なんか時々別人に見えるときがある。
裏表があるとかじゃなくて、一緒にいるひとによって出てくる面が違うみたいな。
なんでそんなこと知ってんの、みたいな情報持ってたりするし。
なんでそんなとこいんの、みたいな場所にいたりする。
国境など知らずに空を飛ぶ鳥のようだし、自由で気まぐれな猫みたいでもある。
いや、やっぱり両方かな。
場所によって、傍らに立つ人間によって、『彼女』は鳥になったり猫になったりする。
「あれ、久しぶり。え、なに? 私の顔になにかついてる?」
おれに気付いた『彼女』が、いつも通り軽やかな足取りで近づいてくる。
「ん、鳥とか猫とかに似てるなと思って見てた。っていうか、両方っぽい」
「鳥と猫の両方? げっ、たしかそういう童話あったよね。どっちからも嫌われるやつ」
「イソップ童話のコウモリのこと? そういう意味で言ったわけじゃ……」
否定しかけて、ふと思い出したから口にする。
「あ、でもたしかあれって似たような別のパターンもあって、そっちではコウモリが上手くピンチを逃げ切れたり、他の動物たちの危機を救ったりもするんだよ」
「マジか。格好良いじゃん。あっ課長発見。私、あのひとに話しあったんだった。じゃ、またね」
ぱっと横を見たかと思うと、次の瞬間には『彼女』は近づいて来たときと全く同じ軽やかさで、おれの隣りから去って行く。
鳥とか猫とかじゃなくて、もはや風の勢いだな。
そしてふと『彼女』に話した寓話に書かれていた教訓を思い出した。
――状況に合わせて変化できるものは、絶体絶命の危機さえも回避する力を持っている。そしてその力を持つものは、ほとんど例外なく、いつまでも同じところに留まってはいないのだ。
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双子座さんの short story でした。
(short story を書くのが久しぶりすぎて、
「急に何がはじまった?」ってなってしまった
お客様もいると思うのですが、
私は時々趣味で各星座さんを主人公にした
小説を書いているのです。)
双子座さんを思い描くと
いつも鳥か猫のイメージがあって、
どっちで書こうかなぁと考えた結果
両方だよなぁってことで
今回のような話になりました。
コウモリの話とか教訓の節は、
うろ覚えの知識+私の適当解釈で書いたので
あんまり信じないでください。
wikiでは、こんな感じで書かれてます。
訳本によっては
「状況に合わせて豹変する人は、
しばしば絶体絶命の危機をも逃げおおす、
ということを弁えて、
いつまでも同じところに留まっていては
ならない」
という教訓にしている。
出典:フリー百科事典『ウィキペディア』
「いつまでも同じところに留まってはいない」
という点では、射手座さんも同類なのですが
射手座さんの場合はともすると、
一度旅立ったらもう二度と帰ってこないかも
知れないなぁ、くらいの雰囲気があります。
それに対して双子座さんはもうちょっと現実的。
複数の場所を行き来して、
自分と一緒に情報を渡したり受け取ったり
「橋」のような役割を果たすひとです。
自分の興味を満たしつつ
みんなの利益も無意識下では考慮して動いている
ようなイメージです。
自由で気まぐれに見えて、実は秩序がある、
そんな絶妙なセンスと
自分の望む場所にはけろっと混ざってしまえる
チャーミングさを持っているのが
私の知る双子座さんです。
風星座仲間の short story はこちら。
■天秤座さん
■水瓶座さん
森下 夕