鯨の入り江(22) | 星ねこブログ

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4420 鯨の入り江(22)

それほどの男が妻の実家で蓄えを食いくずし、

誇りを傷つけられていった。

そんな戦後に綾と妹の波美は生まれた。

だから一年生になってもランドセルが買ってもらえなかった。

 

 黒いつやつやしたランドセルを

背負っていたのは鉄男だ。

手足の細いへっぴり腰の鉄男は、その真新しいランドセルを重たいと嫌がった。

 二人で学校から帰る道々、綾は得意がって鉄男のランドセルをしょった。
あずまや
 代わりに鉄男が綾の粗末な布かばんを肩からかける。

 それは裁縫上手の母親が縫ってくれたものだ。


 白い鶴が朝日に向かって、羽をひろげた布団地の模様の端切れでつくられていた。
ゆったりねこちゃん

恐縮ですが、

続きは次回をご覧ください。