【クリスマスの思い出】



小学校3年生の時、クリスマスの日に妹と百均に行って、いろいろ見ていた。
たまたまかわいい陶器のサンタクロースを見つけて手に取った。
すると落としたか何かできれいに真っ二つに頭と胴体に割れてしまった。「壊してしまった…。」血の気が引いた。

はじめは焦って隠すことを選択した。
サンタクロースはきれいに真っ二つに割れており、胴体に頭を乗せると、ぱっと見壊れているようには見えないどころか、全く元通りのサンタの見た目をしている。これは隠し通せると幼心に思った。
陳列棚の奥のほうに並べてみたり、私たちは試行錯誤した。

ひたすら陳列棚に並べてみては、遠くから見て『これは絶対バレない大丈夫。』と。真冬であるにもかかわらず、変な汗をかきながら必死だった。しかし、私の中にいる天使と悪魔が戦っていた。



天使:『壊した事は悪い事だし、このまま置いていく事は犯罪です。正直に店員さんに言いましょう。』

私『そうだそうだ。壊した事は悪いこと。怒られて当然だ。ばれるかバレないで物事を決めるのは良くないことだ。正直に謝ろう。』

悪魔:『正直に話すのかwwwいや、これどう見ても壊れているようには見えないよ。そのまま隠し通せばいいじゃん。誰も気づきっこないって。』

私『そうだそうだ。壊した事は悪いことだけど、ぱっと見壊れてるように見えないし、黙っておけばばれっこない。』

すぐに謝ればいいのに、めちゃくちゃ悩んだ。
気がつくと、陳列棚付近に2時間近くいた。

当時のお小遣いが300円。
サンタの置物は100円。
給料の3分の1だ。小学生にとってはでかい。
その上、12月の終わりの方となると、ほぼ100円玉しか残っていない。
100円玉を握り締めた右手が小刻みに震えていた。


正直に壊した事を謝って、サンタに100円を支払うと、買いたかったものが買えなくなる。その上怒られるという最悪の結末が見えている。

逆に嘘を貫き通すと、この真っ二つの割れ方のおかげで、ばれる事はない。何食わぬ顔をして放置しておけば、買いたかったものは買え、その上怒られない。

どうしたら良いかわからなくなってきた。9歳児の私は怒られるか怒られないかで物事を判断する。

しかし、同時に正しいか正しくないかで物事を判断できる年齢にちょうど差し掛かっている。
良心が咎めるという意味、胸が痛いという感覚がわかる。
心臓の鼓動が伝わってくる。『決めるのは貴女』だと。


続く…