美夏はデパ地下で限定のお菓子を物色していた。
相変わらず休日の百貨店は混んでいる。
最近ではインバウンドの旅行客も大勢訪れ、大きなスーツケースを持って混雑の中ウロウロとしている。美夏は予め目をつけていたお菓子のコーナーに行ったが、そこには列を作って会計を並んでいる人が大勢いた。
「わぁ、こりゃダメだ、、、」と小さなひとりごとを言って諦めた。
ならば、いつものお気に入りのお店にしようと予定を変更した。
いつもの店もそれなりに混んでいるので並んだ。
目当てのお菓子は決まってある。
レモンケーキと米粉を使った限定のロールケーキを買って優子の家へ急いだ。
梅田から阪急電車に乗り、西宮北口で今津線に乗り換え逆瀬川へ。いつも優子の家へ行くルートだ。今津線に乗り座席に座った時にスマホが震えた。カバーを開けて確認すると優子からのLINEのようだ。
「ごめん美夏、ちょっとトラブル、、、。父親が交通事故に遭い今病院。大したことはないんだけど今から検査をするので少し遅くなる。良太はゴルフに行ってるけど美夏が来る頃には帰ってると思うから家で待ってて、、、ホントごめん、、、」
あらら、、、大丈夫かな???
「美夏です。全部了解。お父様の具合大丈夫?また落ち着いたら連絡して。遠慮なくお家で待たせてもらいます。さつきちゃんは?一緒なの?」
「ごめんね、父は全然大丈夫なんだけど、歳いってるからね。念のため色々と検査しようと、、、。さつきは一緒でーす♪」
ま、突然の出来事なので仕方ない、、、。
でも、良太と家で過ごす、というのが気になった。
電車は逆瀬川に着いて美夏はいつもの道を歩いていた。何度通った道なので変わらぬ家の景色が美夏の気持ちを安心にさせる。
しかし角の家が無くなっていた。家の建物が無くなって更地になっていた。不動産屋の看板が立ち(売土地)と書いてある。この辺って高いんだろーなーと思って横を通り過ぎた。
優子の家が見えた。ガレージに車が停まっていたので良太は帰っているのだろう。
家の玄関横のインターホンを押した。何度か押すがスピーカーから何も聞こえない。
さらに何度か押したが反応は無い。
あれ、帰ってるんじゃないの?
そっとポーチの扉を開けて中に入った。玄関ドアのノブを下に押すとどうやら鍵は掛かっていない。えっ?物騒な家、、、。そして玄関のドアを開けた。ゆっくり開けて顔が入るだけのスペースを作った。そして、「こんにちわ~美夏です、、、」と言うが反応がない。「すいませーん、」なぜすいませんかわからないが、これはとっさに出た言葉だ。
「すいませーん、こんにちわ~~~」変な挨拶だ。
もー、居ないの?誰も居ないの???その時だった、バスタオルを腰に巻いて良太が奥から出てきた。
「あ、ごめんごめん、ちょっとシャワー浴びてて、、、」上半身は裸である。
「あ、やだ、、、」と美夏は横を向いた。
「あ、ごめんごめん、、、」良太はもう一度謝った。
「優子から連絡あって、何かちょっと大変そうで、、、」
引き続き美夏は横を向いている。
「そーなんだよ、優子のお父さんが交通事故に遭ったみたいって。俺も電話が掛かってきて慌てて風呂も入らずに飛んで帰って来たんだよ。そうしたら少しして心配ないから家で美夏の相手をしてて、、、てね。」続けて、
「あ、上がってよ。さあさあ、リビングで待ってて、」と言い美夏をリビングに案内した。着替えてくると良太は2階へ行った。
「ふぅ~~~、びっくりした。あんな格好で出てこないでよ、」少し大きな声の独り言だった。
美夏はデパ地下で買ったケーキをとりあえず冷蔵庫へ入れた。
キッチンには作りかけの料理がそのままにしてある。今夜の準備をしていたんだろう。
その時に連絡があり、急いでさつきちゃんと出かけた様子が伺える。
冷蔵庫を開けるときに失礼します、、、と自然に声が出た。
しばらくすると良太が着替えをしてリビングに降りてきた。キッチンに立ている美夏を見て少し驚いた。
「あ、違うの、、、買ってきたケーキを冷蔵庫へ入れようと思って、、、」と慌てた言い方になった。良太は優子に電話を入れ今の状況を聞くという。時間は4時半を回っていた。リビングのソファで良太は優子へLINEを入れた。すると直ぐに電話が掛かってきた。
「あ、どう?うん、うん、ああ、なるほど、、、うん、うん、あ、来てるよ。替わろうか?」とスマホを片手に美夏がいるキッチンへ来た。美夏は作りかけの優子の料理を想像してしばし見つめていた。
「替わってって、、、」良太が美夏に言いスマホを渡した。
「もしもし、優子?どう具合は?お父様、大丈夫?」少し心配な様子で聞いた。
「あ、美夏、ごめんね。大したことは無いんだけど、年寄りだからさ、念のため色々な検査をすることになってね。もうちょっと時間がかかるみたい。今母が着替えとか用意してこっちへ向かってるので母が来たら交代して帰るね。だからしばらく家にいて、ごめんね、、、」と申し訳なさそうだ。夕飯の準備のことが気になったので何を作るつもりかを聞いてみた。
「あ、そこはそのままでいいよ、帰ってするわ、、、」と言うが美夏が
「わたしが作ろうか?何を作ろうとしてたの?」と逆に聞いた。
カレーとタンドリーチキン、ナン、バターライスだと言ったのであとは美夏が引き継いだ。「美夏、ごめん、、、ホントにごめん。お客さんに夕飯押し付けるなんて、、、この埋め合わせは必ずするわね。あ、良太に替わってくれる?」
リビングに戻った良太にスマホを持っていった。良太はテレビを観ていた。
「あ、ううん、えっ?そーなの、、、そんな、、、あ、うんうん、わかった。あ、帰る時に連絡入れてよね。さつきはどう?機嫌悪くしてない?ぐづってない?あ、そう。うんうんわかった、よろしく言っといて、」電話は終わったようだ。
良太が、「聞いたよ、優子の代わりに夕飯作ってくれるんだって?何か悪いね、、、」と申し訳なさそうに言った。
「いいのよ、優子とはそんな気を遣う仲じゃないんで全然平気。それよりエプロン貸して欲しい。どこかにある?あるところわかる?」と言うと良太がキッチンの棚の下から何枚かエプロンを出した。その中の一枚を美夏がチョイスした。可愛い花柄のエプロンだ。
それを美夏が着て後ろで紐を結ぼうとした時に良太が後ろから美夏を抱きしめた。
一瞬何が起こったかわからない美夏は声が出なかった、、、。
「えぇっ!?何ぃ?何よ、、、やめて、、、」それしか言えなかった。
この前泊まりに来た時に良太にハグされキスもされた。
「美夏、この前美夏を久しぶりに抱きしめた時から美夏のことばっかり考えてるよ、」と少し息を荒げて良太は言った。
そして、「やっぱり忘れられないよ、あの時のことは、、、」とも言った。
あの時?いつだろう、、、美夏は尋ねた。緊張してるが尋ねてみた。「、あの時、って?」
良太が美夏を抱きしめながら小声で「美夏が初めてのときだよ、今から17、8年前になるよね。俺の実家のベッドだったよね。」その頃を懐かしむかのように良太は言った。美夏の心臓の鼓動は早くなり、吐息も呼吸も荒くなってゆく。そして彼女が放った言葉は、「絶対に優子に言っちゃダメだからね。言ったら絶対に許さないから。死ぬまで、墓場まで持って行って。私も一緒だから、お願い、、、。」
良太は高校の時の先輩である。そして美夏の初めての相手である。
でも付き合っていたわけではない。憧れていた先輩に処女を捧げた。ただそれだけで終わった。それはそれで良いと思っていた。もう二度と会わないだろうと思って時が過ぎた。お互い時間が過ぎて大人になった。優子とは高校3年の時に同じクラスになり急激に仲良くなった。受験のこと、将来のこと、友達、恋愛、何でも話し合える仲になっていった。
二人は別々の大学へ進学すると次第に距離が開いたが定期的には会っていた。社会人になると会う機会が学生時代より少なくなったが季節に1度は会って朝まで喋った。
そして優子が結婚するので彼氏を紹介したいと言うので会った。
驚いた。旦那になる人は良太、今井先輩だった。今井も優子と美夏が親友だとは思ってもみなかった。
別に悪いことをした訳ではない。お互いの青春の1ぺージだ。
でも、でもでも気になる。優子の旦那がファーストキスのひと、そしてバージンを捧げたひと、、、。まさかと思ったが事実が目の前にあった。
「いや、そんなこと言わないで、、、もう先輩は優子のものでしょ?お願いやめて、」
振り絞るような声だった。
「、、、先輩、懐かしい響きだ。想い出すよ、あの時のこと。鮮明に覚えてる。どんな下着かも覚えてるし、もちろん美夏の体も覚えてる、、、」意地悪な言い方だった。
「やだ、止めてよ、そんな言い方。もう17年も前のことじゃない。掘り起こさないでよ、綺麗な思い出にさせてよ、、、」願うように言った。
「男はねバージンを捧げてくれた女の子のことは忘れないもんだよ、俺は忘れない。だって俺が処女を奪ったのは後にも先にも美夏だけだからね、、、」と得意げに先輩は美夏を抱きしめながら囁いた。
そして「離婚、大変だったね。夜はどうしてるの?さみしくない?、、、」そんな淫靡な言葉が美夏を被せてゆく、、、。
しかし、「ここでこんなことをしていたら優子に怪しまれるわ。だって夕飯作るって約束したもん。離して、早く離してよ、、、もしそのことを優子が知れば先輩の方が困るんじゃないですか?」と突き放したように言ってやった。
良太はその言葉を聞いて美夏を放した。そして観念したかのようにリビングのソファに腰を下ろした。美夏は良太を観念させた。
美夏は優子が作りかけた料理を引き継いでカレーを作った。ここからは美夏オリジナルになる。タンドリーチキンの下ごしらえの続きから美夏がやった。炊飯器にはご飯が既にセットされタイマーされているのでそれは触れなかった。きっとバターライスだろう。カレーの味付けは各家庭のオリジナルレシピが存在するので香辛料を調べてチョイスした。料理を続けていたがふとリビング気になった。あれから良太はおとなしくしてる。物音ひとつ出さない、、、どうしたんだろう?とソファを見るとどうやら寝ているようだ。ゴルフで朝早く出て行ったので疲れたんだろう、、、そう美夏は思った。
料理も進みあとはタンドリーチキンをオーブンで焼くだけにした。これからは優子が戻ってからにすればいい。
その時に良太のスマホが鳴った。良太は直ぐに起きて電話に出た、優子のようだ。
「あ、ううん、そうか、それなら安心だな。うんうん、わかった。あ、ちょっと待って、」と言い良太がスマホを美夏の目の前に突き出した。「優子から、、、」
「もしもし、うんうん、、、大事に至らなくて良かった。うん、あ、できたよカレー。タンドリーチキンもあとは焼くだけなんで待ってるね。はいはい、気をつけて~、あ、替わらなくていいの?、あ、うん、わかったー」優子はあと30分ほどで帰れるらしい。スマホを良太に渡しにリビングのソファに行った時だった。手首を持たれ引っ張られた。驚いた美夏はそのまま良太の横に転がった。
「だめ、優子が帰ってくる、、、」困った顔の美夏がいる。
「あと30分もあるじゃない、料理はできたんだろ?さっきの続きしよっか、、、」
そう言って美夏を左腕で抱き寄せキスをした。時間を掛けたキスだった。その時間が経つにつれて美夏の抵抗もおさまっていった。良太の手がエプロンの脇から胸のあたりをまさぐる。その時に「昔からちっちゃな胸だったね、変わってないところが好き、」
胸の小ささを確かめるように良太の手のひらは動いている。
「やだ、やめて、、、優子に悪いわ、、、お願い、やめて。。。」
「ねぇ、さっきも聞いたけど離婚してどうやて紛らわしてるの?誰かいい人いるの?」
美夏の体を触りながら良太は言った。
「やだ、変なこと聞かないでよ、私だって、こんな私のことを抱きたいって言ってくれるひともいるんだから、間に合ってます!」と言い返した。でも良太はどんどん美夏の体の奥に入っていこうとする。デニムのボタンを外しファスナーを下ろした。
「あ、だめ、、、やだぁ、、、」その言葉に阻止力は無く良太の手はその先に進んだ。そして美夏は良太の左腕に抱かれたまま愛撫を受けた。美夏の体は気持ちとは逆にその愛撫に対して素直に応えた。そして愛撫がはじまってものの5分程度で絶頂に達した。良太はそれを愛撫した指と美夏を抱いている左腕で感じると、
「変わってないね、美夏。あの時と同じだ、、、懐かしいよ、、、」と良太が耳元で囁いた。
息が荒い、、、心臓が脈を打つ早さもMAXだ。あの程度の愛撫でいってしまった自分が恥ずかしい。良太に抱かれたまま放心状態だった。
我に返った時はみさきが玄関ポーチの扉を勢いよく開けた音だった。
ただいまぁー、おばちゃーん、きてるの???
慌てて美夏は服を直して良太から離れた。
薄っすら笑っている良太が憎らしかった。。。
つづく、、、