みんなでお喋りをしている昼休み。

 

ぽんぽんとリズムよく交わされる会話をみんな楽しんでいるのに、ひとりだけいつも、ずれたタイミングでずれた発言をするひとがいる。

 

その度にみんなが「え?」とちょっと戸惑った表情。

 

それが繰り返されていくうちに、次第に雰囲気が変わってくる。

 

数名はちらりと目配せをし合い、誰かは小さなため息を吐く。

 

自分に向けられるうんざりした眼差しに、あのひと自身は気付いているのかいないのか。

 

私は何だかひやひやしてしまう。

 

空気が少しずつ少しずつ淀んで行くよう。

 

そんなとき「彼女」の言葉がその淀みを払う。

 

あのひとのずれた発言すら上手に拾って、軽妙な話術でみんなから笑顔を引き出して。


いつの間にかこ最初の楽しい雰囲気に戻っている。

 

「彼女」はいつもそう。

 

落後者も悪者もつくらない。

 

「彼女」はまるで――バランサーだ。

 

空気が偏ってガシャンと壊れてしまうのを防いでいる。

 

当たり前の様子で。さらりとした言葉で。そんなことしてるつもりなんてありませんよって顔で。

 

「彼女」はどこまで自覚してやっているのかな。

 

いつか「彼女」と話してみたい。

 

大勢の集まりの中ではいつもバランサーとして機能しようとする「彼女」が、1対1で向き合ったとき、どんな姿を見せてくれるんだろう。

 



 

::*:::*:::*::

 


天秤座さんの short story でした。

 

「彼女」はもちろん天秤座ですが、

語り手の「私」も多分、天秤座。

 

天秤座さんは空気を読むのが得意で

その場の雰囲気を作ることに長けています。

 

「あいつ浮いてるよな」みたいな

ひとが出ないように

サポートしてあげたりもします。

 

それはもちろん天秤座さんの

公平さ故ですが、

天秤座さん自身がそういう空気に

耐えられないからっていうのもあります。

 

誰かが浮いてたりすると、

ひやひやしちゃうのです。

 

ガシャーンと空気が壊れるのが苦手で、

ついバランスをとってしまう。

 

ガシャーンって壊れることも

時には必要って

頭ではわかっているのですけどね。

 

でも、選ぶ余地があるのなら

あえて遺恨を残しそうな

「ガシャーン」の道を選ばず、

なるべく誰かを傷つけない、

無闇に何かを壊さない、

そんなスマートに物事を進める方法を

選択し、

それを実際上手くやり遂げちゃうのが

天秤座さんなのです。

 

もしそんな天秤座さんが

「ガシャーン」をあえて選ぶとしたら、

普段人当たりの良い天秤座さんの中に

静かに、けれども確かに存在する、

公正さや正義にもとるような状況に

あるときかも知れません。

 

いつもさらっとスマートに

誰に対しても人当たり良く振る舞う

天秤座さんですが

正義の女神 テミス の天秤となり得る、

正しさを見据え、

正義を実行する資質を内包しているのです。

 

 



 

というわけで。


「星読学院」と同じく

またもや唐突にはじまった

「short story」シリーズ。

 

「星読学院」が「イラストで見る星読み」

であれば、

「short story」は「物語で知る星座」

がコンセプトです。

 

とか言ってみましたが、単なる趣味です。

 

星読みブログに short story など

誰も待っていない気がしますが、

趣味なので!

趣味なので!!(2回言ってみた。)

これからも short story が思いつく

星座さんからランダムに

書いていこうと思っています。

 


雑多なブログで恐縮です。

 

(私もこのブログどこに行くんだ、って

ちょっと思ってます。)

 

いまは試行期間みたいなものなので

この雰囲気に付き合っていただけたら

とても嬉しいです。



森下 夕