12/8、豊島区議会の議員研修会が行われました。


研修名「公会計情報の新たな活用に向けた地方議会の役割」

講師:公認会計士 川口雅也先生

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【要点】

1.活用方法活用しないと意味がない。

2.情報・数値の蓄積が必要。


[導入意義と活用方式]

・債務の裏側には必ず資産もある。

・公会計とは、地方公共団体の決算に複式簿記を導入して財務書類を作成すること

・現在の官庁会計では把握しにくい、ストック情報・コスト情報を補う。

コストと歳出は違うもの。

・制度の課題として東京都方式と総務省方式が併存。


・行政のダウンサイジングを含めた「規模の適正化」が求められる。

・現状把握と将来の意思決定判断に財務書類の作成が不可欠。

・これまで活用が進まなかったのは、作成単位が大きすぎたこと。

事業別財務書類の作成により、公会計情報の活用が進む


[連結経営の概念導入の必要性]

・連結財務書類とは、地方公共団体と連携協力して行政サービスを実施する会計・団体等を一つのサービス主体として作成する財務書類。


[作成する財務書類]

ストック情報:貸借対照表 フロー情報:行政コスト計算書、資金収支計算書、純資産変動計算書

発生主義:貸借対照表、行政コスト計算書、純資産変動計算書 現金主義:資金収支計算書


[官庁会計と公会計財務書類]

◆官庁会計:現金・単式

 現金の増減を中心に会計処理

◆地方公会計:発生・複式 

 現金の増減に、その原因又は結果を同時に示す。過去情報・将来情報も合わせた会計処理を行う。


・従来の官庁会計で不足している情報を補う

・取引ごとに複式簿記による仕訳を行い、より細かな単位での分析が可能になる


[発生主義固有論点]

◆減価償却

・減価償却とは、固定資産の取得に要した支出(取得価額)を、その利用ができる期間(耐用年数)に渡って費用配分する。

・歳出の発生は現在だが、コストの認識は将来。


◆引当金繰入

歳出の発生は将来だが、コストの認識はあらかじめ行う。


[財務諸表の活用方法]

・財政運営上の目標設定、資産の適切な管理などマクロ的視点。

・セグメント分析事業別、施設別の行政コスト計算書等を作成することで分析が可能に。

行政評価との連携、受益者負担の適正化、施設の統廃合、予算編成の活用など。


数値を作り現状把握数値を比較し評価(時系列、他団体)将来目標の設定


例えば、

・回収不能見込額の時系列、他団体との比較

・受益者負担割合の時系列、他団体との比較

  

[質疑・回答例]

Q:企業会計の原則のような基準はあるか。

:そうはなっていない。区役所の資産の殆どは固定資産であり、その評価基準は作られている。減損の考えは確立していない。


Q:前回導入時との違いは。

:平成18年の頃と思われる。その時は作ってみて、活用はその後考えるという形だった。総務省はどのように活用をすれば良いか研究をしている最中。


Q:23区で連携し比較できるようにすべきでは。

:江戸川区、荒川区、板橋区は東京都方式。事業別の仕分けを行うと進むのではないか。


Q:公認会計士などとの連携は。

:公認会計士協会でも公会計の研修を行なっている。


Q:会計資料は連続性が大事だが、財務諸表の連続性はどうなるか。

:豊島区は29年度から公表する予定なので、28年度も貸借対照表を作らねばならない。

その他の財務諸表はないが、比較のためであればわざわざ作成は不要。

大まかには比較可能である。


Q:引当金の方針は統一されていなければ比較できないのでは。

修繕に対しての引当金はなく、基金で積んでいる。

:退職手当引当金、賞与等引当金などは定められているが、それ以外はない。

修繕に対しての引当金はないが、豊島区で大事であると考えるのであれば、引当金として計上するのはありうるのではないか。ただし、他団体はそのようにしていないので、比較は難しくなる


Q:国の財務諸表と地方公共団体の財務諸表との比較、連携は。

:国でも作成されているが、連携していない。交付税は特会で見ることが可能。


[質疑]

Q:公共施設の引当金の計上は難しいか?

:将来確実に発生、金額を正確に見積れる、という2点が引当金には必要。

この2点を満たすことができない自治体が多いだろう。

取得価格と累計の減価償却費を比較した場合、将来の必要額の算定ができるかもしれないが、習志野市で試みた時には難しかった。資産の償却累計額と基金の比較には意味があるはず。


今回は備忘録も兼ねて、blogにメモをUPしました。

豊島区では来年の秋の決算資料から、新しい財務諸表で作成されます。

公会計の導入に向け、私たち議員も知識をつけて数字を分析できるようにならねばなりません。

私自身、会社に勤めている時に日商簿記二級を取得したことがあるのですが、その時の知識も改めて呼び起こしながら研究をする所存です。