月に一度のカットに行きました。

 

場所は大阪の谷町。

地蔵坂にひっそりと佇むサロンで、

美容師さん2人が、静かに経営されてます。

 

 

私が住んでいるところからは、

電車で片道1.5時間かかる。

 

 

でも、私はここがいいのです。

 

ここでカットしてもらうことを、

とても大切に想っています。

 

 

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初めてサロンに行った日は、

緊張で吐きそうだった。

 

 

当時、どの美容室でもしっくりこなくて、

鏡に映る自分が、全然好きじゃなくて。

 

だから、思い切って単価も上げて、

海外のコレクションでも活躍されたという、

その美容師さんを指名したのです。

 

 

しかし、ガチガチの鎧を纏っていた私は、

道すがら、なんだか震えが止まらない。

 

 

一瞥で、バカにされたらどうしよう。

 

 

「あなたは、切れません」

とか言われたら、どうしよう。

 

 

なんて、思ってたな~。

 

 

 

 

席に案内されて、他の美容室と同じく、

「どうされますか?」と聞かれる。

 

 

「ストレートの前下りボブで」

アジアンビューティぽく。

 

 

しかし、相手は無言。

 

 

「どんな風に見られたいですか?」

 

「意思強く見られたいです!」

 

「・・・(無言)」

 

「・・・(無言)」

 

 

この後もやりとりが続くのだけど、

何を言っても、口にした瞬間から、

間違っていることが分かる。

 

すごく変な顔をされている。

 

いたたまれなくなって、もう帰りたい。

 

 

それでも一生懸命話していたけれど、

最後は途中で、遮られてしまった。

 

 

 

「今日、どうして来たんですか?」

 

 

 

 

 

 

ハ ァ !?

 

 

 

 

瞬時に、猛烈な怒りが沸く。

 

 

そんなの、綺麗になりたいからに

決まってるでしょう!

 

だけど、海外の一流モデルを

見てきたあなたに、

そんなの言えるわけがないでしょう!

 

 

 

頑張ったのに。

 

 

頑張って、ここまで来たのに!!

 

 

 

・・・しかし、これを口に出す勇気もなく、

私は消え入りそうな声で

 

「なんか、似合う髪型が分からなくて、

どこに行ってもしっくりこなくて・・」

 

と答えました。

 

 

 

その様子をじっと見ていたその人は、

ようやく口を開きました。

 

 

あなたが持って生まれた顔立ちは、

きれいとか、かっこいいではなく、

" かわいい" なんです。

 

それなのにあなたは、

『強い美人』を目指してる。

 

 

 

苦しくないですか?

 

 

 

 

 

 

 

 

ハイ、私、

ここで陥落。

 

 

 

 

突然、涙が溢れ出す。

 

その後の会話は覚えていない。

動揺したままシャンプー台につく。

そしたら今度は、そのシャンプーがすごくて!

 

 

 

優しくいたわるような、

包み込むような手。

 

 

 

 

身体の奥底から、喜びと悲しみが

一緒になって溢れ出すのが分かる。

 

 

自分の、ど真ん中を見てもらえた喜びと、

それを、ずっと押し殺してきた悲しみ。

 

 

感情の抑制が効かなくて、

まさかこんなとこで涙も止まらなくて、

終始、大混乱。

 

 

 

あんなことは、生まれて初めてだった。

 

 

 

つづく