自宅に戻り次第、新しく始めようとしているサービスの告知ページを作成する予定でいたが、
作業机に着くとすぐに睡魔が襲ってきたため、僕は電気を点けたままベッドに横になった。
ほんの20〜30分寝るつもりだったが、起きてみたら窓の外は暗くなっていた。
僕は窓際に行ってカーテン越しに外の様子を見ようとしてみたが、その景色はまったく見えなかった。
窓の外には街灯という街灯もない。カーテンを開けてみると、そこには僕の顔が反射して映っていた。
そこに映った男は虚ろな目をしていた。
窓に映った自分から焦点を調整して外を見てみようとしてみたが、うまく見ることができなかった。
僕は両手で日除けをつくるようにして眉のあたりに手を当てて窓に近づいた。
そこにはひと気のない裏の路地がそこには見えた。いつもの光景だ。
僕はカーテンを閉めてキッチンに行ってコーヒーを作ることにした。
電気ケトルに水を入れてスイッチを押し、
豆をグラインダーに入れて手挽きをしながら、
僕は考えるともなしにサラさんのことを考えた。
彼女は流産と離婚を同じ年に経験したと言っていた。
それは土星が戻ってきた年の出来事だという。
(星は、そんなことまで人に要求するのだろうか?)
豆を挽き終えたのと同じタイミングで湯が沸いた。
僕はドリッパーにペーパー・フィルターを載せ、挽いたばかりの豆を入れた。
作業机に戻って熱いコーヒーを飲んだ。
5月だが夜になるとまだ少し寒い。
身体がじわじわ温まっていくのを感じた。
開いたままだったMacを再び起動させて、告知ページの作成に取り掛かった。
フックとなる画像やキャッチフレーズをいくつか試してから見栄えを整えてみたが、
コーヒーを一杯飲み終えてもしっくり来るものが出来上がらなかったので、
僕はコーヒーをもう一杯入れにキッチンに行った。
ふたたび豆を挽くのは面倒だったので、
既成のドリップ・コーヒーを飲むことにして、また湯を沸かした。
湯が沸くのを待ちながら僕はシンクの縁(ふち)に寄りかかりながら、
またサラさんとのやりとりを思い返した。
僕は人に勝手に気を許して踏み込みすぎる傾向がある。
そうかと思えば逆に、人に壁を作ってしまうときもある。
その間が上手く取れないのだ。
「土星のせいだ」とサラさんは言っていた。
星というのはずいぶん便利な扱われ方をするものだと思った。
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