10/8、都民ファーストの会本部主催の勉強会に参加しました。
「無電柱化推進法の意味」と題し、松原隆一郎東京大学名誉教授にご講義を頂きました。
松原先生は阪神淡路大震災の被災者でもあり、経済学者としての視点から電柱の外部不経済などの問題も指摘しています。
小池百合子都知事(当時は代議士)との共著「無電柱革命」を2015年に出版。
◆欧米やアジアの無電柱化率の推移
・欧米の主要都市は戦前より地中化が標準(ロンドン、パリ、香港など100%)
・アジアの都市では近年無電柱化が顕著に進展(ソウル1980年代17%⇒2010年以降49%、マニラ40%、ジャカルタ35%、ハノイ28%など)
・日本は2010年以降、東京23区8%、大坂市6%、京都市2%など。
・他国は先進国化することや、観光地などで無電柱化を急速に推進。
・我が国は毎年7万本の電柱が増えている。
・我が国の道路総延長は120万km。電線地中化は、これまでの400km/年ペースで3000年、目標の2400km/3年で1500年もかかる…。
◆なぜ電柱が建つのか
・事業者にとってコストが安い。架空建設コスト…0.15億円/km 地中建設コスト…1.65億円/km
・電柱を建てることによる外部不経済コスト(社会に対する迷惑料)を負担していない
◆対応策
・推進法で、事業者が無電柱化を進めること、技術開発を行うこと、に対する責務を担うことになった
・今後は、技術革新を促す事。それを促すために、外部不経済に税を課す「ピグ―税」の検討もあり得るのでは。
◆課題
・架空建設コストと地中建設コストとの差を以下に縮めるか
地中化コストを下げる(技術革新など)、道路占用に制限、電柱に迷惑料を課す、など。
・電柱の関連業者等もあり、地中化コストを自ら下げる動機が乏しい。
・現状、事業者からみると電柱は広告料を得ることができている。かつ占用料も安い(100円~200円/月・1本あたり)。
この点でも電柱を撤去する動機に繋がりにくい。
・無電柱化の際に想定していない地下埋設物が出てくることがある。所有者不明の埋設物が出てくると、勝手に処分ができないために工事が滞ることがある。
◆災害時について
・これまで、無電柱化しない方が復旧が早い、など言われてきたが、千葉県を襲った台風15号の被害で幻想にすぎないことが明らかになった。
・共同溝化すると断線した場所などが分かりづらい、という意見もある。(現在の技術であればセンサーなどにより把握は可能ではないか。)
・電線は、電力会社、NTT(電信)、その他ケーブルなど、それぞれの所有物になっている。災害時にそれぞれの所有物を勝手に処分できない。これも復旧を妨げる。
無電柱化の必要性は以前から指摘されていますし、小池都知事は代議士時代から強く進めてきた政策でもあります。
「無電柱化は遅々として進む」
コストの課題だけでなく、利害関係や地下埋設物等の問題、トランス(変圧器)をどこに置くのか、などの問題もあります。
狭い道路で電柱が倒れた場合、消防車や救急車などの緊急車両の交通の妨げになることは明らかで、これは阪神淡路大震災でも実際にあったことです。
台風15号によって千葉県では甚大な被害がありました。電柱が倒壊し、停電が長期化したことは記憶に新しいです。
災害時の備えのためにも、無電柱化は極力進めていく必要があります。