◆うお座
いよいよ最後の星座、「うお座」さんの世界ね。
いつも思うけど、「うお座」の人って、
星占いでたいてい最後に書いてあるから可愛そうよね。
動画とかで12星座シリーズとかがはじまると、
「うお座」さんの動画が配信されるのって、しばらく先になることが多いしね。
でも、「最後の星座」というだけあって、
実は12星座の性質をすべて一緒くたに混ぜ込んで、
融合させてしまう不思議な力を持っている星座さんなのね。
12星座の流れで言えば、「みずがめ座」さんの「瓶(かめ)」が壊れて、
まるで海のように、その水が広がっていくイメージかしらね。
物語的に言えば、「みずがめ座」さんの世界で、
肩書に縛られないユートピアを創ったんだけど、
ある種そこは、「自由」という「システム」が出来上がったりしていて、
結局自分は「やぎ座」さんと同じことをやっているんじゃないか？となってしまって、
打つ手がなくなってしまったのよね。
そこで出てきたのが、すべてを融合する「うお座」さんの世界ね。
「うお座」さんは、変幻自在で、
どんな相手にもすぐに合わせることができるし、
意見や考えもその相手によってコロコロ変えていくことが可能なの。
「相手によって自分を変えていく」というところがとても大切でね、
それが「うお座」さんの良いところなの。
本人たちはときどき「自分には軸がない」とか、
「自分は何者なんだろう？」って悩むことがあるみたいだけど、
「うお座」さんの良さってそもそも「相手がいてこそ発揮されるもの」だから、
「何者でもない者」のが「うお座」さんだったりするし、
そういう「あやふやな状態」を受けれられるのも、
12星座のなかで「うお座」さんくらいしかいないような気がするのよね。
ときどきその場の空気を無意識ですべて吸収してしまって、
感情の波に飲まれて、どうしようもなくなるときもあるけれど、
しばらくその感情に浸ったらあっさり復活してしまうところも彼らのスゴいところよね。
「うお座」さんが持つ、他の強みがあるとすれば、それはたぶん、
「もらいながら、与える天才」というところかしらね。
たとえば、こちらが「うお座」さんに向かって何かプレゼントをしたとするでしょう？
この時点ではプレゼントをしたのは、「こちら側」なのに、
それをもらった「うお座」さんの様子を見ているだけで、
なぜかプレゼントをした側が「満たされる」みたいなことが起こるのよね。
これがわたしの言う、「もらいながら、与える天才」。
本人たちは、まってく無意識みたいなんだけどね。
スピリチュアルの能力が高くて、茶目っ気があって、憎めないのが「うお座」さんよね。
☆
「どう、なんとなく理解できた？」とサラさんは言った。「ずいぶん時間がかかっちゃったけど」
「そうでもないよ」と僕は言った。「流れでつかむことができて、なんだか新鮮だった」
「そう？」と彼女は言った。
僕は肯いた。
「それに、なんとなくだけど、サラさんがどの星座にも愛情みたいなものを持っているのが伝わってきた」
「そう言ってもらえると嬉しいな」そういってサラさんは本当に嬉しそうな顔をした。
「わたしはどの星座も大好きだから」
僕は黙って肯いた。
「いろいろな人がいて、この世界が成り立っているんだから、
星座の世界だって、必要のない星座さんなんていないと思うのよね」
「なるほど。それはまた新鮮な考えだね」と僕は言った。
「なんだか色々と話したせいかお腹が空いてきちゃったから、店を変えない？」
「サラさんがそれでいいなら」
そう言って僕は、彼女の飲みきった紙カップを持って、
ふたつ分の空のカップをダストボックスに捨てに行った。
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