鯨の入り江(44)
悠平も食べる手をとめて乗り出してきた。
「本当、母さん。子供のころ、生きてるクジラを見たの」
「見たともさ、夜通し浜に座って鯨見物さ」
鉄男が引き取って応える。
「すごい!、ボクも見たかったなあ、山みたいにマギーだったんだろうなあ」
悠平はすっかり興奮している。
クジラの話を聞かせてくれと、綾や鉄男にせがんだ。
夜目にもなめらかな走りっぷりだ。
ほかの船では考えられない速さだった。
綾は父に手を引かれ、眼を丸くしていた。
今日はここまで、また続きは明日、書きます。