2016年12月11日
直腸がんのため
加藤初が66歳の若さで
この世を去った。
今日で三回忌だね。
ほんと
いいピッチャーだったなぁ…
ハジメが亡くなったって
聞かされたのは
親族の方たちに見送られ
お葬式などが
全て済んだ少し後
今日はね
その時の気持ちも込めながら
みんなと一緒に
加藤初という男を偲びたい
そう思ってるんだ。
ハジメは
1971年ドラフト外で
西鉄ライオンズに入団し
プロ1年目で17勝を挙げ
新人王に輝く
東尾修とともに
ライオンズを支えていた彼が
巨人に移籍してきたのが
1975年のオフのこと
その年は
長嶋茂雄監督就任1年目で
最下位になった年
V9巨人を牽引してきた
長嶋さんを始め
森さん、黒江さんが引退
王さんが足の故障でダメ
そこで犠牲を払って
2つの大きなトレードが
行われたんだ。
1つが加藤初・伊原春樹と
関本四十四・玉井信博
そしてもう1つが
日本ハムファイターズの張本勲さんと
高橋一三さん・富田勝さんのトレード
この2つのトレードは
チーム内に大きな刺激を与えたよ。
どういう刺激かって言うとね
例えば、一三さんは
巨人の左のエースとまで
言われた選手だよ。
もしかしたら
俺の名前もあったかもしれんけど
そのレベルの選手たちが
トレードに出されるという現実
残った選手たちの心情がどういうものか
なんとなく想像つくかな？
張本勲さんの打撃
加藤初の勝ち星
これはもちろんのことだけど
「いい加減なことしてると出されるぞ」
この刺激が
優勝への原動力になったのは
間違いないと思うよ。
このトレードで
一三さんが背負っていた21番を
引き継いだのが加藤初だ。
写真がないのが残念だけど
見た目のイメージと変わらないのが
加藤初という男
ひょうひょうとしていて
感情を表に出さないのか
出ないのか。
ポーカーフェイスで
何を考えているのかわからないし
口数も少ない。
ついたあだ名が
「鉄仮面」（笑）
まぁ、俺の悪太郎よりは
いいだろう。
体も俺くらいで
大きい方じゃないけど
重いボールを投げていたのが
強く印象に残ってるね。
三振も取れるピッチャーだったなぁ。
黙々と
粘りっこく投げてたね。
移籍1年目から大活躍でね
先発はもちろん
リリーフでも登板して
ノーヒットノーランまで
やってくれちゃってさ
嬉しいことがあっても
ニヤッとするくらいで
大笑いしてるところは
見たことないねぇ。
ハジメは酒を呑まないから
俺と行動を共にするのは
麻雀とゴルフだったね。
これがまた上手いのよ。
大抵の人は勝てなかった。
ゴルフのスコアで勝ったの
江川くらいじゃないのかな？
俺たちが現役の頃って
麻雀が身近な娯楽でね
たいていの若者ができた時代
だから遠征先の旅館やホテルにも
麻雀卓が普通に置いてあってね
移動日とか時間がある時に
ハジメが1人で
麻雀卓に座ってんのよ。
「ホリさん、やりましょうよ。」って
誘うんじゃないんだよ。
俺が気がつくまで
じっと座って待ってんの（笑）
それが合図なんだな。
いや～麻雀やっても
顔色一つ変えないからね
手強いよ～
トランプでもさ
良いカードや待っていたカードが
手元にきたら
一瞬でも表情とかが
変わったりするもんじゃない。
見事に変わらないんだから（笑）
全然読めなかったね…
移籍1年目
優勝が決まった後
現役続行が不可能とまで言われて
入院したこともあった。
でもそういうことはみんな
後から聞くことばかりだった。
何度か病気に
苦しんだこともありながら
投げ続けた19年
そして巨人の21番として
現役を引退した男
強い意志を秘めながら
そんな苦しみさえも
表情に出さず
自分の中だけに
納めてきたのかな。
仲間が逝ってしまうのは本当に嫌
ハジメ、
2年越しの思いになっちゃったけど
今日は君の話が出来てよかった。
楽しい時間をありがとうな。
いつものように
麻雀卓に座って
待っててくれてるのかもしれないけど
でもね、今の俺の腕じゃあ
まだハジメに勝てそうもないから
もう少し腕を磨いてからね。
それまで待っていてよね。