【サザンの楽曲「勝手に小説化」④】「Ya Ya(あの時代(とき)を忘れない)」(原案:桑田佳祐) | 頑張れ!法政野球部 ~法政大学野球部と東京六大学野球について語るブログ~

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少々マニアックな事なども書くと思いますが、お暇な方は読んでやって下さい。

昨年末、私はこのブログで、「サザンの楽曲を勝手に小説化する」という特別企画(?)を行なった。

その際に、私がサザンオールスターズの楽曲の歌詞を元にして、書いた「短編小説」は、

 

・『死体置場でロマンスを』(1985)

・『メリケン情緒は涙のカラー』(1984)

・『マチルダBABY』(1983)

という3本である。

 

 

今回は、それに引き続く「サザンの楽曲・勝手に小説化シリーズ」の「第4弾」として、

1982(昭和57)年のサザンオールスターズの楽曲『Ya Ya(あの時代(とき)を忘れない)』を元に、「短編小説」を書く。

ちなみに、この楽曲は、桑田佳祐が自らの学生時代の思い出を回想し、作った曲である。

 

 

 

これまで、このブログで何度も書いて来た通り、

桑田佳祐は、青山学院大学時代に、原由子と出逢い、青山学院で、桑田と原は後のサザンの母体となる学生バンドを結成した。

そして、桑田と原が所属していた、青山学院の音楽サークルの名前は、「ベターデイズ」という物であった。

『Ya Ya(あの時代(とき)を忘れない』の歌詞には、その「ベターデイズ」も登場するが、

私は、この楽曲を元に、「ある学生バンドの物語」を描いてみる事とする。

それでは、ご覧頂こう。

 

<第1章・『春』>

 

 

私は、子供の頃から音楽が大好きであり、私の生活は常に音楽と共に有った。

小さい頃は、母親の勧めでピアノを習わせてもらっていたが、その時はクラシック音楽ばかりを弾いていた。

だが、中学から高校時代にかけて、私はロックやポップスを好むようになり、洋楽・邦楽問わず、色々な音楽を聴くようになっていた。

そして、ピアノだけではなく、ギターも弾くようになった。

私は、ギターが弾けるようになると、見よう見真似で、今度は自分で曲を作るようになった。

 

 

私は、勉強はそれほど得意ではなかったが、

洋楽を沢山聴いてきたからか、英語だけは得意だった。

そして、得意の英語が功を奏して、私はどうにか、青山学院大学に受かる事が出来た。

青山学院は、私にとって憧れの大学であり、その憧れの大学に入る事が出来て、私の心は浮き立った。

やがて、春になり、私は新入生として、桜が咲き乱れる青山学院のキャンパスを歩いていた。

キャンパスでは、新入生を勧誘しようと、沢山のサークルが、新入生に声を掛けていた。

 

 

その沢山のサークルの中で、私がふと気になった所が有った。

それは、所謂「軽音楽サークル」だったのだが、私がその部室を覗いてみると、何だかとても楽しそうな雰囲気だったのである。

私は、何となくその部室を見ていると、中に居た上級生らしき男子学生が、私の存在に気が付いた。

「君、音楽が好きなの?良かったら、見学してみない?」

私は、その人に誘われ、部室の中に入り、そのサークルの練習風景を見せてもらった。

部室には、何人かの人達が居て、皆、和気藹々とした雰囲気で、思い思いに楽器を弾いたり、楽しそうに語り合ったりしていた。

「ここでは、みんな好きな音楽をやったり、気の合う人達と一緒にバンドをやったりしているんだよ」

その先輩は、ここのサークルはとにかく「自由」なのが売り物であると言っていた。

私は、それまで自分でピアノを弾いたり、ギターを弾いたりしていたが、それはずっと独りであり、誰かと一緒に音楽活動をした経験は無かった。

「もし、興味が有ったら、また遊びに来てよ!」

私は、先輩に、そのサークルの概要が記されたチラシを貰った。

 

 

「何か、面白そうかも…」

私は、その軽音楽サークルに興味を惹かれた。

独りで音楽をやるのも良いが、誰かと一緒に音楽をやるのも、面白いかもしれない。

私はそう思い、その翌日、早速そのサークルを再び訪ね、私は入部したい旨を告げた。

「入ってくれて有り難う!!それじゃあ、これからも宜しく」

先輩はそう言って、私をサークルの人達に紹介してくれた。

そのサークルには、男女問わず、沢山の人達が所属しており、皆、新入生の私を、快く迎え入れてくれた。

その夜、そのサークルの人達は、青山学院のキャンパスの近くの、渋谷の居酒屋で、早速、私の「歓迎会」まで開いてくれた。

その居酒屋では、皆、自分の好きな音楽について、熱っぽく語っており、

「ああ、みんな本当に音楽が好きなのだなあ…」

と、私はその事がとても嬉しく思っていた。

こうして、私の大学生活は始まった。

 

<第2章・『夏』>

 

 

私が、そのサークルに入って、少し経った頃、私と同じ新入生達も、何人かがサークルに入って来た。

私が彼らと話をしてみると、何だか妙に馬が合った。

皆、それぞれ好きなアーティストは違っていたが、

「音楽が大好き」

という点では一致していた。

そして、私達はすっかり意気投合し、

「一緒に、バンドをやろう!!」

という事になった。

私が特に気が合ったのは、タカシ、カズユキ、ヒロシの3人だったが、私は彼らと一緒にバンドを組む事となった。

そのバンドでは、タカシがギター、カズユキがベース、ヒロシがドラムを担当する事となった。

私は、一応、自分で曲を作る事が出来る事も有り、ボーカルを担当したが、

本当は、私はギターを弾いたり、ピアノ(キーボード)を弾いたりする方が好きであった。

ともあれ、私達は、一生懸命に練習し、それなりに格好が付くようになって行った。

 

 

そんなある日の事、ギターのタカシが、私にこんな事を言って来た。

「なあ、俺達、何か目標が有った方が良いんじゃないか?」

タカシは、一緒にバンドをやる以上、ただ漫然として活動をするよりも、何か「目標」を持って活動をする方が、より一層、上達するのではないかと言っていた。

「目標ねえ…。良いけど、何を目標にするんだ?」

私は、タカシにそう聞いたところ、タカシは、

「例えば、ライブハウスのステージに立って演奏するとか、そういう事だよ。お客さんの前に出るのを目標にした方が、絶対に励みになるよ!!」

タカシは、熱っぽく語っていた。

「なるほど、ライブハウスか…」

私は、みんなと一緒にバンドの練習をするだけで楽しかったのだが、

タカシは、その時、明確に「このバンドで、ライブハウスのステージに立つ」という事を目指していたのである。

「よし、やってみるか!!」

私も、「その気」になり、それからは、より一層、バンドの練習にも気合いが入った。

 

 

それからというもの、私達のバンドの演奏技術は、目に見えて上達して行った。

やはり、何か「目標」を持って活動をするというのは、とても大切な事であると、私は実感していた。

だが、その頃になると、私は少し憂鬱な気持ちになっていた。

このバンドの最大の弱点…それは、私の「歌」であった。

自分でも自覚していたが、ハッキリ言って、私は歌は苦手で、いくら一生懸命に歌っても、どうにも上手く行かないのである。

バンドの演奏技術が上がって行くに従って、私は自分の「歌」が、皆の足を引っ張っているような気がしていた。

「このバンドは、ボーカルが最大のネックだ…」

ある時、私はタカシに対し、呻くように言ってしまった。

「このままじゃ、俺達のバンドは頭打ちだ…」

私は、自分は歌には全然自信が無いと、タカシに向かって告げていた。

「そうか…。最近、お前のギターの音を聴いてると、何か悩みが有るんじゃないかなと、俺も思ってたんだ…」

タカシは、最近、私の様子がおかしいと、何となく気付いていたようであった。

「わかった。俺に考えが有る」

タカシは、そう言ってニヤリと笑っていたが、私はその時、タカシが何を考えているのか、よくわからなかった。

 

<第3章・『秋』>

 

 

そうこうしている内に、季節は秋になり、

青山学院のキャンパスの銀杏並木も、黄色く色付いていた。

私達のバンドは、相変わらず練習に励み、私も、自分で地道に曲を作って、それをバンドで演奏したりしていた。

だが、私の歌は、相変わらず、ちっとも上達していなかった。

「やっぱり、俺はボーカルには向いてないなあ…」

私は、毎日、溜息をついていた。

そんなある日の事、私達がいつものようにバンドの練習をしていると、

少し遅れてやって来たタカシが、

「みんな、紹介したい子が居るんだ。さあ、入ってよ!!」

と言って、1人の女の子を連れて来た。

「この子は、俺のバイト先で知り合った子なんだ。俺達のバンドの事を話したら、一度、練習を見てみたいって言ってたから、連れて来た」

タカシはそう言って、その女の子を私達に紹介してくれた。

その女の子は、ちょっと緊張気味の様子だったが、

「皆さん、宜しくお願いします…」

と言って、私達にペコリと頭を下げた。

 

 

「ところで、お前のバイト先って、何処だっけ?」

私がタカシに聞くと、

「ああ、俺は今、カラオケ屋でバイトしてるんだよ。それで、この子とは、そのカラオケ屋で一緒にバイトをしてるんだ」

と、タカシは答えた。

「それで、この子は実は、凄く歌が好きなんだよね…。それで、この子の歌を聴いたんだけど、とにかく、スゲー歌が上手くてさ!!俺、ビックリしちゃったよ…」

タカシは、その子について、更にそんな情報を付け加えていた。

「それで、俺からの提案なんだけど、一度、この子の歌を聴いてみてくれない?」

前に、タカシが言っていた「考え」というのは、その事だったのか…と、私は合点が言った。

「良いけど…。その子は大丈夫なのか?」

私は、ずっと緊張気味な様子の、その子の様子を見て、少し心配になったが、

「大丈夫、大丈夫。まあ、とにかく聴いてみてって!!」

と、タカシは妙に自信タップリな様子だった。

「それじゃあ、歌ってもらおうか…?」

私は、ベースのカズユキ、ドラムのヒロシ達と顔を見合わせ、とにかく、私達のバンドが演奏し、その子に1曲、歌ってもらう事にした。

 

 

「それで、どんな曲が好きなの?」

私は、その子に向かって聞いてみると、その子は、

「私は、昭和歌謡の曲が好きです…」

と、ちょっと意外な事を言った。

その子は、見た目は「イマドキな女の子風」というか、ちょっとギャルっぽい雰囲気だったが、意外に渋い選曲をするものだと、私は思った。

「なるほど。何か、歌ってみたい曲は有る?」

私がその子に聞くと、

「山口百恵さんの曲を歌ってみたい」

と、その子は答えた。

 

 

「そうか…。それなら、『ロックンロール・ウィドウ』とか、どうかな?」

私は、バンドのレパートリーとして練習していた、

山口百恵『ロックンロール・ウィドウ』という楽曲を歌ってみないかと提案すると、

その子は、「その曲なら、私も大好きです!!」と言っていた。

「よし、それじゃあ、やってみよう!!」

こうして、私達のバンドは、その子のために『ロックンロール・ウィドウ』を演奏してみる事とした。

 

 

そして、演奏が始まった。

その子のために、スタンドマイクを用意し、私達が前奏を弾き始めると、

明らかに、その子の様子が変わっているのがわかった。

それまでの、緊張気味の様子が、嘘のように一変し、その子は山口百恵になり切っているように見えた。

前奏が終わり、その子が、『ロックンロール・ウィドウ』を歌い始めると、これが本当に、メチャクチャ上手く、私は超ビックリしてしまった。

何と言うか、歌が上手いのは勿論、声量も有り、表現力が抜群であった。

「こ、これは凄い…!!」

私は、その子の歌声に圧倒されてしまった。

彼女は、自信満々といった様子で歌っていたが、一度演奏が始まると、その子には何かが憑依しているように思われた。

それに、私が心を惹かれたのが、その子は本当に楽しそうに歌っている事だった。

 

 

やがて演奏が終わると、その子は私達に向かって、またペコリと頭を下げた。

私、ヒロシ、カズユキの3人は、言葉も無く、呆然としていたが、

タカシはニコニコとしており、

「な!言った通りだろ!?」

と、してやったりの表情であった。

「本当に、凄かった!!俺、感動しちゃったよ…」

私は、思わずそんな事を言ってしまったが、それは私の本音であった。

そして、私はつい、こんな事を口走っていた。

「ねえ、君さえ良かったら、このバンドでボーカルをやってくれない!?」

私の、いきなりの提案に、彼女はちょっとビックリしていたが、彼女は顔を上気させ、

「本当ですか!?」

と、とても嬉しそうな表情を見せた。

「うん。いきなりで悪いんだけど、このバンドには、君みたいなボーカルが必要なんだ。どうかな?」

私が、彼女にそう聞くと、彼女は、まさに二つ返事で、

「はい!そう言って頂いて嬉しいです。是非、宜しくお願いします!!」

と、答えてくれた。

「あ、そう言えば、まだ名前も聞いてなかったね…」

私が彼女にそう言うと、その子は、

「あ、すみません!私はユウコって言います。宜しくお願いします!!」

と、遅ればせながら、自己紹介をした。

こうして、私達のバンドに、スーパーボーカルユウコが加わる事となった。

 

<第4章・『冬』>

 

 

ユウコをバンドのメンバーに迎え入れ、私達のバンドの練習にも、より一層、熱が込められた。

ユウコは、青山学院の学生ではなく、都内の専門学校に通っているとの事だったが、私達とは同学年だった。

ユウコが加わった事により、私達のバンドには、まさに「化学反応」が起こった。

それは、私達のバンドの足りないピースが加わったという事だけではなく、より一層、グレードアップしたという表現が正しかった。

私達のバンドは、それこそ、何かに憑かれたように、毎日、遅くまで練習し、レパートリーも増やして行ったが、

不思議な事に、私は、

「ユウコのために」

という事を思うと、オリジナルの曲のアイディアが、どんどん湧き出て来るのだった。

私は、ユウコのために、新曲を次々に作って行った。

ユウコは、まさに私にとっての、音楽の「ミューズ(女神)」と言って良かった。

ユウコの加入以降、青山学院の学内でも、私達のバンドに対する注目度は飛躍的に上がり、

バンドの定期演奏会にも、沢山の人が見に来るようになっていた。

その客の大半は、ユウコが目当てであった。

何しろ、ユウコはとても可愛いかったのだが、そのユウコが、一度ステージに立つと、その華やかなオーラが、より一層、凄味を増し、ステージを見に来ていた人達を魅了したのである。

「一人、加わっただけで、こんなにも変わるものなのか…」

私は、何だか夢を見ているような気がしてしまったものであるが、

それぐらい、ユウコの存在は、私達のバンドにとって、物凄く大きなものであった。

 

 

そして、その年の冬、私達のバンドは、遂に憧れのライブハウスのステージに立つ事になった。

私達は、ライブハウスのステージに立つにあたり、バンド名を、

「ベターデイズ」

と名乗ったが、その頃になると、口コミも有って、

「ベターデイズ」

は、アマチュアバンド界隈では、名の知れた存在になっていた。

ライブの当日は、青山学院の音楽サークルの仲間達が、多くの人達に声を掛けてくれた事もあり、何と、ライブハウスは満員になっていた。

「どうしよう…。私、こんなに多くの人達の前で歌った事なんて無いから…」

ライブの前には、ユウコはそう言って真っ青な顔をしていた。

だが、ステージに立つと、ユウコはやはり、スーパーボーカルに「変身」し、

その圧倒的なオーラで、観客を魅了した。

「遂に、やったぞ!!」

ライブは大成功に終わり、ライブが終わった後、私達は皆、抱き合って大喜びした。

ユウコもまた、感激の涙を流していた。

「ここまで来られたのは、ユウコのお陰だよ…」

私は、心からそう思い、ユウコにお礼を伝えたが、

「私の方こそ、有り難う…」

と、ユウコも頬を染めて、そう答えてくれた。

だが、これが私達のバンドにとって「最良の日」だったが、この日を境に、私達のバンドは、少しずつ雰囲気がおかしくなって行った。

 

<第5章・『季節は巡る』>

 

 

その次の年の春になると、私達のバンドに「隙間風」が吹くようになっていた。

それは、一言で言うと「方針の違い」だったが、それは何かと言うと、こういう事である。

タカシは、ユウコが加わって以降の「ベターデイズ」の快進撃に、すっかり「その気」になり、

「この勢いに乗って、俺達、プロを目指そう!!」

と、言い出した。

しかし、正直言って、私には、そこまでの自信は無かった。

「お前、プロって言ったって…。そんな甘い物じゃないんだぞ」

私は、そう窘めたが、タカシは、

「何を言ってるんだよ!!俺達なら、やれるって!!なあ、ユウコ?」

と言って、ユウコにまで同意を求めていた。

タカシにそう聞かれたユウコは、少し困った顔をしていたが、

「私は…。みんながどう思ってるのかを聞きたいわ」

と言って、答えを保留した。

私は、ユウコまで勝手に味方に引き入れようとするタカシに、ちょっとムカっと来て、

「お前、ユウコまで巻き込むなよ。みんな、それぞれの人生が有るんだから…」

と言ったが、今度はタカシが、カチンと来たようだった。

「お前、何だよ!?わかった風な事を言ってるんじゃねーよ!!」

タカシは、私を睨んで来た。

その出来事をキッカケに、私達のバンドは、すっかりギクシャクしてしまったのである。

それからは、私達のバンドの練習の回数は、すっかり激減してしまった。

 

 

「ねえ…。貴方は、このままで良いの?また、みんなと一緒にバンドをやりたくないの?」

ある日、私とユウコの他には誰も居ない、がらんとした部室で、私に向かって、ユウコがそう聞いて来た。

「そりゃ、やりたいけど…。でも、あいつと俺とでは、考え方が違いすぎる」

私は、バンドをやりたいのは、やまやまだったが、私としては、あまり先の事は考えず、皆と一緒に楽しくバンドをやりたいという考えが強かった。

だが、二言目には「プロ、プロ」と言う、タカシの事が、少し、疎ましくなっていた。

「ユウコは、どう思ってるんだ?ユウコも、プロになりたいのか?」

私は、ユウコに聞いたが、私とタカシ「板挟み」になり、ユウコは困り果てていた。

「私は…。貴方とタカシが仲直りして、またみんなと一緒にバンドをやりたいと思ってるよ…。でも、貴方とタカシが、お互いに意地を張ってるから、どうにもならないじゃないの!?大体、貴方だって、タカシがあんなに熱心に言ってるのに、何でタカシの言う事を聞いてあげないの!?」

ユウコは遂に、溜まりに溜まった鬱憤を爆発させ、私に怒りをぶつけて来た。

「そうか。そんなにプロになりたきゃ、勝手にしろ。ユウコは、タカシと一緒にプロを目指せば良いじゃないか!?」

私は、ついに、言ってはならない事をユウコに言ってしまった。

「何よ、バカ!!!!」

ユウコは、目に一杯に涙を溜め、そのまま走り去って行ってしまった。

私は、何という事を言ってしまったのか…と言って、後悔したが、自分でも、どうして良いかわからなかった。

 

<最終章・『再びの秋』>

 

 

季節は巡り、再び秋がやって来た。

ユウコと初めて出逢ってから、早いもので、もう1年が経ってしまった。

あの出来事以来、私は全く「ベターデイズ」の練習にも顔を出さなくなり、ユウコにも全然連絡を取らなくなってしまった。

私は、青山学院の、秋の銀杏並木を、独り、とぼとぼと歩いていた。

「あの頃は、楽しかったな…」

私は、ユウコ「ベターデイズ」の仲間達と、共に過ごしていた日々が、随分と遠い昔の出来事のように思ってしまっていた。

私は、音楽サークルの人達を避けるようにして過ごしていたが、

「このままではいけない。何とかしないと…」

と、ずっと心に引っ掛かる物を感じていた。

そこで、私は、この1年間の出来事を、1つの曲にしようと思い立った。

「この曲が出来たら…。もう一度、ユウコやベターデイズのみんなと、話し合ってみよう」

私は、そう決意していた。

こうして、私はユウコ「ベターデイズ」の仲間達の事を思い、「新曲」を書き上げた。

それは、『Ya Ya(あの時代(とき)を忘れない』という曲であった。

「やっぱり、俺は音楽が好きだ。そして、ユウコやベターデイズの仲間達も…」

私は、心の底からそう思っていたのであった…。

 

 

『Ya Ya(あの時代(とき)を忘れない)』

作詞・作曲:桑田佳祐

唄:サザンオールスターズ

 

胸に残る いとしい人よ

飲み明かしてた なつかしい時

 

Oh, Oh, 秋が恋をせつなくすれば

ひとり身のキャンパス 涙のチャペル

 

ああ、もう あの頃のことは夢の中へ

知らぬ間に遠く Years goes by

 

※Sugar, Sugar, Ya Ya petit choux

美しすぎるほど

Pleasre, Pleasure, la la voulez vous

忘られぬ日々よ

 

互いにGuitar 鳴らすだけで

わかり合えてた 奴もいたよ

 

Oh, Oh, Oh, 戻れるなら In my life again

目に浮かぶのは Better days

 

とびきりステキな恋などもしたと思う

帰らぬ思い出 Time goes by

 

Sugar, Sugar, Ya Ya petit choux

もう一度だけ逢えたら

Pleasre, Pleasure, la la voulez vous

いつの日にかまた

 

※Repeat