犬死にも劣る生 | 紫源二の啓示版

犬死にも劣る生


 
 
 ここ数週間は
 
 真夏の猛暑だというのに
 
 春咲く花の花粉が
 
 死んで固まったような碧い石を
 
 必ず飲んで眠りに就く
 
 体表は23°に
 
 ひんやり冷たく
 
 まるで死体のように冷やして
 
 
 
 静かなことは最大の恩恵
 
 自分の思考に翻弄されなければ
 
 静寂はどこまでもどこまでも深く沈んで行き
 
 光も音もない深海の中
 
 漂うことができるのに
 
 ほんとうは
 
 明日が来ないことが
 
 一番いいことなのだけれど
 
 必ず明日を予感してしまう
 
 野の鳥たちもそうだろうか?
 
 明日のためにねぐらに帰るのだろうか?
 
 それとも太陽が地平線の向こうに消えて
 
 一日が死んでしまったから
 
 自分たちも死という眠りに就くのだろうか?
 
 
 
 朝は甦りだ
 
 小鳥たちにとっての朝は
 
 生命の始まりを祝福する歌
 
 
 
 人間だけが絶望している
 
 
 歯車がゆっくりと回転をし始め
 
 ベルトコンベアーが
 
 軋みながら動き出す
 
 
 ネクタイで首を絞めつけて
 
 自分を殺し
 
 ロボットに成りきる
 
 社会から与えられた役割
 
 自分本来の役割が分からないから

 とりあえずロボットになるしかない

 そうしなければ
 
 不安でたまらない
 
 自分の生命は
 
 だれから与えられたものか分からないから
 
 
 自分を生んでくれた
 
 母に感謝して
 
 母のためにだけ働くならいい
 
 そうすれば母は喜んでくれるだろう
 
 
 でも、それでは潰されてしまう
 
 そんなに弱いだけの人間は
 
 世の中に潰されてしまう
 
 
 それがこの世とあの世の違いだ
 
 
 あの世には理想があり、慈悲があり、愛がある
 
 
 でもその理想を、この世で実現することはできない
 
 
 あの世の理想は踏みつけにされ
 
 弱い者は強い者に勝てないから
 
 いつまでたっても楽園は地上に実現されない
 
 
 この世が作った仕組みは
 
 天国からはほど遠い
 
 セーフティネットに引っ掛かるのは
 
 変形した雑魚ばかりで
 
 なんの役にも立たない
 
 市場でも売れないし
 
 かまぼこの原料にすらならない
 
 それでも網に引っかかったら
 
 生簀に入れて、殺さない
 
 殺せない
 
 
 そんな生にどんな価値があるのか知らないが
 
 殺しても商材にもならなかったら
 
 生かしておくしかない
 
 犬死にも劣る生