いよいよ本格的に寒くなってきてまいりました……と言いたい時期ですが寒かったり暑かったりどうも安定しないお天気ですね。まるでオタクの心模様のようです。

 それはさておきお久しぶりです。大盛況の後に無事に学祭も終了したところで、ブログ更新でございます。今回はまさしく暑かったりする頃から温めていた企画です。いい企画名が思いつかなかったので流用して以前実施したHOM@S Mazide Ongakuno Blog! の特別編として公開です。

 

 このたびはなんと法政大学の他サークルとのコラボレーション記事となりまして法政大学宅録同好会さん(@hoseitakuroku)にご協力をいただきましての企画でございます。

 宅録さんはPCを用いての作曲(DTM)と、その発信を活動目標としているサークルで、先日10/31には音系同人即売会「M3」にて新作アルバム「宅録同好会Compilation vol.6」をリリースされるなど、精力的に活動されているサークルさんです。(→これまでの作品はコチラ!

 記事の趣向としましては、そんな彼らに協力をいただいて、「アイマス音楽を音のわかる人たちに解説してもらおう!」という企画になります。つまるところ丸投げです。おお、もう……

 ゲストとして宅録同好会(21年8月時点)会長さきたま@sakitama20)さん、及び同副会長Norts@DJ_Norts)さんにご協力を賜りまして、対談形式でお送りします。それでは前置きもそこそこに、本題に移りましょう。結構専門用語が出てきますが、筆者のできる範囲で注釈及びWikipediaのリンクを付けてます。                                                     

 

登場人物(敬称略)

さきたま(以下S):上記の宅録会長。実はアイマス研の会員でもある。シャニマスが好きで放クラ推し。

Norts(N):同副会長。アイマスはDSのみ触ったことがあるらしい。ダンスミュージックが専門。

Okina(O):アイマス研会員。宅録同好会にも入会して最近DTMを始めた。

匿名希望(A):アイマス研会員。今回は動くアイマス辞書として参加した。

 

 

Oじゃあ、自己紹介から・・・

S:宅録同好会代表のさきたまです。1年から在籍していて、3年からアイマス研にも入ってます。シャニ専で放クラ推しです。円香もすきです

N副代表です。アイマスはあんまり詳しくないですが、DSだけやったことあります。キャラも曲も有名な奴しか知らないです。実質素人ですが、音楽はわかります

S:シャニ始めたでしょ?

N:極めるプレイが難しくて・・・あさひ目指して3時間リセマラしました

全員:(笑)

N:四条貴音さんもすきです。初出し情報です

S:そうなの!?

:Pやってます。デレシャニです。デレよりでフレちゃん、シャニは樹里千雪担です。他はキャラくらいです。音はDTM初心者程度です

S:宅録にも入ってくれたね

A:匿名おじさんです。素人目線で参加します。アイマスはほとんどわかります。ミリ中心でデレシャニも触れてます。音は素人です。担当は割愛。

O:どこから話そうか

S:876から?

N:記憶が古くてわからんかも

O:とりあえずやっていきましょうか

A:まずは『HELLO!!』からやっていこうか

THE IDOLM@STER DREAM SYMPHONY 00 ”HELLO!!”(2009) より「HELLO!!」

 

S:王道曲だねえ

A:いい曲だァ

O:構成としてはバンドよりかな?

S:そうですね。シンセとかもないですし

A:2009年の曲だね

O:そう聞くとその辺の年代ぽいかも。いきものがかりとか

S:あーそれっぽいかも。わからなくもない

(落ちサビに入る)

O:グロッケンの音とか年代感じるなあ

A:鉄琴とはちがうの?(補足:グロッケンは鉄琴の中で一番高い音域のもの)

O:まあ完全にいきものがかりの文脈で聞いてるんだけど

N:(ラスサビを聞いて)下降進行はやっぱりアニソンあるあるだよね。ぶっちゃけ安直に感動させる曲ともいえる。よくできてるともいえるけど。アーティスト目線だと「ありがち~」とも言えるかもしれない

S:ありがちと言えば、ストレイみたいな早い四つ打ちはオタクよろこびがち

A:わかる

 

 

Q.気になった曲は?

N:『VELVET QUIET』は声出たね。(※ダンス音楽が専門)

THE IDOLM@STER MASTER ARTIST 4 08 三浦あずさ(2021) より「VELVET QUIET」

 

N:最近のK-POPの入り方に似てる。そのあとはGarageガラージっていうイギリスで流行ってたジャンルを踏襲してるのかな。コードの重ね方が特殊。後ろの音…ほわーんってやつはFuture Bassフューチャーベースの影響を感じるね。ドロップが楽しみなんだよねこういうの。アイマス曲ながらサビに声でなく音を主役にするシーンが長めにとってあるのは最近の音楽の作り方してますね。洋楽とかK-POPの作り方。

二番入りはトラップかな。そういうところは最近の音楽の流れを汲んでるかなって気はしますね

S:すげえなこの曲

N後ろのヴーンって鳴ってる低い音サブベースって言って、これがないと音楽に迫力が出づらいんですね。アイマスでもこんな曲出てるんですね。メジャーなアイドルでもここまで攻めた曲あんまりないかも

N:学祭とか来てるようなリアルアイドルでも躍らせに来る曲あるけど、ああいうのもEDM主体のひとが作ってますね。旧来の日本の音楽の作り方とがは違うよね。やっぱりサビの歌が入るのは遅いのは最近の流行だね。電音部もダンスに寄せた曲出してるし、その系譜だよね

Oドロップとは?

N歌よりもアーティストが音楽をアピールする場所かな? どうしても帯域ってのがあるから歌と楽器って食い合うけど、歌よりも楽器の音を重視しているところ

A:「おれの曲を聞け!!!!!!」的な?

N:めちゃくちゃ端的に言うとそんな感じ(笑)

S:声があっても踊れはするからね

N:ただ、サイドチェインってものがあって、音の入り…4つ打ちになってる部分、その最初の4つごとの最初の音を小さくしてからまた戻す、っていう動き。ぅわんぅわんぅわん、という感じの。体を揺らすノリをそれで作るんですけど、それってボーカルにはかけられないので。そのために声を入れずに作ってる、というのは理にかなった考察なんじゃないかと思いますね

Sビルドっていうサビ前の…ドロップに対して、その前の盛り上がっていくところを言うんですがさっきの曲がそれっぽいかな?

A:『クレイジークレイジー』とかそうかな?

S:あれサイドチェインかなあ…

(試聴中~)

N:これはJersey Club(注)のジャンルのリズムかな。だっだっだだっ、みたいな

OヤバTみたいな?

S:しゃっしゃっしゃ、のリズムだよね。(※『あつまれ!パーティーピーポー』)

N:(『クレイジークレイジー』は)まさにこれがFuture Bassの王道と言えうるかな

OPerfumeは違うの?

N:音作りは似ているけどジャンルは違いますね。

O:FutureBassの典型とは?

N:ラップにもあるトラップの派生…セブンス(※Wiki)っていう浮遊感のあるコードを使ってトラップを作るとそうなるかも。ふわふわキラキラした音とかもいれてね。そのままトラップっていうと黒人とかが怒りながらラップしてるイメージに近いかも。その形を用いて浮遊感を持たせるのがFutureBassですね。

 

(注)ジャージー・クラブ(元々はブリック・シティ・クラブと呼ばれていた)は、2000年代初頭にニュージャージー州ニューアークで生まれたエレクトロニック・クラブ・ミュージックのスタイルである。ハウスとヒップホップのハイブリッドであるボルチモア・クラブから着想を得て、このスタイルが確立された。BPM130~140付近の高速で「弾む」グルーヴと、スタッカートやチョップされたサンプル、トリプレット・キック・パターンの使用が目立つことで定義されるアグレッシブなスタイル。 ラップやR&B(リズム&ブルース)トラックのリミックスで構成されることが多い。 熱狂的で競争的なダンスを伴うことが多く、バズった動画のBGMなどに使用されるなどして拡散し、世界的な人気を得ている。(英Wikiより引用したものを.DeepLで翻訳、編集)

 

 

Q.ジャンルとはなにを基準に決まっているのか?

Nリズムパターンでジャンルは決まることが多いかも。4つ打ちとかでも速さでテクノとかハウスに、速ければハードコアとかね

S:4つ打ちのジャンルだとトランスってのがあって、アイマスだとAJURIKAの曲がかなりトランスよりですね

A:じゃあ『Nation Blue』いってみよう

THE IDOLM@STER CINDERELLA MASTER Cool jewelries! 001(2013) より「Nation Blue」

 

A:これは2013年かな? 8年前だ

N:8年前にしてはすごい。今でも通用しますよこれ

S:このくらいの速さでキック…バスドラム的なの入れてるのがトランスの特徴ともいえるかな? ちょっと怒られそうな説明だけど

N:まあこの曲はトランスといって間違いない。あと後ろで鳴ってるアルペジオ※Wiki

O:ダンス曲にもアルペジオってあるの? コードの分解してたら出てくる印象あるけど

S:和音になる音を全部同時に鳴らすんじゃなくて、ばらけさせて単音の並びにして使うみたいな

A:(アルペジオって)楽器じゃないんだ

O:ギター用語かと思ってた

S:ピアノでも言う。奏法のことですね

(2番で一同うなる)

A:音ゲだとここ聞かないな

S:やっぱ楽曲はフルで聞かなきゃね

全員:それは違いないね(笑)

N:(アウトロ聞きながら)今のベースはサイドチェインですね

S:グルーヴ感が出るというかね

N:すばらしい

S:踊らす曲となるとサイドチェインは大体出てくるかな

N:ところで音楽って必ずジャンルがあると思われがちなんだけど、定義しづらい音楽も多い
S:ダンスミュージックが細分化しすぎなところもあるかな。こんな要素を取り入れたPOPS、としかいえないことも多いね

A:なるほど・・・

 

 

Q.アイマス×EDMのはしり?

A:アイマスEDMと言えば『Hotel Moonside』だけど

THE IDOLM@STER CINDERELLA MASTER 034 速水奏(2015) より「Hotel Moonside」

 

N:まあ完全にEDMだよね。

S:まあこれがはしりになって・・・その極致がさっきのVelvet Quietなのかな。これはサビはそのまま歌に入ってる。そのへんはやっぱりはしり、なのかな。挑戦的な要素を控えているわけじゃないんだけど

N:こういうつくりはEDMでも倖田來未とかそのへん・・・ありていに言うと少し前の作りかな

S:このへんから始めていってだんだんK-POPの流れを取り込んでいった感じかな?

N:これが最近のJ-POPに近いかな。サブベースあんまないのかな。そのへんも昔っぽいかも

 

 

Q.オタク大好き4つ打ちとは?

S:4つ打ちはいろいろあるけど、やっぱり速さで区別される。140~160だとトランスで、それ以上早くなるとハードコアかな。ハードコアパンクとかとはまた違うんだけど。ダンスミュージックだとハードコアテクノって言って、ミリオンの人は聞き覚えがあるかもしれない。Do The Idol(『Do the IDOL!! ~断崖絶壁チュパカブラ~』)がまさにそう

A:できた経緯的にもね。じゃあ聞こうか…

O:なんで躊躇いがちに?(笑)

THE IDOLM@STER MILLION THE@TER WAVE 10 Glow Map(2020) より「Do the IDOL!!~断崖絶壁チュパカブラ~」

 

N:おお…

S:アイドルでハードコアやれっつってもここまでやれとは言わんだろ

N:今のドラムの音はブレイクビーツっていって、いろんなジャンルで使います。音を埋めたりするのに使いますね。

(歌に入る)

N:裏で鳴ってるベースはハードコアだと王道ですね。でっでっでっで、ていう

A:原曲がKOHさんも手伝ってるって

(二番)

N:いまのトラップぽいかな?

S:なんだこの歌詞…(笑)

N:まあハードコアはぶっちゃけ歌詞どうでもいいジャンルとも言えるから…

S:ハードコアの中にもメロディックなのとそうでないのがあって、前者だと本当にそう。歌モノのハードコアもあるにはあるけど。…アイマス曲でも尖ってるのはやっぱこれかな

A:まあそれはそう

N:ハードコアだとボーカルはあんまりないし

S:よく(アイドルとハードコアテクノ)くっつけたと思いますよ

A:選択肢用意した運営が悪いよ(笑)

S:ほかのハードコアテクノだとTAKAMARI(『TAKAMARI☆CLIMAXXX!!!!!』)がそうかな。こっちは結構音ゲーの要素が多いかな?

THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS LITTLE STARS! TAKAMARI☆CLIMAXXX!!!!!(2019) より「TAKAMARI☆CLIMAXXX!!!!!」

 

N:これのイントロもブレイクビーツですね。

O:この速さだと呼び方変わります?

S:BPM(Beet Per Minute)170-80越えると大体ハードコアだけど…これはスピードコアともいえるか…?

N:これは違うと思う。

S:さすがにか。ともかくこの速さになってくると踊るって感じの曲とは違うかな。

(Cメロ)

O:ドラム細か…。

 

 

 

Q.拍子といえば変拍子の話?

THE IDOLM@STER SideM 3rd ANNIVERSARY DISC 01(2018) より「Reversed Masquerade」

 

S:この『Reversed Masquerade』は短調と長調で切り替わってて、簡単に言っちゃうと長調が明るく短調が暗いとこ。転調するだけなら珍しくないけど、これは短調をじっくりやった後にめちゃくちゃ明るくなるからコントラストがすごい。初見でイントロと最後のサビいっぺんに聞いても同じ曲とは気づかなそう。これ個人的にすごい好きです。

 

THE IDOLM@STER SHINY COLORS GR@DATE WING 03(2020) より「純白トロイメライ」

 

S:これ(『純白トロイメライ』)なんて、最初に1つだけ5拍子があるのがキモくていい。5拍子と7拍子が間奏に入ってて迷子になる。イントロは基本6拍子なんだけど、2小節目だけ急に5拍子が入ってるのが気になる。歌があるところは必ず6拍子か4拍子。こんだけ変拍子入れてても歌うところはそうしてる

O:まあ歌いづらいでしょ(笑)

S:それはそう。変拍子だけど、1拍のサイズは同じで、何個つなげるかをどんどん変えてる。主にBメロで3拍子になるのは手法として結構あって、アルストロメリアなんかもそうだけど、こっち(アルストロメリア)は1拍のサイズがBメロの間だけ短くなって途中で戻ってくる

A:4を3にするのは王道なの?

O:まあ、たまにある程度?

S:まあ、拍子が加速・・・というよりは。2拍3連符というのが出てきていて、2拍だったところに3連符を叩き込んでる感じ。概して幅は同じなんだけど、その中に3連符が入ってる。音の密度が上がっていると解釈してもいいかも。TAKAMARIなんかだと4拍になってる。アルストロメリアよりは違和感は少ないかな。不思議な感じはあんまりしない。ちなみに2拍3連符、BPMとると210になるので、そこだけはさっきのタカマリとBPMが一緒だったりします

A:そんな感じしないけどなあ

S:これがアルストロメリアの珍しいところ。探せば他にもありそうだけど。違うのは、拍を端折るんじゃなくて、2拍3連を使って違うビートのようにしてるってところかな

O:さっきのトロイメライでも3拍子のほうがゆっくり聞こえたかな

S:トロイメライの場合、拍子の刻み方は一緒なんだけど強拍の頻度が変わるから、ビートが遅くなったように感じる。アルストロメリアは密度を上げてるから早さが変わったような気はしないのがふしぎなところ。

THE IDOLM@STER SHINY COLORS COLORFUL FE@THERS -Stella-(2021) より「星をめざして」

 

S:特にこの『星をめざして』は2番のAメロだよね。拍子が変わってもわかりづらいのは歌詞の切り替わりでもやってるから。曲自体の拍子と別の区切り方で刻む手法は、ポリリズム…サビの後だったかな。5個でいくところがあるんだけど

A:Perfumeの?

S:そう、Perfumeの…曲自体はずっと四拍子なんだけど、ポリリズム ポリリズム、て歌うところあるでしょ。あれみたいに別の等間隔の音を同時に進めるのをポリリズムWikiというんですが、『星を目指して』は部分的にそれをしている。『クレイジークレイジー』もサビはそう。曲はずっと4拍子なんだけど、メロディのなんでかな、なんでかな、の区切りが3拍子

O:確かにあれはわかりやすいね

S:クレクレはかわいいもんだね。『星を目指して』のほうは変拍子の最中にそれをやるからわからん。どこで小節始めてるのかわかんなくなる。最初の二拍入れてるけど、そこからわかんなくなる

A:後ろの木琴に着目しても・・・わかんねえなあ。速度下げて聞いてみるか

S:ベースには作曲者の意図が見えるかも。めちゃめちゃ迷子になるつくりをしてるのは間違いない

 

 

 …いかがでしたでしょうか。EDMの話から拍子の話に至るまで、好き勝手に質問しまくった対談となってしまいました。しかし、アイマスがアイドルを扱う以上避けては通れない音楽について、アツい解説のおかげで少し理解が深まったのではないでしょうか。特に拍子の話は筆者にとっては目からウロコでした。こうして意識して聞いてみると、アイマスを音の方面からもより深く楽しめるかもしれませんね。

 そんな解説をいただいた両氏から、さきたまさんにコメントをいただきました。

 

「貴重な機会を頂き、ありがとうございました。今回は一応“音楽の話ができる”サイドの人間としてお呼びしてもらいましたが、ひとくくりに音楽といってもokinaさんとNortsと僕では守備範囲が全然違うので、聞く側としても新鮮な発見があったりして楽しかったです。別の人ならまた全然違う分野の話が広げられると思うので、音楽に詳しい人が身近にいる方は尋ねてみるといいかもしれません。

最後になりますが、

曲はフルで聴くと、楽しい!!!!!!!!

以上です。」

さきたま

 

 最後になりましたが、今回協力していただいた両氏には深く感謝申し上げます。そしてここまで(8月に収録した)記事が上がるのが遅くなったことにはこの場を借りて陳謝を…筆者のサボりがすべての原因です。もう代替わりも済んでしまったというのに…。

(筆:しーがる)