私が大好きなサザンオールスターズや桑田佳祐の楽曲を題材にして、
「原案:桑田佳祐」
として、私が勝手に「短編小説」を書くという、
「サザンの楽曲・勝手に小説化」
シリーズは、現在、「24本」を書いて来ている。
そして、今回はその「新作」を書かせて頂く。
その「新作」の前に、まずは、私がこれまで書いて来た、
「サザンの楽曲・勝手に小説化」
シリーズの「24本」のタイトルを、下記に示しておく。
①『死体置場でロマンスを』(1985)
②『メリケン情緒は涙のカラー』(1984)
③『マチルダBABY』(1983)
④『Ya Ya(あの時代(とき)を忘れない)』(1982)
⑤『私はピアノ』(1980)
⑥『夢に消えたジュリア』(2004)
⑦『栞(しおり)のテーマ』(1981)
⑧『そんなヒロシに騙されて』(1983)
⑨『真夜中のダンディー』(1993)
⑩『彩 ~Aja~』(2004)
⑪『PLASTIC SUPER STAR』(1982)
⑫『流れる雲を追いかけて』(1982)(※【4部作ー①】)
⑬『かしの樹の下で』(1983)(※【4部作ー②】)
⑭『孤独の太陽』(1994)(※【4部作ー③】)
⑮『JOURNEY』(1994)(※【4部作ー④】)
⑯『通りゃんせ』(2000)(※【3部作ー①】)
⑰『愛の言霊 ~Spiritual Message』(1996)(※【3部作ー②】)
⑱『鎌倉物語』(1985)(※【3部作ー③】)
⑲『夕陽に別れを告げて』(1985)
⑳『OH!!SUMMER QUEEN ~夏の女王様~』(2008)
㉑『お願いD.J.』(1979)
㉒『恋するレスポール』(2005)
㉓『悲しい気持ち(Just a man in love)』(1987)
㉔『Moon Light Lover』(1996)
…という事で、今回、私が「新作」として書かせて頂くのは、
2007(平成19)年にリリースされた桑田佳祐のシングル、
『風の歌を聴かせて』
のカップリング曲だった、
『NUMBER WONDA GIRL ~恋するワンダ~』
という曲である。
この曲は、桑田佳祐自身が出演した、
缶コーヒーの「WONDA」のCMソングとして作られた曲であり、歌詞の中にも、
「WONDA」
のフレーズが沢山出て来る。
私もこのCMをキッカケに、
「WONDA」
をよく飲むようになったが、とても美味しい缶コーヒーである。
そして、桑田佳祐が歌う、
『NUMBER WONDA GIRL ~恋するワンダ~』
という曲は、本当にカッコイイ曲であり、カッコ良さという点では、桑田佳祐の全ての楽曲の中でも3本の指に入るぐらいの曲であると私は思っているが、
「WONDA」
のCMの演出もとても面白く、桑田が「WONDA」の缶コーヒーを飲むと、BGMとしてこの曲が流れ、
2007(平成19)年当時、既に亡くなっていた黒澤明・植木等・ジャイアント馬場…といった、桑田の憧れの有名人達と桑田が「夢の共演」をするというという、実に面白い内容だった。
また、「WONDA」のCMでは、桑田佳祐が、若い頃の桑田自身と「共演」するという、面白いバージョンも有ったが、いずれも、とてもインパクトの有るCMだった。
そして、今回、この私も、この曲とこのCMをヒントに(?)、ちょっと「ぶっ飛んだ」(?)小説を書いてみる事としたい。
ちなみに、一応、これから始まる「4部作」の「その1」の予定である。
それでは、前置きはそれぐらいにして、
「サザンの楽曲・勝手に小説化シリーズ」の「第25弾」、
『NUMBER WONDA GIRL ~恋するワンダ~』
を、ご覧頂こう。
<第1章・『結婚協奏曲』>
「それじゃあ、行って来るわね…」
「ああ、行っておいで…」
或る夏の日の事。
私と妻は、そんな会話を交わしていた。
此処は私の自宅である。
私の妻は旅支度を整え、自宅を出ようとしていた。
「貴方、戸締りには気を付けてね」
妻にそう言われ、私は、
「ああ、わかってるよ」
と、ややぶっきら棒に答えてしまった。
「それから、火の始末もね」
妻は、なおも念を押すが、私は、
「ああ、わかってるって」
と、少しイラっとしながら答えた。
「いちいち、細かいんだよ…」
私は、心の中で呟いていたが、それを口には出さなかった。
私と妻は、結婚して7年目を迎えていたが、最近はこんな風に、何か会話をするだけで、ちょっと刺々しい空気が流れるようになっていた。
「パパ、行って来ます!!」
妻と同じく、「お出かけ用」の服を着ていた、私達の娘が、はしゃいだ様子で、私に抱き着いて来た。
「うん、気を付けて行っといで」
娘の元気な顔を見ると、私もとても元気付けられる。
私も思わず相好を崩した。
私達の夫婦には、ひとり娘が居るが、娘は今は6歳である。
娘も来年は小学校に入るが、ついこの間、生まれたと思ったら、もうそんな歳になるのか…と、私はちょっとした感慨に耽っていた。
「お祖父ちゃん、お祖母ちゃんによろしくな」
私は、娘にそう言った。
「うん!!」
娘は満面の笑顔だった。
「それじゃあ、行って来ます…」
片手にキャリーバッグを持った妻が、娘の手を引き、玄関から出て行った。
ドアが閉まる間際、娘が私に手を振ってくれたので、私も思わず笑顔になって、手を振り返した。
「やれやれ…」
妻と娘が家を出ると、私は思わず溜息をつき、ソファに座り込んだ。
私と妻は、普段は「共働き」で、娘は保育園に預けていたが、
今は、妻が私よりもひと足早く「夏休み」を取り、妻は娘を連れて、妻の実家に「帰省」しようとしていた。
つまり、暫くの間、私は「独り身」に戻るというわけである。
さっきも書いた通り、最近は私と妻は、あまり上手く行っていない。
しかし、可愛い娘のお陰で、何とか別れずに済んでいるようなものだった。
正直言って、妻が娘を連れて「帰省」してくれるのは、私としては有り難かった。
「昔は、こんなんじゃなかったんだけどな…」
私は、思わず独り言を言ってしまった。
こう見えても、かつて、私と妻は「大恋愛」の末に結婚したのだが…。
「何で、こうなっちゃったのかなあ…」
私は、またしても深い溜息をついた。
<第2章・『アスファルト・ジャングル』>
私は、ある銀行に勤めており、その銀行の渉外担当として、「外回り」をする事も多かった。
妻が娘を連れて「帰省」した後も、毎朝、私は銀行に出勤し、その後、「外回り」に行ったりしていたが、
何しろ、今は真夏の真っ盛りである。
「暑い、暑すぎる…」
外を歩いていても、とにかく汗が噴き出して来てしまうぐらいだったが、
真夏のギラギラした太陽が、都会のアスファルトで照り返し、暑さは増すばかりだった。
「日本の夏は、何でこんなに暑いんだ…」
私は思わず、ぼやいていた。
夏は暑い季節というのは、わかってはいるが、それにしても最近の夏は暑すぎる…。
私は、あまりの暑さに耐え兼ねて、公園の木陰で休む事にした。
私は、公園の木陰のベンチに座り、ひと休みする事にした。
まだ次のアポイントまでには、少し時間が有った。
私は手帳を見て、次の予定を確認していた。
「少し時間が有るから、それまで喫茶店にでも行こうかな?」
私はそう思い、ベンチから立ち上がった。
そして、ふと気が付くと、その公園で、一人の女性が道行く人に何かを配っているのが見えた。
「何だろう…?」
その女性を見てみると、彼女は派手なミニスカート姿で、手には籠を持ち、その籠には、いくつかの「缶コーヒー」が入っていた。
そして、彼女は私に気が付くと、私に対し、ニッコリと笑いかけ、
「キャンペーンですので、良かったら、どうぞ」
と言って、私にその「缶コーヒー」を渡してくれた。
「これは…?」
私は、普段はあまり「缶コーヒー」は飲まないが、
その「缶コーヒー」は、真っ赤な色合いの「缶コーヒー」であり、缶のデザインからして、とても美味しそうだった。
「これは、『WONDA』という缶コーヒーです。とても美味しいですよ…」
私に、「WONDA」という「缶コーヒー」を渡してくれた女性は、ニコニコして、私にそれを勧めて来た。
「この子、何処かで見た事あるな…」
私は一瞬、そう思ったが、そんな事よりも、その時の私はちょうど喉が渇いていた事もあって、
「これは、有り難い」
と思い、その「缶コーヒー」…「WONDA」の蓋を開け、一気に飲み干した。
すると…。
「あれ?どうなってるんだ…」
私は何故か、強烈な「眠気」に襲われてしまった。
「何で、コーヒーを飲んでるのに、眠くなるんだ…」
そう思ったのを最後に、私は眠りに落ちたが、眠る寸前、私に「WONDA」を渡した女が、不思議な笑みを浮かべているのが見えた…。
<第3章・『七年目の浮気』>
私が目を覚ますと、そこは、先程まで私が居た筈の公園ではなく、
何処かの「別世界」になっていた。
「ここは…?」
私は、まだ暫く頭がボーッとしていたが、そこは何処までも青い空と青い海が広がる、南の島だった。
その光景には見覚えがあり、私は思わずハッとした。
「ここは、バリ島じゃないか…」
そう、ここは私と妻が、かつて「新婚旅行」で来た事が有った、「バリ島」だった。
「何で、俺がバリ島に居るんだ…」
私は、わけがわからなかった。
何故か「バリ島」の砂浜で座り込んでいた私は、まだ少しボンヤリとした頭を働かせ、私は少しずつ状況を思い出していた。
「あ、気が付いたのね…」
ふと見ると、私の傍らには、さっきの女…そう、私に変な「缶コーヒー」を飲ませた、あの女が居て、私の顔を覗き込んでいた。
私は、ギョッとして、思わず飛び上がりそうになってしまった。
「君は、さっきの…」
私は、改めて、まじまじとその女の顔を見た。
「そうよ。どう?『WONDA』は美味しかったでしょう?」
その女は、全く悪びれた様子も無く、相変わらずニコニコとしていた。
「君は、何であんな物を俺に飲ませたんだ!?」
私は思わず詰め寄ったが、彼女は全く意に介さず、
「何故って…。キャンペーンだからって言ったでしょう?」
と、答えになっているのかなっていないのか、よくわからない事を言った。
「何なんだよ、キャンペーンって…」
私はブツブツと呟いた。
私は相変わらず、よく事情が呑み込めていなかったが、その女は、
「貴方、運が良いわよ。このキャンペーンに当たる人なんて、滅多に居ないんだから…」
などと言っていた。
その女は、私も、
「何処かで見た事がある…」
と、公園で見た時から思っていたが、ある人が思い当たった。
「そうか、この子はマリリン・モンローに似てるんだな…」
私は密かにそう思っていた。
「さあ、行きましょう…」
その女…マリリン・モンローによく似た女の名前はわからなかったが、以後、仮に「マリリン」として話を進める事とする。
そのマリリンが、砂浜に座っていた私の手を取り、私を立ち上がらせると、そのまま私と腕を組み、歩き始めた。
「行くって、何処に…?」
私がそう聞くと、マリリンは、
「とても楽しい所よ…」
と、一言だけ答えた。
どうやら、逆らっても無駄なようなので、私はそのままマリリンに従って、付いて行く事にした。
考えてみれば、7年前に妻と結婚して以来、こんな風に他の女性と腕を組んで歩くのは初めてである。
「これは、多分、夢なんだろうな…」
私はそう思って、自分の頬をつねってみたが、普通に、とても痛かった…。
「痛っ!!」
私がそう言うと、マリリンは、
「貴方、何やってるの?」
と、おかしそうに笑っていた。
「いや、別に…」
私は適当に答えておいた。
<第4章・『紳士は金髪がお好き』>
私とマリリンは腕を組み、「バリ島」の砂浜を歩いていた。
「一つ、聞いて良いか?」
私はマリリンに問いかけた。
「なあに?」
マリリンは小首を傾げ、私の方を見た。
「キャンペーンって言ってたけど、それって何の事?」
私がそう聞くと、マリリンは、
「そうね、『人生の夏休み』キャンペーンって所かしらね…」
と、答えた。
「それが何か、よくわからないから聞いてるんだけどな…」
私はそう呟いたが、マリリンは後は何も答えなかった。
公園で初めて逢った時から、マリリンは派手なミニスカート姿で、人目を引いていたが、
今、目の前に居るマリリンは、公園で見かけた時よりも、更に見た目が変わっていた。
気が付くと、マリリンは「金髪」になっており、ますます、外見がマリリン・モンローに似ていた。
一体、何の目的が有って、マリリンがこうして現れたのかは、よくわからないが、一つ確かなのは、彼女がとても美人だという事だった。
「ここには、前に来た事が有るよ。俺の妻と新婚旅行で…」
私がそう言うと、マリリンは、
「そう…」
と一言、答えた。
マリリンは、何を考えているのかわからないというか、何処か掴みどころの無い女だが、笑顔の合間に、少し憂いを帯びているようにも見えた。
私は、どうやらこのマリリンに、少しずつ惹かれている…そう認めざるを得なかった。
気が付くと、バリ島の日は傾き、夕陽が海の向こうに沈もうとしていた。
私は思わず、その美しさに見惚れていた。
「綺麗…」
マリリンも、バリ島の夕陽の美しさに、心を奪われているようだった。
私は、夕陽に照らされた、マリリンの横顔を見たが、夕陽に照らされたマリリンの顔も、とても美しかった。
<第5章・『ショウほど素敵な商売はない』>
「さあ、着いたわ…」
マリリンが私を連れ、やって来たのは、バリ島の海岸に有る、素敵な雰囲気のカフェバーだった。
そのバーのオープンテラスでは、若いカップルや家族連れなどが、思い思いに、楽しいひと時を過ごしているようだった。
「ここで、また何か変な物を飲ませるつもりじゃないだろうな…」
私はまた不安になったが、マリリンは、そんな私の雰囲気を察したのか、
「心配しなくても大丈夫よ」
と言って、笑っていた。
どうやら、マリリンには私の心の動きを見透かされているようだった。
私は思わず、苦笑いしてしまった。
とりあえず、私とマリリンはカクテルを注文し、乾杯をした。
「『WONDA』も良いけど、このカクテルも美味しいわね…」
マリリンは冗談っぽく言って、笑っていた。
マリリンは、笑うと子供っぽい表情になるが、そんなマリリンの笑顔を見て、思わず私も笑顔になった。
「そう言えば、妻と、こんな風に笑い合った事って、最近は無かったな…」
私は、心の中で、そんな事を思っていた。
私達が居たカフェバーでは、ちょっと変わった「出し物」が有った。
夜も更けて来ると、そのカフェバーに面した中庭のような所で、
「炎の踊り」
と称される、迫力有るショーが始まるのである。
カフェバーに居た客達は、そのショーに見入ってしまった。
「凄い迫力だな…」
「そうね…」
私とマリリンも、そんな会話を交わした。
「そう言えば、妻とバリ島に来た時も、こういうのを見たっけな…」
私は、またしてもそんな事を思った。
ここ最近、妻とは、あまり関係が上手く行っていなかったというのに、何故か妻の事ばかりが私の脳裏に浮かんでいた。
「ねえ…」
マリリンに話しかけられ、私は、我に返った。
「今、奥さんの事を考えていたんでしょう?」
マリリンにズバリと聞かれ、私は思わずハッとした。
「君、何で…」
私がそう言いかけると、マリリンは、
「私には、何でもお見通しなのよ…」
と言った。
マリリンは、何とも言えない表情で、私の方をじっと見つめていた。
私は、思わず、たじろいでしまった。
<第6章・『お熱いのがお好き』>
「今は、奥さんの事なんか考えないで…。私の事だけを考えてちょうだい…」
私の隣に座っていたマリリンは、そんな事を言うと、私にもたれかかって来た。
私はドキっとしたが、マリリンは目を閉じ、私に身を預けていた。
相変わらず、「炎の踊り」のショーは続いていたが、私はもはや、それどころではなかった。
どれぐらい時間が経った頃か…マリリンは、どんどん大胆になって来て、公衆の面前で、私にキスをして来た。
「ちょっと…」
私はそう言いかけたが、マリリンは、
「大丈夫。誰も私達の事なんか、気にしちゃいないわ…」
などと言っていた。
確かに、他の席のカップルを見ても、皆、公然といちゃついており(?)、私達の事を気にしている者など、誰も居なかった。
どうやら、「炎の踊り」が、カップル達の情熱に火を付けてしまったのか…。
それは、私とマリリンとて同じ事であった。
「このまま行くと、本当に後戻り出来なくなるぞ…」
私の中で、辛うじて残っていた(?)理性が働き、私にしきりに「警告」していた。
だが、マリリンの魔性の魅力には、私はとても抗えそうも無かった…。
「ねえ、部屋を取ってあるから。行きましょう…」
私はもはや、マリリンの言う事には逆らえず、二人して、マリリンが取ってあるというコテージの部屋に行ってしまった。
その部屋で有った出来事について…ここで書いてしまうと差し障りが有るので、全て「割愛」するが、簡単に言うと、結局、私とマリリンは、そこで関係を持ってしまったという事である。
「結局、こんな事になってしまった…」
と、私は思ったが、私が女性とこんなに熱い夜を過ごしたのも、随分と久し振りだったような気がする。
このまま、私はマリリンという女に、ズルズルと引っ張り込まれてしまうのか…。
「もう、どうなっても良いから、このまま此処で、マリリンと過ごして行きたい…」
遂には、私はそんな事さえ思っていた。
<第7章・『帰らざる河』>
私とマリリンが、一夜を過ごした後、
私達は、コテージのテーブルで、朝食を食べていた。
それは、マリリンが作ってくれた、簡単な朝食だったが、とても美味しかった。
「君、料理も上手いんだね…」
私がそう言うと、マリリンは嬉しそうに、
「有り難う…」
と言った。
「俺、このまま帰らなくても良いかも…」
私は、すんでの所で、そう言ってしまうところだった。
その時、私は、昨日から着ていたスーツのポケットに、何かが入っているのに、ふと気が付いた。
「ん…?」
そのポケットに手を入れると、そこに有ったのは…。
「これは…!?」
私は、思わず、ハッとした。
それは、私の娘が、妻と一緒に家を出る直前、私に抱き着いて来た時に、入れていた物らしかった。
それを見てみると、私と妻と娘と…3人の家族が描かれていた絵、娘が描いてくれた絵だった。
そして、その絵には、
「パパ、いつもありがとう」
という、娘が書いた字も有った。
「これを描いてくれてたのか…」
私の目に涙が滲んでいた…。
「どうしたの?」
そんな様子を見て、マリリンが、私の顔を覗き込んでいた。
私はマリリンに対し、
「もう帰らないと…」
と言っていた。
出し抜けに、私にそんな事を言われ、マリリンは黙り込んだ。
そして、私の顔をじっと見つめていたマリリンは、溜息をつき、
「そう…」
と言うと、テーブルの上に、2つの飲み物を置いた。
1つは、私とマリリンが、昨夜(ゆうべ)飲んだのと同じようなカクテルで、
もう1つは…ブラックの色合いのデザインの「缶コーヒー」の「WONDA」だった。
「このカクテルを飲むと、貴方は元の世界には戻らず、ここで私と一緒に過ごして行く事になるわ。でも、このブラックの『WONDA』を飲むと、貴方は元の世界に戻れる…。貴方が決めてちょうだい」
マリリンは、私にそう言った。
私は、ゴクリと唾を飲みこんだ。
今まさに、私は「決断」を迫られていた。
マリリンの顔を見ると、泣きそうな顔をして、じっと私の事を見ていた。
その顔を見ると、私は本当に、このまま全てを投げ出して、マリリンと過ごして行きたい…という気持ちを抑えられそうもなかった。
だから、私はマリリンから目を逸らした。
「俺は、元の世界に帰るよ…」
私はそう言うと、ブラックの「WONDA」を手に取った。
そして、私はマリリンと過ごした、楽しかった一日を脳裏から振り払うように、ブラックの「WONDA」の蓋を開け、一気に飲み干した。
すると、私の視界が歪み、意識が遠のいて行った。
そんな私の事を、マリリンが寂しげな顔で見守っていた…。
<終章・『バス停留所』>
気が付くと、私は元居た場所…あの公園の木陰に佇んでいた。
「元の世界に…戻ったのか…」
私はまた、独り言を言った。
「あれは、やっぱり夢だったのか…」
私はそう思ったが、私の右手には、あのブラックの「WONDA」が、しっかりと握られていた。
それを見て、私はハッとした。
とても不思議な事だが、私がマリリンと過ごしたのは、どうやら「夢」ではなかったらしい…。
「そうだ、早く行かないと!!」
私は腕時計を見ると、次のアポイントの時間が迫っていた。
次の約束の場所に行くには、近くの停留所からバスに乗るのが近そうだった。
私は、バス停留所へと急いだ。
そして、私がバスに乗り込もうとすると、そのバス停留所には、スーツケースを持ち、帽子を被った一人の女が立っており、私はその女にぶつかりそうになってしまった。
「失礼しました…」
私はその女に謝ったが、女は、
「いえ…」
と、答えた。
私は、そのままバスに乗り込んだが、その女は、どうやら行先が違うのか、そのバスには乗り込んで来なかった。
「あの女、何処かで見たような…」
私はそう思ったが、私は次の約束の事に気を取られ、すぐに仕事の事に思考を切り替えた。
そして、その時の私は、その女が、私が乗ったバスをじっと見つめている事にも気が付いていなかった…。
(つづく)
『NUMBER WONDA GIRL ~恋するワンダ~』
作詞・作曲:桑田佳祐
唄:桑田佳祐
妖艶な Rock'n Roll
骨の髄まで…Maniac
愛撫から Lose Control
宇宙(そら)が燃えている…Zodiac
あれは真夏の夢なのか?
ため息の One Night Stand
欲望に赤く染められた
あなたの胸に抱かれて
優雅な La Vi En Rose(ラ・ヴィ・アン・ローズ)
花弁(はな)の香り…Erotic
艶女(アダージョ)の Body & Soul
その蜜の味わいよ…Exotic
鼓動を重ねた悦びは
地の果ての Wonderland
来た道さえも振り向かず
あなたの接吻(キッス)で死にたい
魔性の Power 女 Magic
- Number Wonda Girl
哀愁の Summer 恋の Music
- Never Gonna Stop
太陽の Rommance 女 Panic
- Number Wonda Girl
情熱の Vacances 終わりゃ Tragic
- Whole Lotta Love
Enjoy Loving!!
男(オス)達を天国に誘(いざな)え!!
静かな Rock'n Roll
爪の先まで…Satisfied?
物憂気な Rhythm & Blues
夢の中へ…Lullaby
あれは真夏の幻影(まぼろし)か?
痴情溢る One Night Stand
欲望に赤く染められた
花唇(はなびら)に口づけたい
魔性の Power 女 Magic
- Number Wonda Girl
哀愁の Summer 恋の Music
- Never Gonna Stop
太陽の Rommance 女 Panic
- Number Wonda Girl
情熱の Vacances 終わりゃ Tragic
- Whole Lotta Love
Enjoy Cumming!!
女(メス)達は満月に濡れ
魔性の Power 女 Magic
- Number Wonda Girl
哀愁の Summer 恋の Music
- Never Gonna Stop
太陽の Rommance 女 Panic
- Number Wonda Girl
情熱の Vacances 終わりゃ Tragic
- Whole Lotta Love
Enjoy Loving!!
精子(むし)達よ粘膜に飛べ!!
Number Wonda Girl
Never Gonna Stop
Number Wonda Girl