファースト」なのか
• 十分な時間的余裕をもってコースが整備され、適切な準備期間が確保されることこそが「アスリートファースト」
• 新国立競技場(オリンピックスタジアム)でのゴールはアスリートの大きな目標

 

2.アスリート・観客を守るためのテロ対策
• ボストンマラソン爆弾テロ(2013)の悲劇を繰り返さないために高いレベルの対策が必要
東京…開催決定以降対応し、予行演習済。19年3月:東京マラソン/19年9月:MGC/20年3月:東京マラソン(予定)

札幌…・仮に決定した場合は、今後の対応。コース設定等の調整後、積雪が想定されるが予行演習は可能か


3.札幌開催には多くの課題
•降雪が多い冬の札幌(2016年には65cmの積雪)での準備には多くの課題があるのではないか

・コース設定・計測/・札幌ドームの仮設整備/・選手の再調整・テストイベント/・警備・交通規制・輸送/・医療バックアップ体制の準備

<札幌開催時の経費概算>(詳細は会見時資料をご覧ください)

結論:340億円プラスαとなる可能性
組織委員会はIOC調整委員会前に試算・公表すべき
・本来、札幌開催時の経費概算は、大会の運営に責任を持つ組織委員会が算定し、東京実施か札幌実施かを意思決定する前に提示すべき
・算出に必要な情報は組織委員会が有しており、都議としては公開情報や他の事例からの概算数値としての試算
・組織委員会が現時点までに公表していない以上、可能な限りの算定を行い広く問題提起を行うことが必要。今後随時アップデート

 

10/25会見時に配布した資料⇒コチラ

10/25会見時の動画等まとめ⇒コチラ

 

<都民・東京都の損害>(詳細は会見時資料をご覧ください)

コース遮熱性舗装費/テストイベント経費(追加警備費・休憩所・ミスト等の暑さ対策の試行検証など含む)/機運醸成費/都庁職員等の人件費(これまでの準備・都⺠からの問い合わせ対応など)/チケット払い戻し・関連対応費・ボランティア対応/東京実施により得られたはずの波及効果(都の街並みの世界への発信・周辺エリアでの消費など)/信用失墜・都⺠の精神的損害(チケット購入者や、マラソンコース沿いの方々の不安・落胆など)

 

◆10/30 都民ファーストの会東京都議団から小池都知事へ要望書提出

10/30、IOC調整委員会会議に先立って東京都議団から小池知事へ要望書「東京オリンピック マラソン・競歩競技の会場変更計画に関する要望」を提出しました。

以下、ポイントと要望事項を記載します。全文はリンク先をご覧ください。

⇒10/30「IOCとの調整委員会直前、都知事に要望書提出


・東京都は開催都市として、IOC、関係団体、そして組織委員会と共に、暑さ対策を含め、大会の成功に向けて全力で取り組んできた。

その中での突然の発表であり驚きを禁じ得ないとともに、その手続・あり方について非常に大きな疑問を感じる。

・マラソン・競歩は観戦チケットがなくとも、沿道での観戦やボランティアなど、幅広く都民が関わることができる大変貴重な機会

・IOC の提案を真摯に検討した結果、「暑さ指数コーディングシステム」について、その科学的根拠が不明確であるとともに、暑さのみに焦点を当てるのではなく、安全面や運営面で充分な準備期間が確保されることが「アスリートファースト」である等の理由から、マラソン・競歩競技は東京で開催すべきと考える

・IOCの、真夜中に誰もいない路上を走ることはアスリートファーストではないという主張や、日の出前では都市をアピールする機会がなくなるという主張は的外れ。ヘリコプターを飛ばしてレースを取材できないという発言はアスリートファーストの観点とは全く無縁な理由

 

要望内容

1.札幌での競技開催の提案に至った IOC の考えやその経緯、合理的根拠について、都民に対する説明責任を果たすことができるよう明確にすること。
2.ドーハの世界陸上女子マラソンが行われた 2019年9月27日、IOC の理事会でバッハ会長が東京の暑さ対策を評価した 10月3日、そして、10月16日にまでのわずか2週間の間に、開催都市との調整抜きに東京都に対してマラソンと競歩の東京から札幌への開催地移転に関する「決定」が行われた経緯について、都民が納得できるよう説明をIOCに求めること。
3.ドーハの女子マラソンにおいて悲惨な結果を招いた原因と責任の所在、及びMGCを成功裏に運営した東京とを、どのように比較検討して東京での開催が不可能であると結論付けた根拠についてIOCに求めること。
4.暑さ対策の強化や競技時間や開催時期の変更等に関する更なる検討を踏まえ、東京での競技開催の実現に向け全力を尽くすこと。

 

 

今朝のスポーツ紙には、都を説得するためにIOCが3つの条件を用意しているとの記事が出ました。

⇒10/30日刊スポーツ「IOCら都説得へ3条件 負担0、パラ東京開催など

・都の費用負担なし

・暑さ対策による他競技の移転なし

・パラリンピックのマラソンは東京開催

真偽は分かりませんが、上記の条件とのこと。都の費用負担なしは当然の事ではないかと考えます。

 

不十分だとは思いますが、上記のように経緯や課題などをざっとまとめました。

本日夕方からの「IOC調整委員会会議」が山場です。

東京2020大会でマラソン及び競歩が予定通り東京で開催されることを望んでいます。