5月8日(木)に、日本創生会議・人口減少問題検討分科会が、「ストップ少子化・地方元気戦略」(⇒提言全文 ⇒要約版)を発表しました。
この提言で896の自治体(全体の49.8%)に消滅するおそれがあるとし、その中に東京都豊島区が東京都心部で唯一含まれていたことが、インターネットニュースや新聞などで取り上げられ、大きな反響を呼びました。

豊島区は「消滅可能性都市」と言われるような状況ではありませんが(以下に考えも述べます)、今回の指摘を「より選ばれる都市」になるような施策を打ち出す契機にすることも可能であると考えます。

[消滅可能性都市とは?]
この提言で、人口の「再生産力」を示す若年女性(20~39歳)が2040年までに50%以上減少する市区町村を「消滅可能性都市」と定義。
豊島区は、2010年:50136人⇒2040年:24666人 の推計で、▲50.8%となるので、「消滅可能性都市」という指摘を受けたということです。
ちなみに、ここでいう「若年女性」(20~39歳)の年代が合計特殊出生率の95%をカバーしています。

日本創生会議の試算は、「国立社会保障・人口問題研究所」による「日本の地域別将来推計人口(平成25年3月推計)」をベースにしています。
この推計手法は、2010年の国勢調査の数字を基に、自然動態(生存率)と社会動態(純移動率)を加味したものです。

[豊島区の人口推移]
豊島区の現状は、2010年の国勢調査時点と異なり、むしろ人口は増えております。
国勢調査は5年に1回しか行われませんので、豊島区の「住民基本台帳による年齢別人口」にある総人口を以下に示します。(数値はいずれも1月1日現在)
2010年(H22) 244637
2011年(H23) 246029
2012年(H24) 248299
2013年(H25) 268959
2014年(H26) 271643

今回の推計は、2010年の国勢調査を基にしているため、その後に豊島区が人口流入により大きな人口増を果たしている結果が反映されていないものと思われます。

[今回の提言「ストップ少子化・地方元気戦略」の趣旨]
今回の提言は、「消滅可能性都市」を炙り出すことが目的ではありません。
数値で見る「不都合な真実」を直視し、人口減少問題への対応を早期に促そうというものです。
戦略として大きく3点。
「ストップ少子化戦略」(国民の希望出生率(1.8)の実現を目指す、女性だけでなく男性の問題として取り組むなど)
「地方元気戦略」(地方から大都市への人の流れを変えること、選択と集中で地域の多様な取組みを支援など)
「女性・人材活躍戦略」(女性・高齢者・海外人材の活躍推進に取り組む、長期的かつ総合的な視点で政策を実施など)
移民に頼らない政策を取るべき、という指摘は全くその通りだと私も考えます。

[豊島区の対応]
5月15日に行われた議員協議会で、区長をトップとした緊急対策本部(副区長、教育長、子育てや教育など関係部署で構成)を設置することが報告されました。
緊急対策の検討(若い女性層などの意見を緊急に集約する)、中長期対策の検討(「選ばれるまち」を目指すための総合的な対策の検討)をすることが対策本部の役割です。
今回の指摘は、豊島区がここ数年で人を呼び込むことができてきている状況を必ずしも映しておりませんが、中長期的な視点で人口減少問題に取り組むきっかけになりそうです。

[池袋が「住みたい街ランキング」で3位に!]
一方で、池袋が首都圏の「住みたい街ランキング」で3位に躍進したという調査結果もあります(以下の表は、リクルート住まいカンパニーのHPより)。


リクルート住まいカンパニー調べの「2014年版 みんなが選んだ住みたい街ランキング 関東版 -20代~40代編-」で、吉祥寺、恵比寿に次いで3位に池袋が入りました(前年度13位)。

5月17日(土)朝日新聞夕刊の1面TOP記事に「住みたい街 池袋急浮上」が掲載されましたが、この記事によると、池袋の利便性が評価されたのだろうというアンケートの分析結果が出ています。


[まとめ]
何度も書きましたが、今回の報道内容は必ずしも豊島区の現状を映したものではないと考えます。
若年層を含めて人口は増加していますし、「住みたい街ランキング」に現れたように若年層の印象が悪い訳ではありません。
ただ、豊島区は合計特殊出生率(15~49歳までの女性の年齢別出生率を合計したもの)が一時期よりは回復しているとはいえ低水準(豊島区H13:0.77⇒H23:0.91、東京H13:1.00⇒H23:1.06、全国H13:1.33⇒H23:1.39)で、他都市からの人口流入に頼っているという現状は否めません。

豊島区が「消滅危機」と大きく踊った報道の見出しは、かなり衝撃的でした。
しかし、よくよく提言の中身を読むと、趣旨は全く違うところにあります。
このまま何の対策も打たなければ、これまで人材の供給源であった地域が細り、結果的に都心部の人材も不足してきます。
都心部の政策としては、「選ばれる都市」を目指すと共に、合計特殊出生率の上昇に繋がる政策も行っていかねばなりません。
豊島区は名指しで警鐘を鳴らされた事により、緊急対策本部が立ちあがるほどの危機感を持つことができました。
これを契機として、人口減少問題に正面から取り組むきっかけとしたいです!

◆報道関係リンク
【消滅可能性都市】
・マイナビニュース 5/9(金)
896の自治体が"消滅"の危機--東京都豊島区も、2040年に若い女性が半減
日本創成会議の人口減少問題検討分科会(座長・増田寛也元総務相)は8日、「全国1800市区町村別・2040年人口推計結果」を発表した。それによると、地方から大都市圏への人口流出がこのまま続くと、2040年には896の自治体で20~39歳の女性が半減し、将来的には自治体が消滅する可能性があると予想している。

同分科会は、国立社会保障・人口問題研究所が2013年に発表した将来推計人口を基に、20~39歳の女性の数を試算。地方から大都市圏への人口移動が収束しないと仮定したところ、2010年から2040年にかけて女性の数が半数以下となる「消滅可能性都市」は896自治体、全体の49.8%となった。このうち、2040年時点で人口が1万人を切る市町村は523自治体(29.1%)に上った。

都道府県別に見ると、消滅可能性都市が8割以上になるのは青森県、岩手県、秋田県、山形県、島根県の5県。5割以上は24道県となった。大都市圏では、大阪市西成区、同大正区、東京都豊島区などが消滅可能性都市とされている。

また、大都市では高齢化が進むとも予測。特に東京圏の千葉県西部、埼玉県東部・中央部、神奈川県北部は、2040年には75歳以上人口が2010年の100%以上増加し、高齢化が一挙に進むと見込んでいる。

・ロイター 5/8(木)
2040年に896自治体で若年女性半減、消滅の可能性=有識者会議推計

・J-CASTニュース 5/9(金)
「豊島区消滅する説」に区や区民が激怒 人口も増え、人気は都内トップ級で「ありえない」

【住みたい街ランキング】
・株式会社リクルート住まいカンパニー 2014年3月3日 「2014年版 みんなが選んだ住みたい街ランキング 関東版 -20代~40代編-」を発表
⇒詳細資料はコチラ

・SUUMOジャーナル 3/5(水) 「みんなが選んだ「住みたい街ランキング」2014年 関東版を発表!

・朝日新聞デジタル 5/17(土) 「池袋が横浜を抜いた 住みたい街ランク、一気に3位
民間の不動産情報会社による「住みたい街ランキング」で東京・池袋が急上昇している。昨年13位から今年は3位に躍進。横浜や自由が丘などの人気都市に割って入った。「通過される街」とも言われた池袋が、変わりつつある。

 調査は、住宅情報サイト「SUUMO(スーモ)」を運営するリクルート住まいカンパニー(東京都千代田区)が実施。1月30日~2月2日、東京、神奈川、千葉、埼玉、茨城の1都4県の20~40代の男女3千人が回答した。

 2010年に始まり、東日本大震災があった11年を除き今年で4回目。1位は4回連続で吉祥寺。交通の便がよく商業施設も充実。自然も豊かで不動の人気を誇る。恵比寿、横浜、自由が丘など、住環境、商業施設、交通網が整う街が上位を占めてきた。

 池袋は10年の8位が最高で、12年11位、13年13位と毎年順位を落としていた。

 池袋駅には山手線の他、東武東上線や西武池袋線など8路線が乗り入れ、西武や東武百貨店もある。なのに、人気は低迷。今回の躍進に、SUUMOの池本洋一編集長は「街のブランドイメージより、実質的な利便性が評価されたのだろう」とみる。