1月21日、南池袋小学校にて「学力向上シンポジウム」が開催されました。
秋田県能代市の須藤教育長をお招きして、豊島区との教育連携プレ事業として行われたものです。

当日は生憎の雨でしたが、区内の区立小中学校の校長以下先生方、PTA役員の方々、区立幼稚園の先生方、保護者の方など多数のご来場がありました。

まずは豊島区の各校の取組みについての発表がありました。
朋有小(読む事を楽しむ)、豊成小(考える子供の育成)、朝日小(確かな学力、"朝日スタイル")

☆富士見台小
富士見台小は地域との連携についての発表。
人間関係の希薄さ、家庭・地域の教育力低下の影響で、課題探求力の不足、コミュニケーション力の不足、が生じている。
解決には、協力的な家庭・地域が必要。学習意欲、ねらい達成、達成感、視野・将来の選択肢を拡げる効果を期待。
▼地域の方々を"ゲストティーチャー"として招く取り組み
・1年_生活課「草木」(講師:豊島みどりの会。以下同)、2年_学級活動「食育」(田倉農園、栄養士の小貫先生)、3年_理科「チョウを育てよう」(新井アマゾン昆虫館館長、日本甲虫学会会員)、4年_社会科「ゴミのしまつ、再利用」(清掃局)、5年_総合的な学習、6年_道徳「よりよい校風をつくろう」(卒業生)
▼その他
・地域フォーラム、しゃべり場in富士見台などを開催。双方向の意見が通るように。

以前視察へ行った富士見台小がここでも登場(→過去blog
地域との連携方法は参考になりますね。

☆区立幼稚園(南長崎、池袋、西巣鴨)
「道徳育成指導員」を各園に配置。
・学習の基盤、道徳性の芽生え。育成プログラムを開発。自ら挨拶、人の話を聞こうという態度、相手を考えた行動。
・規範意識の根っこ。相手の気持ちを子供自身に気づかせていく橋渡しを、色々な場面で教員が助ける。
・小学校との連携(運動会、学芸会、2分の1成人式、親子ふれあいデーetc…)

基本的な生活習慣の確立をし、規範意識を涵養する目的。
課題として、感性を伸ばすカリキュラム作成など。

田口佳史先生の下、同志と取り組んでいる「規範形成教育プログラム」に通じるものがあります。
これまでの取組みの検証をして、よりよいものにしていきたいです。

☆さくら小学校
道徳教育の重点校として4年間取り組み。
・基本的な生活習慣や学習習慣の定着は、学習目的(基礎学力の徹底、基礎・基本の定着、「生きる力」の育成)を達成する上でも基本となる。
・健全な自尊感情のもと、高い志を持つ。「自立心、思いやり、生命尊重、規範意識」
・生活指導を徹底。「はきものを揃える」を徹底。毎朝6年生による「おはよう隊」。
・副読本「さくらのルール」

興味深い取り組みが紹介されていました。もう少し突っ込んだ話を後日ヒアリングしてみます。

☆西池袋中学校
・小中連携の取組み。
・小学校・中学校、互いの授業参観を行う。
・推薦図書の紹介

☆秋田県の取組み
各校の発表の後は、能代市の「学力向上への取組」の紹介でした。

細川正博オフィシャルブログ「細川正博の活動記録」Powered by Ameba-能代市教育長

56年前(昭和31年)の全国学力テスト(4%抽出)で、秋田県は小6の国語、算数が全国最下位、中3の国語が全国最下位、数学が下から2番目、という非常に不名誉な結果を残してしまい、教育関係者のみならず一般の方々の関心も学力向上に向いた。
しかし、芳しい成績を残せないまま、昭和41年に学力テストは終了したが、改善の取組みは継続。
平成19年に復活した「全国学力・学習状況調査」で全国トップクラスに。

▼成績向上の主な要因
基本を「子供の心身」「生活の安定」「ふるさと教育」に据えた。
学校・教師:やるべきことを粘り強くあきらめずに行った。また、地域や学校、教師によるムラが生じないように全県で取り組んだ。
・昔ながらの共同体意識が残り、「家庭教育力」「地域教育力」が全国ほどには失われずに推移し、学校教育を支えた。

経験則による以下の教訓あり。
・生活の安定と学力はほぼ比例する。
・小中では「温かい人間関係」が出来あがっているほど学習効果が上がる。

▼学力向上施策として「県学力状況調査」を実施。
平成6年当初は小5、中2対象。平成14年から小4~中3の悉皆調査(全員対象)
・一人一人の到達度、つまづき具合。
・学び直し、教師のきめ細やかな指導材料へ。
客観的なデータを得られるのがポイント。

▼授業の工夫。
平成13年から少人数学級実施。独自財源(県予算)で教員を加配。
算数・数学で単元テストを実施。

▼特色ある研修を実施
・出前研修(教師は忙しいので、一か所の研修会場に集めるのではなく、研修講師を各校へ派遣)
・秋田大学出前講座の活用
・課題に応じた研修(ICT活用、保健体育、理科実験など)
・教務・研究主任研修、講師研修

▼授業の工夫
・ワークショップ型授業研究会
・小中連携
・家庭学習(学習ノート)

▼ふるさと教育
・ふるさとの良さの発見、愛着心の醸成、ふるさとに生きる意欲の喚起
・地域の自然・歴史・文化を活かした教育計画、体験活動

色々な取組みのご紹介がありました。
学力状況調査に関しては、豊島区でも既に実施しております。
教員研修、家庭学習の重視、郷土の教育などは参考になる取組みだと思います。
先進事例をもっと掘り下げたいです。

☆パネルディスカッション
能代市教育長、豊島区教育長、豊島区小学校校長代表、豊島区中学校校長代表、豊島区PTA会長代表をパネラーとして行われました。
細川正博オフィシャルブログ「細川正博の活動記録」Powered by Ameba-パネルディスカッション

学力テストについて、授業改善について、学力向上と家庭学習についてなどにつき、各パネラーからお話しがありました。

能代市では「当たり前のことを当たり前に」として、「秋田わか杉っ子 学びの十か条」を掲げています。
中でも「家庭学習」に力を入れているのが印象的でした。自主学習を基本とし家族に点検してもらう復習中心の学習。
「家庭学習」が大切なのは非常によく分かるのですが、どのように各家庭で実施できるかが大事です。
この方法論についての掘り下げが今回はなかったので、別途調べるつもりです。

豊島区からは、今後の取組みとして以下の6点が三田教育長より発表されました。
・達成率
・学力の差は授業改善・家庭教育
・データを学習履歴として生かす
・二極化対策
・学び方の定着
・~っ放しをなくす(スタンダードは有効)

今回のシンポジウムの締めくくりで、豊島区と秋田県能代市との「教育連携」が成立。

秋田県能代市の取組みは非常に参考となる事が多いです。
学力偏重になってしまっては根本的な解決になりませんが、能代市の場合は学力偏重の教育のあり方ではない事が分かりました。
テストの点だけ上げたいのであれば、学習塾の方が長けているはず。
しかし、それだけでは本当の意味で役に立つ学問にはなりません。
人間としての幅を拡げる教育を展開する必要があります。

「当たり前のことを当たり前に」
これが実践できていれば、今の様な世相となっていないはずです。
更に言えばこの「当たり前」という尺度が人によって異なってしまっているのが現代日本の抱える根本の問題なのでしょう。
問題解決には日本人として守るべき尺度、すなわち規範を形成する教育が必要です。

秋田県能代市から学ぶべき事を学び、豊島区内の優れた事例を共有し、豊島区の教育をよりよいものにしていかねばなりません!