8/28-30、会派で視察を行いました。

初日は札幌市のエリアマネジメントの取組みについて。

 

◆札幌市 エリアマネジメントの推進
1972年札幌五輪の頃に都市化。
平成12年頃から市内の再開発を行う方針。
エリア単位での部署を立ち上げ。
歴史的な背景など地域特性に応じて4つのエリアを設定。
民間のまちづくり会社が2エリアで立ち上がった。

⑴大通地区…札幌大通まちづくり株式会社
⑵駅前通地区…札幌駅前通まちづくり株式会社
(昨年3月に創成東地区にもまちづくり会社が立ち上がった。)
いずれの会社にも3%出資。当時、3%以上の自治体からの出資がないと補助金が受けられないという縛りがあったため、その水準まで出資。

⑴の立ち上げは、駅前通の整備(地下歩行空間と地上部)がきっかけ。
単なる通路を作るのではもったいないので賑わいの空間を作る、地権者との連携が必要、などからまちづくり会社立ち上げ。銀行などが多く、夕方には人通りが少なくなる課題。
現在は職員15名で運営。
地上部(北3条広場)と地下歩行空間(チ・カ・ホ)の2箇所の管理を指定管理者として行なっている。
国道・私道の壁面について広告収入をまちづくりに還元して良いという規制緩和(収益の分配は不可)。現在は1億2000万円くらいの収入。チ・カ・ホの広場などの稼働は100%近く、9000万円くらいの収入。ここに関しての指定管理料はゼロとしている。
地上部はイベントの仕掛け、まちづくりカフェ、Think Schoolなど。

⑵は、元々6つの商店街があるところ。
2003年の札幌駅南口の再開発後、人の流れが変わり駅側にお客さんがとられた。
6商店街の連携が必要ということで、商店街が出資してまちづくり会社を設立。
従業員は6名。
都心共通駐車券(カモンチケット)事業が柱で、1700万円くらいの収益(手数料収入)。
広告事業は、透明な壁の内側から広告を貼り、屋外ではない、というやり方。250万円程度の収益。
その他、ファシリティマネジメント事業や遊休不動産活用事業(コワーキングスペースなど)、イベントの仕掛けなど。
荷捌きスペースの確保などが課題で、社会実験を行うなど検討中。

元々あった路面電車の活用。

地下鉄延伸で路面電車は減った。ループ化されていなかったが、平成27年に路面電車のループ化開業。

下の写真はグッドデザイン賞を受賞した停留場。

「大通すわろうテラス」の仕掛け。

ループ化した路面電車の線路沿いに路上のカフェなど、デッキを設置。

道路占用許可の特例制度(都市再生特別措置法)を活用。



質疑など
・管理体制、ガバナンスはどのようにしているか。
→例えば広場は市の所有権のある場所。指定管理者として委托。
管理者としての立場と、賑わい創出の立場。
活用段階では株主である地権者との調整、地権者の意向が反映される。
エリア自体の価値向上が目的。
→株主としての立場では発言力は小さい。しかし指定管理者としての立場で発言ができ、理念を共有。普段から情報共有や意見交換をしている。ほぼ全ての協議会に役所の職員が加わったり、役所から頻繁にイベントに立ち会ったりなど。
グリップを効かす事が出来ている。
・壁面広告は今のところ空くことはない。
・地下歩行空間ができた後、地上部の歩行者が減ったという課題があった(特に冬場)。しかし広場を作るなどの仕掛けで地上部の人通りも取り戻せ、地下にも人が増えている状況。
・株の配当はなく、毎年の株主総会でまちづくりへ再投資をするという事を決めている。

座学の後、現地視察。

チ・カ・ホの壁面広告。

広告費がまちづくりに再投資されることが明記されています。

 

チ・カ・ホの真ん中は通路、通路の両側4mは広場空間。

写真のブラウン系の床が通路部分、右側の柱と左側の柱の間が広場空間。

左側の柱の奥側は民間の店舗の土地。

地下を掘ってセットバックすることに協力すれば、セットバックした部分に客席を設けるなどを行ってもよいというルールを設けているとのこと。利用者にとっては空間が広く見えて開放感があり、よいと思います。

 

 

地上部の広場(レンガの道になっているところ)。

元々は市道だったが、賑わいを出すために利用できる空間に。

本区で導入する際に留意する事。

・地域の方々との合意形成。目標、理念の共有。
一部の人の為ではなく、地域の活性化をするために行っている事業。
・公共の場所を活用するので役所のグリップが効かなくなるのはまずい。
役所の職員が地域の方々と信頼関係を築いていることが大事。
(指定管理者として関わるのはよさそう)
・札幌市では地権者がエリアマネジメントの会社の出資者として関わっている。
豊島区の場合にはこのような形にはならない。
・エリアマネジメントの事業会社の収入を得る手段の確保は課題。
広告収入、場所貸し、その他の工夫も必要。
札幌市では駐車場収入の差額を得る方法も取っていた。
・多くの住民、事業主、地権者等が関わりあいながら進めるのがポイント、と総務省の資料にはある。
実際に札幌市では、まちづくりの会議、ワークショップやディスカッション等を行う[Think School」など、多くの方に関わって頂く仕組みとなっている。

 

札幌市の事例は理想的なものだと思いました。

・役所の関与は最小限で基本的に地域の方が自主的に街づくりに関わっている

・独自の収入で街へ再投資ができている

・プレーヤーが更に育つサイクルとなっている

ここまでもっていくのは容易ではありませんが、豊島区でもよいモデルを作りたいですね。