眠らぬ街のシデレラ 廣瀬遼一編 「確執の壁」 | 蜜柑のブログ

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自分が選択したそのままを載せてるので

ご了承ください。

(あとで確認次第、修正する予定です)

 ※申請した後にメッセ
 送ってもらってもOKです。

無言申請は無効になります。

遼一さんが南原監督からの依頼を

引き受けてから、数週間が経過した。

私はと言えば、政治部に移りようやく

仕事にも慣れて来たところだ。

(日本だけでなく海外の政治にも視野を
 広げて書きたい)

(編集長にそう言ったら、快く承諾 
 してくれたけど)

実際、まだどんな記事を書くのかは

具多的に決まっていない。

しばらくは、ネタを探すところから

始めなければなりそうだった。

(よし、できた。遼一さんも
 そろそろ打ち合わせから帰ってくるよね)

遼一さんは昼間から、監督との

打ち合わせに出かけている。

食事を作り終えたところで

ちょうど玄関のドアが開く音がした。

 

 

 


遼一「ただいま」

悠里「おかえりなさい!
   いいタイミングでした」

遼一「おっ、今日はカレーか」

悠里「栄養が取れるように、野菜を
   素揚げしてたくさん入れましたから」

遼一「へえ。楽しみだな」

早速カレーとサラダを盛りつけて

食卓に並べる。

庶民的な食事しか作れないけど

遼一さんはいつもおいしそうに

食べてくれた。

悠里「打ち合わせ、進みました?」

遼一「まあ、この前に比べたらだいぶ
   進んだな」

悠里「今回はすごく打ち合わせが
   多いんですね」

監督との打ち合わせだけでも

すでに10回を超えている。

他のスタッフを交えた打ち合わせも

入れると、かなりの回数だった。




・・・・・




遼一「普段はこんなことないんだけどな。
   今回のはちょっと筆が進まない」

悠里「それって、書くのは気が進まないから
   とか・・・?」

遼一「いや、単純に普段とは違うジャンル
   だからでしょ」

「調べることも多いしな。その分
 時間がかかってる」

「監督もそこは予想してたみたいで
 いろいろと協力してくれてるけどな」

悠里「そうですか・・・」

(遼一さんが詰まるなんて
 珍しいな・・・)

(今回の脚本)

(黒神さんから『サスペンス』って
 いうのは聞いたけど)

悠里「ちなみに、どんなストーリーの
   映画なんですか?」

遼一「ざっくり言うと」

「主人公である青年が過去に犯した
 殺人と愛する女との間で揺れる話」

「過去を背負って独りで生きていこうと
 思った主人公が、愛する存在を得て」

「徐々に気持ちが変化していく・・・
 っていう流れなんだけどな」

悠里「そういえば、黒神さんが愛と犯罪
   政治が絡む話だって言ってましたね」

遼一「ああ。主人公の父親が政治家なんだよ」

「ライバルの秘書に父親が殺されそうに
 なってるところを見た主人公が」

「相手を殺してしまう」

「そしてその殺した相手が」

「実は愛する女性の父親だったってのが
 わかって、葛藤する」

悠里「なるほど・・・」

遼一「ちょっと純文学に似たような感覚が
   あってな・・・」

「いつまでも苦手意識を持ってても
 仕方ないってわかってるんだけどねぇ」

遼一さんは、純文学は自分の内面と

対峙してさらけ出し

認めなければならないと言っていた。

(今回の主人公は、政治家の息子・・・
 遼一さんと同じ立場だ)




・・・・・



(今回の主人公は、政治家の息子・・・
 遼一さんと同じ立場だ)

だからこそ、遼一さんにとっては

純文学と似た感覚なのかもしれない。

悠里「あ・・・私に、使える政治ネタがないか
   聞いたのって」

遼一「そ。なんかのヒントになればと
   思ったんだけどな」

悠里「だけどそういうことなら」

「お義父さんに聞いてみた方がいいんじゃ」

「私よりずっと、政治に詳しいですよ。
 当たり前ですけど」

遼一「あのカタブツにこんなこと聞いても
   絶対答えてくれないでしょ」

「それどころか」

「エンターティメントのために政治を
 利用するな、とか言いそう」

悠里「うーん、それは・・・」

遼一「とは言え、ここ最近ずっとあの
   脚本のことばっかり考えてるから」

「そろそろリフレッシュしたいわ。
 奥さん、付き合ってくれる?」

悠里「何するんですか?」

遼一「まず飯食った後風呂入って
   ベッドの中で気分転換」

うわっ、遼一節炸裂。

悠里「!!!」

意地悪に笑う遼一さんにベッドの中での

ことを想像して、急激に頬が熱くなる。

(でも・・・)

悠里「・・・いいですよ」

遼一「おや、どういう風の吹きまわし?」

照れながらも承諾する私に、遼一さんが

軽く目を見張る。

悠里「その・・・そういうので気分が
   転換になるならと思って」

「遼一さんが煮詰まるのって
 珍しいですから」

「私にできることがあるなら、なんでも
 したいんです」

遼一「うちの奥さんはダンナさん思いだねぇ」




・・・・・・




「私にできることがあるなら、なんでも
 したいんです」

遼一「そういうことなら、風呂入る前に
   軽くいただいちゃいましょうか」

おい、そんなこと言ったら
載せられないって!


悠里「い、いえ!食べてすぐっていうのは
   ・・・!」

論点そこ?

遼一「食後の運動にちょうといいでしょ」

「奥さんも十分その気みたいだし?」

悠里「なんか、私のほうがすごい張り切ってる
   みたいに聞こえる・・・!」

いや、今までの流れからして
充分そう聞こえるけど。


遼一「そうそう、明日仕事が終わったあとで
   いいから、ちょっと出れるか?」

「大丈夫そうなら、また迎えに行くから」

悠里「いいですよ。今はネタ探し中で
   あんまり忙しくないんです」

「異動したばかりだから、簡単な記事を
 任せてもらって慣れていく感じなので」

遼一「なら今日と明日は、俺の気分転換に
   付き合ってもらおうかね」

(気分転換か・・・確かに、仕事のことを
 忘れて出掛ければ)

(少しはリフレッシュできるかも)

(遼一さんとならどこでも嬉しいから
 楽しみだな)





翌日の仕事が終わった後

遼一さんに連れてこられたのは・・・

(こ、こんな高そうなジュエリーショップに
 なんの用が・・・)

(ひええ・・・ゼロがふたつくらい多い!)

悠里「遼一さん・・・落ち着かないから
   早く用事済ませて出ましょう」

遼一「それは無理だな。結構時間かかると
   思うぜ?」

悠里「何を買うんですか?」

遼一「婚約指輪」

悠里「!」




・・・・・




「何を買うんですか?」

「婚約指輪」

「!」

予想して伊中田言葉に、思わず息を呑む。

遼一「何よ」

悠里「だ、だって・・・なんか
   こういうのって」

「よし、買いに行くぞ!っていう
 心構えをしてからのイメージがあって」

遼一「言うと変に構えそうだから、あえて
   イキナリ連れて来たの」

悠里「見透かされてる・・・」

(それにしても、どもすごい値段・・・)

(普段からつけるものだし、もっと
 リーズナブルなものでも・・・)

遼一「先に言っとくけど、こういう場面では
   節約しようとするなよ?」

うわ、言われてみたいわ。

「一生に一度のもんだし、ケチっても
 仕方ないからな」

悠里「うっ・・・・先回りして言うなんて
   ずるいですよ!」

遼一「やっぱりそんなこと考えてたのかよ」

悠里「だって、いつも身に着けておくもの
   ですから・・・そんなに高くなくても」

遼一「いつもつけておくからこそでしょうよ」

値段にハラハラする私を置いて

遼一さんが店員を呼び止める。

指輪を見せてくれるよう

話しているらしい。

(そういえば、気分転換に出かけるって
 言ってたけど・・・)

(・・・指輪を選ぶのが、気分転換?)

遼一「どうした?気になるのあったか?」

悠里「あ、えーと・・・」