魔界王子と魅惑のナイトメア 本編―  ルウ編 honey end | 蜜柑のブログ

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私が密かにハマってるアプリのまとめ。

自分が選択したそのままを載せてるので

ご了承ください。

(あとで確認次第、修正する予定です)

 ※申請した後にメッセ
 送ってもらってもOKです。

無言申請は無効になります。

なんとなくソワソワするブックスに

私は借りていた『奇想天外図鑑』を

差し出す。

悠里「これ、どうもありがとう」

ブック「おっ、タイミング良かったな」

「実はそれ、かなりの極小部数で
 改訂版が出たんだよ」

悠里「改訂版・・・?」

ブック「ああ、ちょうど今日持って来てる。
    ほら、これ」

悠里「見てもいい?」

ブック「早速だな。気になる花が
    あるのか?」

悠里「うん、ちょっと」

受け取った本を開く。




(『名もなき花』・・・の、ページは
 たしか中盤あたり――あった!)



『名もなき花』

別名『真実の愛の花』


開花条件:深く強い真実の愛を互いにだけに
向けて通じ合った二人が、ともに栽培をしていること




悠里「―――!」

(真実の愛で通じ合った二人が
 ともに栽培・・・)

私はあの黒い蕾に

水をやったことを思い出す。

ブック「その花、すごいよな。
    でも幻の花って言われてるくらい   
    手に入らないらしい」

という花が学園内にあるで。
しかも咲いてるで。


悠里「そうなの?」

ブック「ああ、残念だ。僕も彼女と
    育てたいんだけどな」

いたんだ彼女。

悠里「えっ、ブックスて彼女いたんだ」

ブック「いやぁ、実は本が恋人だと
    思っていたんだけど、
    ついこの前できたんだ」

悠里「おめでとう!この学院の人?」

もしかしなくても、もしかする?

ブック「うん。それで今日紹介しようと
    思って――」

「あっ、来た来た!」

嬉しい気持ちでブックスが

手を振る方に視線をやると・・・・

えっ、いつこんなカワイイ彼女捕まえたん。


 






女子生徒「悠里様、こんにちは」

(ルウ様倶楽部の!?)

え、そうだっけ。

ブック「彼女が僕の恋人、フェイムだ」

フェイ「実は悠里様を見守っているうちに
    たまーに一緒にいる彼のことが
    気になってしまって」

たまーに一緒にいる、ね、ああね。

「ちなみに、ルウ様倶楽部は
 引退しました。
 個人の意思を尊重する倶楽部ですから」

ああ、そうかそうか。

思わぬところで縁が繋がったらしい。

(ふたりとも、幸せオーラが出てるな)

ブック「悠里はさながら恋のキューピッドだ。
    感謝のしるしとして、その改訂版の
    図鑑はプレゼントするよ」

悠里「えっ・・・希少本なのに、いいの?」

ブック「ずっと本だけが友達だった。
    でも悠里のおかげで、現実の
    人間と話すのも悪くないと思えた」

「悠里がこの学院に転入してきてくれて
 僕は良かったと思ってる」

フェ「私もです!悠里様、これからもブックスと
   ルウ様、そして私とも仲良くしてくださいね」

ふたりの言葉と笑顔に

胸がほんわかあったかくなる。



・・・・・



(学院委来たばかりの頃は、
 『誰にも歓迎されてない』って
 言われたくらいだったのに・・・)

悠里「ありがとうブックス、フェイムさんも。
   私こそこれからも仲良くしてください」

ルウ「僕の恋人は、ここにいましたか」

ぬらっと出て来るなよ。

悠里「あっ、ルウさん」

フェ「ルウ様、こんにちは」

ルウ「こんにちは。彼女を迎えに来ました」

悠里「私たち、今から花がたくさんある場所に
   行くので、お祝いの花を摘んできます」

フェ「まあ、素敵だわ。いいのかしら?」

悠里「もちろん。ふたりにはお世話になったし」

ルウ「うんと綺麗な花を見つけてきますね」

そう言って、ルウさんはさりげなく

私の手を握った。

私もはにかみながら、優しいぬくもりを

握り返す。

ルウ「さあ、そろそろ行きましょうか」

悠里「はい。ブックス、フェイムさん、
   またね」

ブック「またな」







視界いっぱいの花を楽しみながら

好きな人の、好きなものを探すのは

本当に楽しい。

ルウ「キミのお手製のおにぎりは
   とってもおいしいですね」

悠里「それ、連続で4個目です」

ルウ「え?」

ランチバスケットの中身は

人差し指と親指で作る輪っかくらいの

ミニおにぎりだ。

悠里「ルウさんが、鮭のオニギリを
   食べるの」

その世界にも鮭がおるんや。ほう。

ルウ「あ・・・無意識でした」

中身の具は4種類。

鮭、おかか、シーチキン

味付けそぼろ肉。

えー、マグロもいるー。

最初にひとつずつ味見してから

ルウさんは4連続で鮭を選んだ。

悠里「スキなんですね、鮭」

ルウ「ふふ、はい。好きですこの味」

「いや・・・大好き、かもしれません」

悠里「やった。ルウさんが好きなもの
   またひとつ見つけました」

ルウ「一番好きなのは、キミですよ」

おう、ストレート。

悠里「っ・・・!」

(ここであからさまに照れ顔を見せたら
 いつもみたいにルウさんのペースに
 なっちゃう)

正直それでも良いのだけど

たまには私だって反撃したい。

(なるべく平静を装って・・・)

「私も、ルウさんが一番好きです」

ルウ「っ・・・・」

ほら、照れてるぞ。








(わ・・・っ)





・・・・





結局、私の顔も熱くなって

ふたりして赤い顔で数秒見つめ合う。

・・・何してるんだろう、私たち。

ふたり「・・・ぷっ」

あははっと笑顔前回で声をもらした。

ルウさんの手が伸びて来るのに

身を任せる。

後ろからギュッとハグだ。

こめかみにキスをされて

肩をすくめると、

耳にもチュッとキスされる。

溺愛されとるなあ。

悠里「っ・・・くすぐったいです」

ルウ「くすぐったがるキミが
   可愛いんです」

(だったら、私も――)

ルウさんの腕をむんずと掴み

少し離して身動きをした。

座ったまま、向かい合う体勢になる。

ルウ「おやおや、僕の大好きな人の顔が
   よく見えます」

えっ、これってシラフ?

悠里「この体勢は、私もルウさんの
   くすぐったがる顔を見るためですよ?」

ルウ「え――」

悠里「えい!」

腰のあたりをこしょこしょとくすぐる。

ルウ「っ・・・ははっ、あ、ダメですそこ
   はは!」

「っ・・・反撃、します!」

悠里「わ!あははっ」

 

・・・と、1分くらい擽り合って





ルウ「はあ・・・笑いました」

悠里「笑いましたねえ。あはは」

優しく抱き寄せられて

ルウさんの肩口に頭をあずける体勢は

暖かいし、楽だし、幸せだ。

ルウ「すごく楽しい、こういうの」

(本当に楽しそうで、嬉しい)

(たまーに敬語がとれるところも
 好きだなぁ)

「最近、考えているんです」

悠里「何をですか?」

ルウ「キミの全部に、キスしたいなって」

悠里「っ・・・!急に大真面目な顔で
   何言ってるんですか」

ルウ「ダメですか?」

悠里「こっ、ここではダメです・・・」

ルウ「ここじゃなかったら?」

悠里「えっ?」

ルウ「ここじゃなかったら、いい?」

悠里「・・・・ふたりきりの、密室とかなら」

ルウ「やった、楽しみです」

このまま飛んで帰りそう。

(この笑顔・・・)

何をされても許してしまいそうで

好きだけれどちょっと困る。

悠里「エルなんのドラマ見たんだろう・・・」

なぜここでエルが。

ルウ「ふふ。教えてくれますか?」

(キスの意味・・・)





・・・・
 

 

 



「私もはっきりとは覚えてないん
 ですが、確か・・・」

「手の上なら、”尊敬”で」

ルウ「失礼します」

悠里「え――」

指先を絡め取られ

皮膚の薄い箇所に静かなキスが落ちた。

肌がじわりと痺れて直後には

熱が疼く。

ルウ「・・・次は?」

(これ、もしかして言ったところに
 キスする流れ・・・?)

悠里「次は・・・頬なら”満足感”のキス
   だったと思います」

ルウ「ほっぺ、しますね」

悠里「んっ」

ルウ「他には?」

悠里「っ・・・あと覚えているのは・・・」

腕なら、欲望のキス。

唇なら愛情のキス。

(・・・この流れで言うのは恥ずかしい)

悠里「・・・忘れちゃいました」

ルウ「じゃあ、僕たちで決めちゃいましょうか」

悠里「えっ」

ルウ「まず、首筋は『大好き』のキス」

悠里「ん、・・・っ」

ルウ「耳もとは『大好き』のキス」

悠里「っ・・・」

ルウ「額は『大好き』のキス」

違う、額は『友愛』だ。

悠里「・・・・っ」

ルウ「瞼は、『大好き』のキス」

全部同じじゃんかwww

悠里「っ・・・あはは、全部大好きじゃ
   ないですか」

ルウ「だって、大好きなんです」

――その時、ふいに。





お、おおおお!これは良き。












風が吹いて、花びらが舞う。

ルウさんは私の頬に手を添え

愛しげに見つめてくる。

ルウ「キミと出逢えて、本当に良かったと  
   思っています」

こういうまっすぐな想いを

ルウさんはふとした瞬間に

とても素直に伝えてくれる。

(その度に、私も好きが積もっていく)

悠里「私も、ルウさんと出逢えて   
   本当に良かったです」

ルウ「うん」

花びらに囲まれた笑顔を見て

改訂版図鑑のことを思い出した。

私は『名もなき花』の真実を

ルウさんに話す。

「深く強い真実の愛を、互いだけに
 向けて通じ合った二人・・・」

悠里「はい。その条件が揃って初めて
   咲くんだそうです」

ルウ「・・・なるほど」

「あの魔法の世界から戻った時
 ふたりの気持ちが、深く強いものに
 なったんですね」

悠里「はい、おそらくは」

ルウ「納得です。教えてくれて
   ありがとうございます」

「――では、改めて」

「これからもずっと、僕と心を
 通わせてくださいね」

(そんなの、当然――)

悠里「はい、これからもずっと」

前世から続く、魂の恋を。

ルウ「心から、キミを愛しています」

悠里「私も、ルウさんを愛しています」

ルウ「ふふ、嬉しいです」

「・・・ところで」

悠里「?」

ルウ「そろそろ、唇に『大好き』の
   キスをしても?」

(そういえば唇にしてなかった!)

悠里「あっはは。はい、もちろん」

 

 



・・・・

 

 



お互いの愛情を確かめ合うみたいな

触れるだけの優しいキス。

ルウ「・・・――」

(ルウさんとのキスは、
 ずっとしていたくなる・・・)

ルウ「ふふ。ずーっとこうしていたい
   ですが」

(あ、同じ気持ち)

「お祝いの花を、摘まないとですね」

(そう思うのも、同じ)

そして私は、ルウさんが周囲にいる

たくさんの善人たちとの絆を

大切に思う言動が嬉しいのだ。

悠里「ブックスとフェイムさん、
   喜んでくれるといいですね」

ルウ「ええ。――それと、実は明日から
   転入性が来るんです」

えっ、もう最終回なのに?

「彼に贈る花も、一緒に選んでください。
 きっと喜びます」

(転入生・・・ルウさんがわざわざ
 花を贈る人で、私が一緒に選ぶと
 喜ぶ人―――)

悠里「もしかして、ルナスっいう名前ですか?」

ああ!

ルウ「はい。仲良くしてあげてください」

「・・あ、やっぱり、あまり仲良くしすぎては
 ダメです」

(素直で可愛い嫉妬も、心があるからこそ、
 だよね。ふふ)

幸せな笑い声がこぼれた。

風が大地を撫でて、植物たちは歌うように

葉擦れの音をひびかせる。

前世の魂に導かれ、真実の愛で

結ばれた私たちを――・・・・。

美しい幾千、幾万もの花が

祝福してくれているのを感じた。




endー