1/30(月)、群馬県邑楽郡大泉町へ視察に伺いました。
外国籍住民数が17%を超える同町で、どのように多文化共生を図っているのかを聞き取りするためです。
 
まずは大泉町役場にて行政の方々へヒアリング
<簡単な経緯・沿革など>
・大泉町は工業の町として栄えてきた経緯があり、今もパナソニック(三洋電機)や富士重工業などの工場が立地しています。
税収は豊かで、不交付団体。
大手企業では労働力の機械化が進んでいきましたが、中小企業では必ずしも機械化できる仕事ばかりではなく慢性的な労働力不足に直面し、アジア系の不法労働者が多く入ってくるということが問題に。
そんな中、平成2年6月に入管法が改正され、不法就労者だけでなく雇用主にも罰則規定が加わることになりましたが、日系人には活動や就労の制限がないという内容も加わったために、日系人の雇用が増加。このころは出稼ぎで来ていた方々が多かったのが、日本での生活が長期化して定住化していく外国人が増加しているというのが現状とのこと。
・大泉町の総人口は約41500人、そのうち約7200名が外国人。
外国人の内訳は、南米が8割を占め、ブラジル人が57%、ペルー人が13%を占める。
 
<教育>
・町には公立小学校が4校、私立中学校が3校。
公立小学校4校には全て「日本語学級」が設置。
日本語学級の教員は県からの加配、一人一人の進捗に合わせたカリキュラムを組む。
日本語学級の指導助手は2か国語が可能な人を配置し、教員免許は問わず町の単独予算で雇用。
・日本語のレベルが子供によりかなり違いがある。国語や数学などは日本語学級で行い、音楽や体育などは通常級に戻る。
・ブラジル人学校が2校あり、ここには経済面で恵まれている人、いつか帰国を考えている人などの子供が通う。しかし、定住化を図る人が増えており、公立校を積極的に選ぶ人も増えている。
・保育園や幼稚園には、特に通訳などは置いていない。教材の翻訳などが必要な場合は行政で行う。
 
<情報発信>
・52か国の人が在住。同じ国籍同士の情報提供ができるキーパーソンを探してつなぎ役になってもらうなどの工夫をしている。
・正しい情報を正しく発信し正しく伝える、ということを行政としては考えている。
ポルトガル語通訳の配置。ポルトガル語の町の広報紙「GARAPA」を毎月発行。
防災ガイド、防災マップ、ごみカレンダーのポルトガル語版を発行など。
 
<その他>
・町が戦略的に外国人を受け入れてきたという経緯ではない。町の中小企業などが外国人労働者を雇用する中で増えてきた。外国人への対応をよくすることで、外国人コミュニティの中でも大泉町は住みやすい所であるという情報が回っているようだ。
⇒外国人の受入れのためには、町でも通訳の配置や教育現場での体制づくりなど、行政コストがかかるところがある。今のところ大泉町は財政が豊かなのでこの角度での問題は起きていないが、本来は外国人労働者を雇用する企業も応分の負担をすべきではないだろうか。
 
・日系人を受け入れたばかりのころは、顔立ちも日本人に近い人が多かったので、住民の中でもさほど違和感はなかった。しかし、最近は顔立ちからも明らかに外国人という方が増え、ゴミ出しのマナーの問題なども起きている現状がある。ただ、外国人が多く住む町なので、住民も慣れてきているという状況。
⇒ゴミ出しのマナーの問題は外国人だから起きるというわけではなく、習慣の違いなどによるところも多いだろう。この辺りは地域のルールを理解して溶け込んでもらった方がよい。
 
その他も聞き取りできた内容があり、大変参考になりました。
 
昼食会場へ移動、ブラジル食材を扱うマーケット内にあるブラジルレストランへ。
 
シェラスコをお腹いっぱい頂きました。
 
大泉町観光協会の方々のご案内でした。観光協会の方と昼食後に意見交換。
外国人の社会保険料の未加入の問題、労働者の待遇の問題、住民感情についてなど、行政では踏み込んで話を伺えなかった問題についてヒアリングをすることができました。
外国人を労働者として雇用するにあたっては、企業側も責任をもって対応する必要があります。外国人労働者にも家族はいるし、やがて高齢者になり社会保障が必要になってくるということも理解せねばなりません。
 
更に、日本語学級だけでは学校の授業についていけない子供たちのために学習支援をする、NPO法人NO BORDERSの田中セルジオさんにお話しを伺いました。
4名いる講師は全員バイリンガルで、かつ自分自身も移民の子として日本で文化の違いや言語の壁に悩まされた経験がある人たちであるとのこと。
そうした経験があるからこそ、子供たちがどのようなところで戸惑い、躓いているのかが理解できるそうです。
田中セルジオさんがとても熱いハートをもつナイスガイでした。
 
・母語を学ぶのはアイデンティティの確立をするため。母語と文化は切り離せない。
自分自身は日本で生活し日本で骨をうずめるつもり。自分のルーツはブラジル、ブラジル人のアイデンティティを根底にもち、心は日本にあり日本の社会に溶け込む。
・行政を介して支援をすると、それに頼ろうとしてしまう。ここで生きていきたいなら、自分たちで何とかしなければならない。
日本の文化になじんだ外国人の中には、同じ国籍の人に日本の文化になじむために必要なことを指導する人も出てくる。こうなって共生が進んでいく。
中国人が海外へ行った場合には自分たちだけでコミュニティをつくってしまっているが、これは同胞以外のところにいるのが怖いからという側面もあるのだろう。何世代が掛けてなじむものではないか。
・日本語学級の問題は、①教えている内容の問題、②教える側の質の問題、が挙げられる。
①は、
 ・そもそも日本語がある程度分かっている前提になっている場合
 ・ある程度進んでいる子にとっては、内容が物足りない場合
 ・通常級で行われている教科をそもそも教えられていない場合
 ・固定級の個別指導計画でも上記のような問題あり
②は、
 ・単に外国語を母国としているだけで、日本語検定すら持っていない職員が配置されている場合(翻訳まで出来るレベルにない人材)
 ・子供たちがどこで躓いているかのチェックができない職員が配置されている場合(語学力で躓いているのか、学習内容が理解できていないのか、の区別がつけられない)
 ・上記は待遇面で恵まれていないケースもある。
上記のような問題を現場で抱えている結果、放課後の学習支援が必要な現状となっている。
 
全てを書くことはできませんが、私たちの心に響くとても熱い話しをして頂けて大変感動いたしました。
また機会を改めて意見交換してみたいです。
 
豊島区でも外国人比率は高まっていて、現在は28万人の人口のうち9%を外国人が占めております。
大泉町での行政と民間が取組んでいる対応と垣間見える課題を参考にしたいです。