イケメンヴァンパイヤ ーナポレオン・ボナパルト 9話 | 蜜柑のブログ

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私が密かにハマってるアプリのまとめ。

自分が選択したそのままを載せてるので

ご了承ください。

(あとで確認次第、修正する予定です)

 ※申請した後にメッセ
 送ってもらってもOKです。

無言申請は無効になります。

アイ「『切り裂きジャック』の犯人は
   ―――修道士だ」

悠里「修道士?」

ジャン「・・・・・」

アイ「テオさんが情報を持って来て
   くれたんだ」

「警察側も“教会に身を置く者”って
 ところまでは特定できているらしい」

「それで、ナポレオンさん・・・」

アイザックの口調が一層険しいものになる。

ボナ「・・・・どうした?」

アイザックは大きく息を吸うと

真剣な眼差しのまま一息に告げた。

アイ「ガブがその情報を知っているかも
   しれないんだ・・・」

ボナ「―――なに?」

アイ「今日、警察内部に入り込んだ子供が
   いたらしい」

「年は10歳くらい。頭にはベージュの
 キャスケット」

ガブの姿が、一瞬で浮かんだ。

悠里「ナポレオン、その子・・・・
   ガブだよね」

ボナ「ああ―――」

アイ「すぐに警察の人につまみ出された
   らしいけど・・・」

ジャンヌさんの淡々とした声が、響く。

ジャン「“教会に身を置く人物”ということを
    耳に入れてしまった場合・・・」

「しらみつぶしに周辺の教会を
 回るだろうな」

ボナ「ああ、・・・・・その通りだ」

ジャンヌさんが警告の様に告げた

言葉が胸を埋め尽くしていく。




――肉親を見知らぬ者に亡き者にされた。

憎しみは心を黒く塗りつぶし、

人間自身さえも変える。

人の生き死にとはそういうものだ。





ボナ「――悠里」

意識を引き上げるように、

ナポレオンが私の名を呼ぶ。

「今から市街にある教会を潰していく」

アイ「・・・・っ教会の場所なら
   把握してる」

「俺がこの中ではこの時代に来て
 一番長いから」

ジャン「――アイザック。俺の馬に乗れ」

「ただし、振り落とされても知らんぞ」

アイ「・・・ありがとう。ジャンヌさん」

ボナ「お前は俺の馬に乗れ。――ほら」

大きな手が、真っ直ぐに差し出される。

その手を取った瞬間、腰を抱かれ

グッと引き寄せられた。

「――急ぐぞ。この前みたいにゆっくりは
 走らせてやれないが、いいな?」





選択)

もちろんだよ→選択

・・・っ、ちゃんと掴まってる

出来るだけ、急いで






「もちろんだよ。今は緊急事態でしょ?」

ボナ「・・ああ、ちゃんと掴まってろよ」

「行くぞ・・・・」






愛され度+2愛する度+4


・・・・・





――2頭の馬が並走していく。

まるで弓矢のような速さで。

気づけば空は深く暗い色に染まっていた。






アイ「――・・・ナポレオンさんっ!
   そこの角を右に!」

「そこにも教会があるはずだ!」

ボナ「了解・・・」

馬を止め私たちは走って、走って・・・

大きな教会の扉を押し開ける。




等間隔に並ぶ椅子、キラキラと光る

ステンドグラス、灯される蝋燭。

その景色の中に・・・、

ボナ「・・・・!」

ガブと、真っ白なローブを身にまとった

男性が立っていた。

悠里「・・・っ!」

ボナ「――待て、悠里」

ガブの元に駆け寄ろうとした私を

ナポレオンの手が制する。

「・・・行くな。手元を見ろ」

悠里「え・・・」

ナポレオンの視線を辿ると、

ガブの手で何かが鋭く光った。

よく見るとそれは鋭利な刃を持つ

ナイフだと気づく。

(・・・・っ本当に、復讐するつもりなの?)

遠くにいても、ガブの瞳が怒りに揺れて

いることがわかる。

そして――ただ、目の前の人物にしか

気持ちが向いていないのか、

私たちには気づかない。

その時、修道士の眼差しが私たちに

ゆっくりと向けられた。

修道士「・・・おやおや、招かざる客人ですね」

ガブ「・・・・?」

ガブのあどけない顔についた両目が

見開かれる。

ガブ「・・・・っ、ナポリ―ネ、悠里・・・」

悠里「ガブ・・・ッ、そのナイフを持ったまま
   こっちに来て」

ガブ「・・・それは、出来ない」

「こいつは、こいつは!俺の父さんを
 殺したんだっ・・・!」

アイ「・・・あいつが、確かに犯人だ」

「――首を、見て」

(首・・・・?)

そこにはくっきりと、“何か”で

絞められたような跡が残っていた。

アイ「アーサーさんが現場に行ったときに
   地面にまるで人を引きずったような
   血痕が残っていたらしい・・・」

「刺されたガブのお父さんが最期に
 修道士のフード部分を掴んだんじゃ
 ないかって」




・・・・・
 

 



修道士はもう逃げも隠れもしない

とでも言いたげにわざと首を見せるように

顔をあげる。

修道士の白に、首筋の赤い跡・・・

そのコントラストが不気味さを放つ。

修道士「・・・本当は殺すはずじゃあ
    なかったんですけどね」

「刺した後もそれはそれはしつこく
 食い下がってくるものですから」

「つい、とどめを刺してしまいましたよ」

アイ「・・・!」

ガブ「・・・どうして、父さんを狙った?」

「答えろ・・・・!」

修道士「どうして・・・?」

まるで永遠に解けないパズルを見た時の

ような表情で、修道士は首を傾げた。

「ただ偶然居合わせたから・・・ですね」

ガブ「・・・偶、然?」  

修道士「ええ、・・・俺にとって人を
    傷つけることは快楽」

「――ただの人生における暇つぶしなんです」

(・・・理解、できない・・・っ)

耳が言葉を拒絶しそうになり、

唇を噛み締める。

修道士は嘲笑いながら、小さなガブを

見下ろす。

修道士「ですが、君のお父さんはなかなか
    愉しませてくれました」

ガブ「・・・?」

修道士「石炭に煤けた顔を歪めて
    必死に命乞いをして・・・」

「愚かな人生とは、まさにこういうことを
 言うんでしょうねえ」

ボナ「・・・・・」

悠里「・・・っ」

ナイフを持つガブの手が、震える。

ガブ「・・・これ以上、父さんを侮辱するな!」

アイ「止めなくていいの・・・ボナさん」

ボナ「・・・・」

悠里「ナポレオン・・・っ」

ナポレオンはただじっと前だけを見据えて

いる。

感情が読めない瞳で――。

(どうして・・・っ)





・・・・・





助けたい――そう一番に願っていたはずの

ナポレオンが、動こうとしない。

その姿はまるで、事の成り行きを

静観しているように見える。

アイ「このままじゃ、ガブが人殺しに・・・」

「ナポレオンさん・・・・っ!」

ジャン「・・・ナポレオン、お前が行かないのなら
    ば・・・」

「――あの外道は俺が、始末する」

悠里「・・・!」

ジャンヌさんが腰に下げたサーベルを

抜こうとしたその時――、

ボナ「・・・あいつには、出来ない」

「・・・出来ねえよ」

(え・・・・?)

ナポレオンが呟いたのと、ガブがナイフを

振りかざし駆け出すのは同時だった。




ガブ「うぁぁあぁ・・・!」

修道士「・・・・!」

倒れ込んだ修道士にナイフが突き立てられ

ようとしたけれど・・・

ガブ「・・・・」

ガブの動きが、止まる、まるで

機械仕掛けの人形のネジが欠けてしまった

ように。

ガブ「・・・・っ」

ナイフを持つ手は震え、表情が歪む。

その時――、ずっと黙していた

ナポレオンが、声を発した。

ボナ「――どうした、ガブ。お前、
   そいつを殺したいんじゃないのかよ」

ガブ「・・・殺したい。けど・・・っ」

ボナ「・・・・・」

赤い絨毯の上をゆっくり歩き、

・・・ガブの肩をナポレオンが掴む。

ガブ「!」

ボナ「・・・下がってろ」

「――人の命を奪うっていうのは
 ・・・こうやるんだ」

音もたてずに、すっと剣が抜かれ・・・

修道士「・・・・っ!」

切っ先が喉に触れる。

ナポレオンの瞳は怒りも、迷いも

怯えも滲んでいない。

仄暗い瞳に映しているのは

ただ目の前にいる標的だけだった。




おお、これはカッコええ。










「今、俺が一歩前に踏み込めばこいつは
 一瞬であの世行きだ」

「一歩じゃない、息をしただけで・・・・
 喉が切れてしまいそうだ」

ボナ「ほら、こいつのことが憎いんだろ?
   お前の親父を葬り去った奴だ」

「挙句、親父の死を嘲笑った」

ガブ「・・・っ」

ボナ「頼めよ。“殺してください”・・・って」

(・・・この声は、誰の声?)

(――この人は、誰?)

肌を刺すような威圧感、氷のような瞳。

息も――出来なかった。




・・・・




剣を握るナポレオンだけが――

この世で息をしているように見えた。

ボナ「さあ、どうする。ガブローシュ」

ガブ「う・・・っ、・・・」

ボナ「答えろ・・・!」

悠里「・・・っ!」

アイ「・・・・!」

ナポレオンの怒りが滲んだ声に

ガブは手にしたナイフを落とし・・・

まるで物事を拒絶するように

視線を伏せる。

ボナ「・・・こっちを見ろ、目を逸らすな」

ガブ「・・・・っ」

ボナ「良いか。・・・己自身で手を下すことも
   殺してくれと願うことも出来ない
   小物が刃物を握るもんじゃない」

「命を奪う気なら、こいつの命の一生を
 背負うつもりで殺せ」

ガブ「・・・・!!」

修道士「・・・・っあははは」

怯え切っていた修道士が、渇いた笑みを

こぼす。

修道士「そんな大層なことを言って、お前だって
    俺を殺せないだろう?今、手にしている
    剣だってお飾りだ」

「人を殺したこともない男に出来ることなんてっ」

ボナ「――・・・人の命は散々この手で
   奪ってきたが?」

修道士「・・・見え透いた嘘をつくな」

ボナ「嘘であればどれだけ良かっただろうなぁ・・・」

アイ・ジャン「・・・・」

ボナ「この肩には、数えきれない者の命が
   乗っている。・・・全て、俺がしでかした
   代償だ」

修道士「・・・・な、なにを」

「だからこそ、こいつが望めば俺はお前を
 ――容赦なく殺せる」

「その覚悟があって今、剣を向けているの
 だが・・・?」

修道士が顔をひきつらせたその瞬間・・・



テオ「ここだ・・・!」

教会の扉が開き、一斉に人が雪崩れ込んで

くる。

警察「警察だ!そこにいる修道士を
   殺人容疑で捕らえろ・・・!」

飛び交う喧噪、行き交う人――

まるで映画のように物事が収束していく。

修道士は捉えられ、ガブが参考人として

連行された。





アイ「・・・警察を連れtてきてくれて
   ありがとう、テオさん」

テオ「いいや、もっと早く呼べれば
   良かったんだが・・・」

呆然と立ち尽くしていると、

目の前に影が落ちた。

ボナ「・・・・」

悠里「ナポレオン・・・っ」

ボナ「おい。お前、顔色悪いが・・・――」

頬に手を伸ばされたその瞬間・・・

悠里「・・・っ」

身体がびくっと震えた。

ボナ「・・・・」