8/20、第7回目となる平成30年度「としま教育フォーラム」が開催されました。
区立の全小中学校の教員など730名を超える参加者。
教育連携をしている秋田県能代市の高橋教育長を始めとする教育委員会や教員の皆様、愛媛県からも職員の方々など。
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第1部が実践報告、第2部はシンポジウムでした。

〈実践報告〉
◆豊島区立豊成小
「一人一人のよさを伸ばし、豊かな人間性を育てる道徳教育」
 

▷授業づくり
・指導観をもつ
・問題解決的な学習を取り入れた学習過程
・発問構成の工夫
・話し合いの工夫
・書く活動の工夫(ほっこりノート)

▷評価の工夫
・事前アンケートを取っておく
・座席表評価シート→授業中の見取り
・児童の自己評価
事前アンケートとからの変化など、授業後に上記を振り返り
 

▷豊島ふるさと学習と関連付けた道徳
・地域への愛着を深める。2、3年が中心。
・地域の方との交流。
ふれあい給食、わくわく町たんけん、など。

◆豊島区立西池袋中学校
「道徳教育の推進と としまふるさと学習」
1 全体計画別葉を作成することで道徳教育を推進する
→一覧で見渡せる資料を作成
2 郷土資料を作成する
→豊島区に関する既存の教材が不足。
ふるさと学習を兼ねた、トキワ荘関連の情報を掲載した資料の開発を行なっている。
地元の方々がトキワ荘に関する紙芝居を作成、これも活用。

◆能代市立第四小学校
「能代市立第四小学校の実践について」
▷あかしや運動
・あいさつがよく 礼儀正しい子
・からだをきたえ 命を大切にする子
・しんぼう強く 学び励む子
・やさしさを 行いで表す子

▷秋田県北で一番規模が大きい小学校。そのため、初任者や若手の配属が多い。
「共有と継承」がキーワード。

▷道徳の研究
・校外の研修会への参加
・以降に関する情報の伝達
・研究テーマ「自己を見つめ、心豊かによりよく生きようとする子どもの育成」
・別葉の活用と見える化
→拡大印刷。実施したらマーキング。学年部内で予定の確認。
その結果、行事、特別活動、各教科と関連を持たせた指導につながった。
・授業づくりでは、ワークシートを作成、共有フォルダでデータ共有。
次年度への引き継ぎにもつながる。
・今後の課題として、
児童の変容をとらえ、より具体的に授業改善の在り方を探求したい、とのこと。

◆能代市立浅内小学校
「子どもが主役の道徳をめざして~納得解を見付ける授業作りへ~」
▷考え、議論する道徳 指導方法の工夫(秋田県教育庁北教育事務所)
・読み物教材の登場人物への自我関与中心の授業
・問題解決的な学習
・道徳的行為に対する体験的な学習

▷上記を踏まえた授業の成果
・自我関与が中心の学習
→道徳的諸価値の理解(価値理解、人間理解、他者理解)
・子ども一人一人の「納得解」を導く授業
→学び合いの場の設定
・振り返りと評価
→自分と友達の発言の中で最も納得できる発言を見付けることができたかどうか

▷課題
・秋田型探求的な課題解決学習、設定が難しい
・振り返りと評価、これも難しい。

〈シンポジウム〉
「人間としての生き方について考えを深める」
~考え、議論する「特別の教科 道徳」の授業創り~
シンポジスト
  能代市教育委員会 教育長 高橋誠也氏
  豊島区教育委員会 教育長 三田一則氏
  豊島区立豊成小学校 校長 野崎徳道氏
  豊島区立西池袋中学校 校長 江川登氏
  能代市立第四小学校 教諭 野呂田光年氏
  能代市立浅内小学校 教諭 唐津敬子氏
コーディネーター
 豊島区教育委員会事務局教育部教育指導課長 加藤勲氏
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〈両自治体の取り組み〉
◆能代市
高橋教育長
▷能代市目標
・話す、聞く、読む、書く、が大事
問いを発する子供の育成。自ら課題を見つけ発信する。
・子供一人一人の活躍を保証する。自分の考えを発表する場を設ける。
・ふるさと学習との関連。各校の活動で行なっている。小5、中2で全校での共通活動。
教科書以外の自作教材も必要と考えている。

◆豊島区
▷座席表を使用した評価方法を詳しく聞きたい(能代市からの質問)
・「明確な指導観」を基にする。
座席表を活用したシートに、子供たちへのアンケートの内容を予め記入しておく。
時間内での各児童の変容を見ることができる。
やるのは大変だが、授業の質を高めるのには有効。
・ほっこりノートの活用。気づきなどを各人がメモに取るため。夏に保護者へ見てもらい、コメントをもらっている。子供の成長が分かるなど保護者からの評価は高い。

▷校長の役割
・教育指導要領解説の総則に、道徳の授業の方針の明確化を校長が指導することになっている。校長がリーダーシップを取る必要。年間の指導計画をしっかりと定めなければならない。時数確保だけでなく、道徳の授業の目的を果たすこと。
・道徳の授業は学年が上がるごとに「つまらない」と感じる子供が多い傾向。大人が予め導きたい答えが子供に分かる、などは不評。
・地域の郷土資料がない。作っていきたい。

〈ふるさと学習と道徳をどう繋げるか〉
◆能代市
高橋教育長
・学区域の中に、伝統文化などの資源が多くない。
地域の人にスポットを当てた教育に力を入れている。
地域に貢献する心を育てるようにしたい。
今後の課題は、実践的な態度を養うこと。清掃活動への積極的な参加、挨拶、自主的な学習などに繋げたい。
・外国籍の子も多い。地域を愛し、共生していこうという心を育てたい。

野呂田教諭
・ふるさと学習交流会を実施。歩いて数分に田んぼがある。田植えや稲刈り体験などさせてもらい、給食にも出している。
・教材の主人公の気持ちだけでなく、自分自身がどう感じたか、の発問も大事。

唐津教諭
・学校の畑、敷地内にある風力発電など、教材に活用していきたい。

〈人間としての生き方について考えを深める道徳のあり方〉
◆豊島区
江川校長
・自分の考えのみならず、他の子がどう考えているかを共有する時間の確保が重要。
教員は価値観を教え込むのではなく、考えさせる。

野崎教諭
・自己を見つめなおす、という時間を必ず確保。
ほっこりノートの活用。指導観が大事。何を考えさせたい発問なのか、を教員が明確に考える必要。

◆能代市
野呂田教諭
・議論する授業、が大事だと思い授業を組んだことがある。しかし議論自体が目的になってしまったことがあり反省。

唐津教諭
・算数は正解、国語は最適解、道徳は納得解。
授業の振り返りはまだ手探りだが、一定の視点を与えて振り返りをするようにしている。

〈会場からの意見や質問〉
平林教諭(昨年第四小学校へ派遣)
・子供たちに問いを持たせ、その時間の中で解決する、という取組が印象的。
教材研究も、どのように子供たちへ問いを持たせるか、ということに取り組んでいた。
子供たちが他の授業を参観するという機会を設けていた。

〈まとめ〉
高橋教育長
・子供たちに考えさせるようにしていかねばならない。
豊成小学校の「指導観の確立」、座席表シートによる評価など参考になった。

三田教育長
・学年が進むごとに授業がつまらなくなる、というのは避けたい。
課題を明確にすることが必要。その下に計画を策定していくことが問われる。
・評価の工夫が必要。子供たちがどのような成長をしたのか、など変容を書き留めるなどしたい。
・赤い鳥文学、の鈴木三重吉は目白に住んでいた。
このようなことも教材になりうること。
豊島区の歴史を継承していくことをやっていかねばならない。

能代市との教育連携により、毎年お互いに教職員を研修派遣したり、今回のような情報交換の場であるフォーラムを開くことができています。
今回のシンポジウムは、能代市からのご意見をできるだけ引き出すような時間配分をしていたのだろうと感じました。この点、とても良かったと思います。

豊成小学校の取り組みは、能代市からの評価も高かったです。私自身もかなり良い内容だと思いました。
他の学校でもそれぞれによい取り組みをしていると思うので、このような取り組みも参考にしながらよりよい授業を展開していただきたいです。

ふるさと教育との組み合わせも話題にのぼっていました。
郷土の歴史・伝統・文化を継承していくのはとても大切な取り組みなので、ぜひ今後も深めていただきたいです。
豊島区独自の教材開発にも取り組んでいるとのことだったので期待したいです。