ブログにお越しの皆様、こんにちは。

 樋口円香です。

 

🔊よろしくお願いします。

 

 画像とは関係なく、筆者のさきたまという者です。はじめまして。

 昨年夏ごろにシャニマスを始めたのをきっかけに、このたび法マスの新入生として記事を書かせていただく運びとなりました。以後お見知りおきを。

 

 さて、樋口円香です。

 

🔊なんで寄ったんですか?

 

『アイドルマスター シャイニーカラーズ』の登場人物である彼女が、本稿のテーマです。

 

 この樋口、他アイドルに一切引けをとらない顔の良さを持っていながら、作中のプロデューサーに対する発言の刺々しさ、そして彼女自身の感情の見えづらさから、283プロダクションの中でも飛び抜けて人を選ぶキャラクターです。

 初見の人からはよく「正直苦手」「つらい」「泣いちゃった」「いっそ殺してくれ」などの声を耳にしますし、筆者もWINGの最初の方を読むたびに「俺が何をしたっていうんだ…」と思っています。

 

 にも関わらず、現在の筆者は樋口を心の底から応援しています。

 どうしてなんでしょうか。

 

 友人にこの話をしたら「ドMなんじゃない?」と言われました。

 

 

 そんなはずは。

 ではなく、(円香P各個人の性癖を抜きにしても)当たりの強さだけが魅力なんてことはないはず!

 

 というわけで。

 この記事は、シャニマスPの間でも極端に好みの分かれる問題児・樋口円香さん

「よく知らない」あるいは「特別好きではない/むしろ苦手」

という人に向け、彼女の好意的な読み取り方をひとつ知ってもらうことを目指します。

「好きだよ!」という人の解釈と異なっている可能性もありますが、あくまで筆者の例ってことでご容赦願います。

 

 お察しかと思いますが、学部専門科目の期末課題くらい文字数が多いです。現代ノクチル概論の担当教授になった気持ちでお読みください。

 またネタバレも含みますが、「やっぱSSR読まないと良さわからないんだ…」とか思われたくないので、内容への具体的な言及は最初のシナリオであるWINGの共通コミュに限ります。1回だけやって心が死んでやめた、という人も安心してご覧ください。

 

 

1. なんでそんなに俺のこと嫌いなんだ?

 

・はじめに

 さて、何も知らずにプロデュースを開始するとファーストコンタクトがあるわけですが、なんとこの時点での樋口には一切の可愛げがありません。

 

テキストボックスの名前が???なのは名乗る前だからです。その段階の相手にそこまで言う?

 

 前提として、彼女は作中プロデューサーのことをめちゃめちゃ嫌っています。その理由は前半と後半で変化しますが、結果的にWING中ずっと嫌われています。

 特にシーズン1は前半にあたり、警戒心からの嫌悪なので本当に容赦がありません。通学路に現れたでっけえヘビの横を歩くような、自分を襲いこそすれ助ける存在だとは微塵も思っていない、そんな感情を露骨に出してきます。

 

 

 つまり、樋口のプロデュースにはまず「こちらを嫌う人間を嫌わずにいられるか」が問われます。どれだけ邪険にされようと、樋口円香をアイドルにするために働くことができるかどうか。

 アイドルとPとして親睦を深めようという今までのスタンスで挑むと、ここで詰みます。プロデュースお疲れ様でした。このあとはフェスへ参加してみましょう。

 

 Fランクで敗退してしまうのは切ないので、どうにかしてメンタルを持ち直しましょう。作中プロデューサーは樋口に光るものを見出しているのでなんとか持ちこたえていますが、一般読者こと我々がダメージを軽減するためにはどうすればいいんでしょうか。サポートに恋鐘編成する?

 筆者からの提案はズバリ“理由を知ること”です。ここからは、なんでプロデューサーがこれほどまでに嫌われなければならないのか、その原因を前期(シーズン1)と後期(シーズン2以降)に分けて考えます。

 

 

・前期:「知らない人への警戒」どころではない

 

 さっき少し述べた通り、前期は「警戒心からの嫌悪」が原因です。そのためコミュニケーションは最低限、かつ関係を維持する気がないので隙あらばグサグサ刺してくる上、こちらが何を言っても基本的に信じてくれません。最悪。

 ただしここには「アイドル事務所を名乗る怪しい男」に対する正当な警戒の域を超えた、明確な敵意があります。それはなぜなのか。

 

 ヒントは、彼女がプロデューサーのもとを訪れた動機にあります。

 

 

 ここでの幼馴染とはのことです。樋口とともに実装された、同じノクチルである以上に財布がないことで知られる浅倉透。家も隣らしい。

 具体的な部分はストーリーを読むか、当ブログの担当紹介記事に透の回があるのでそちらを参照して頂きたいんですが、彼女はちょっと心配になるくらい欲が無く、おそらく普通にスカウトされた程度ではアイドルなんかならないだろう、という性格をしています。

 

透のスカウトコミュ。実際、最初はしっかり断っています

 

 そんな透がアイドルになると聞き、付き合いの長い樋口はめちゃくちゃびっくりしたんじゃないでしょうか。通学路にいるヘビで例えるなら、同じ通学班で特に動物好きとかじゃないはずの透が、ヘビにのこのこ近づいていった挙句「飼うわ」と言い始めたような。なんか催眠でも受けたと思ったに違いありません。浅倉そういうの気付かなそうだし。

 

 ともあれ、そんな理由でスカウト時の樋口はプロデューサーを「怪しい男」どころか「透に何らかの悪影響を及ぼした(可能性のある)男」だと認識しています。ちょっとやそっとでは動じない透にいったい何を吹き込んでアイドルにさせたのか、という得体の知れない警戒心に加えて、樋口は透を理解することにただならぬ感情を抱いている(気になる人はイベントコミュ『天塵』または樋口のサポートカード【UNTITLED】をご覧ください)ので、ある意味で透を変えてしまったプロデューサーには激重の敵意が向けられるわけです。

 この警戒心と敵意が、シーズン1までの軸となっています。

 

 

・後期:「正しさ」は矛盾する

 

 こんな内情から日々プロデューサーを言葉でボコボコにしていた樋口さんでしたが、シーズン2以降になると言われる方も多少慣れてきます。

 

皮肉を字面通りに受け取るプロデューサー。わざとらしさを嗅ぎとり、少しムッとしています

 

 プロデューサーと過ごす時間が長くなり、素性が明らかになるにつれて、前期の行動原理のひとつであった警戒心は薄れ始めています。敵意はわりとそのままです。

 かわりに、この頃から樋口は第3の軸である「自己矛盾」に悩まされるようになります。

 この「自己矛盾」というキーワードはプロデューサーに対する感情のみならず、ここからGRADに至るまで、樋口のストーリー全体に関わってきます。

 

 長くなりましたが、このあたりからようやく樋口の可愛げが出てきます。たどりつくまでに文字数使いすぎでは?と思われるかもしれません。認めましょう、いくらか遠回りしたことを。

 

 さて、樋口はなるべく正論で、すなわち客観的な正しさをもってプロデューサーを否定しようとします。これはその方がダメージが大きいから、というわけではなく、自身の主観を直接伝えることをよしとしていないということが原因だと考えられます。

 

少なくとも、主観を武器として用いることは避けています

 

 樋口は今までプロデューサーへの敵意を直接口にすることなく、ド正論やド皮肉で客観性をまとわせながら、それでも明確に感じ取れるくらい正面からぶつけてきました。あくまで正論を武器にしていたわけです。

 

 ところが、正論は「間違っている相手」にしか攻撃として通用しません。プロデューサーが樋口の言葉を受け止めて自らを正していくほど、正論だけで否定することが難しくなっていくんです。

 加えてプロデューサーの善良さが浮き彫りになっていくことで、客観的に樋口がプロデューサーを嫌う理由がなくなりつつありました。しばらく行動を共にして警戒心が薄れていく中で、樋口が貫いていた「信用できない」というスタンスが揺らぐ程度にはプロデューサーのことがわかりはじめてきた、といえます。

 

 一方で、樋口はまだまだプロデューサーのことを嫌おうとしています。前述の「自身の主観を直接伝えることをよしとしない」という樋口の価値観と、大なり小なり自己表現を求められるアイドルの仕事は真っ向から対立しています。そんな仕事を持ってくるプロデューサーを嫌うのも無理はないでしょう。

 

 ここで、樋口の主観である感情が客観的な正しさと矛盾しました。嫌いな相手を責めれば責めるほど、客観的に「彼は信頼に値する」という根拠が増えていくわけです。

 樋口にしてみれば、どうしてプロデューサーにもっと非の打ちどころがないのか、と思わずにはいられませんが、ここまでくるとほぼ八つ当たりです。

 

プロデューサーが頼りがいを発揮するたび、頼りたくない樋口は自己矛盾を起こしています

 

 そんな泥沼に足を踏み入れて、嫌うほどに嫌えなくなるもどかしさにさらなる嫌悪感を募らせながら、彼女は主観と客観のどちらを捨てることもできませんでした。ここに樋口円香の魅力である、ある種の素直さと律義さが滲み出ています。自分の思いを蔑ろにしきれない芯の強さと、正しくないとわかっているものを強く押し出せない生真面目さ、ともいえます。当人は他ならないそのふたつの矛盾に苦しんでいるんですが。

 

 そんな悩みを抱えているので、シーズン4に入る頃の樋口はだいぶ大人しくなっています。この状態の彼女を可愛がることができれば、樋口人(ひぐんちゅ)への道のりは順調といえるんじゃないでしょうか。

 

 

 

2. ……円香は、どう思った?

 

・はじめに

 

 ここまで、プロデューサーへの感情を軸に樋口を分析してきました。

 内面についてゴリゴリに掘り下げた一方で、肝心の「なんで応援するに至ったのか」には全然触れずに来てしまいました。なのでここからはプロデューサーがどうとかではなく、筆者が樋口をどういう存在だと思っているのか、彼女がどうなっていくことを望んでいるのかについて、これまでの要素を踏まえながら述べていきます。

 信じてもらえないかもしれませんが、ここから後半です。許してくれ。

 

・封じ込めてきたもの

 

 前項にて、樋口は「自身の主観を直接伝えることをよしとしていない」という話がありました。これについて、もう少し詳しく考えます。

これだけ感謝祭から持ってきました。焼き芋の感想で100点と0点を同時に叩き出す女

 

 樋口が主観性を避けた表現をする、という描写は、共通コミュやプロデュースコミュに限らずノクチルのサポートカードなどでも見ることができます。本記事の最初の方で樋口が人を選ぶ原因として挙げた「彼女自身の感情の見えづらさ」も、この言葉選びに起因しています。

 

 どうしてそんなことをするのか、そのヒントはWINGのシーズン3で明かされます。

 

 

 樋口は、気持ちという「正しくないかもしれないもの」に何かを託すことに抵抗を感じています。その理由はいくつか考えられますが、一番は樋口自身がそれらの価値を信じられていないことだといえます。それがどんなに重かったとしても、正しくないものは否定できてしまうから。ずっと客観的・本質的な正しさを武器にしてきた樋口は、主観の脆さも痛いほどに知っています。

 

 一方で、(これは半分想像ですが)樋口はわりと感性が豊かです。風を感じたり、夕日を眺めたり、他人の涙に心を痛めたり。直接的な言及はありませんが、本当に細かな部分で表現されているように思います。

 また、ホーム画面でのユニット越境会話や、もぎたて♡にーちゅを代表とする衣装コメントが例になりますが、思いのほかクリエイティブというか、本人にどれだけその気があるのかはともかく創作物として興味深い瞬間があったりします。端的に言うとセンスがあるんです。

 

そもそもこのコメントがなんなのかはよくわかりません。何?

 

 ライターさんが書いてんだから当たり前じゃろ、と思われるかもしれませんが、自分の創ったキャラクターの創作物にセンスを発揮するかどうかは作者が選ぶことができます。

 樋口であれば、もっと当たり障りのない会話や皮肉っぽいコメントとかでも全然「らしさ」として受け入れられたであろうところ、意外にきちんと対象に向き合っているコメントやセリフが多く見受けられるあたり、やっぱり樋口自身のセンスとして描かれているといえそうです。

 

 さて、「感性が豊か」とはどういうことでしょうか。

 樋口は本当のところ、感情や心が持っている力を知っています。にも関わらず、客観的な「正しさ」の強さを知っているがゆえに、信じて何かを託すには脆すぎるものとして、自らの主観を表現には用いないようにしてきました。

 

 アイドルという仕事には、大なり小なり自己表現が求められます。他のアイドルもすべからくそれと向き合ってきたわけですが、樋口にとってのそれは今まで封じ込めてきたものでした。

 

 

 信じるに足る力があることに気付きながら、それが壊れることも容易に想像できてしまうから、信じて委ねることへの抵抗を拭えない。それでも、武器はそれしかない。

 さながらプロデューサーに抱いていたそれと同じような矛盾を、樋口は自分自身に感じていたんです。

 

 樋口円香が「正しさ」を抜け出して、その上で自分自身の表現を「間違ってない」と思えるようになること。

 

 ファンとして、というよりひとりの表現者として、筆者はそれを切に願っています。

 

 

 

3. おわりに

 

 長々と重たい話をしましたが、もうすぐ終わりです。なんと5659字あるらしいです。ここまでストレートに読んでくれた律義な人がどれくらいいるかわかりませんが、本当にありがとうございます。お疲れ様でした。

 

 ここまでWINGに絞って話をしてきましたが、せっかくなので少しだけカードの話をさせてください。

 登場から1年という短さもあり、樋口のカードはあまり枚数がありません。その中でも、昨年秋に実装された2枚目にして円香P必修といわれる限定PSSR【ギンコ・ビローバ】が

 

 

忘れてください。全部。

 

おわり

(筆:さきたま)