鯨の入り江(38) | 星ねこブログ

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鯨の入り江(38)


 ハブの多い島なのに、よくも平気でいると思う。


家の中から漏れる灯りも畑の奥の方までは届かない。


廊下を進むうちに、心がしんと冷えてゆくような、荒廃の気が迫って来た。


家人がどんなに念入りに磨き立てても、拭い去ることのできない凋落(ちょうらく)の印が


nora


しみのように、暗い廊下のそちこちに溜まっている気配にハッとさせられる。


「どうぞ、鉄男はここです」


 角を曲がった部屋の前に女が立っていた。


壁から影をはがすように、ユラリと動いた。


ポーズ

 鉄男の妻の久子だった。


 この村の出ではない。


町から嫁いできた女だ。綾より3つ年下だと覚えている。


 ずいぶん逢わない間にやつれて、どこかとげとげしいかんじがする。
kyoudai

読んでくださってる方々、ありがとうございます。


おなか痛いけど、頑張って書きます。


3枚目の写真はうちで生まれた子たちです。