昨日、俺の携帯電話が鳴った。

 

 

 

西村健太朗からだった。

 

 

 

何事かと思い

思わず「どうしたの?」

って聞いたら

 

 

 

引退します、って。

 

 

 

予想していない答えが

返ってきたもんだから

 

 

 

「まだできるだろう」と言うと

 

 

 

今年7月に肩を痛めちゃって

今はもう思うようには投げられない

それで球団と相談して決めました、って…

 

 

 

西村のプロ1年目は

俺の監督就任1年目

 

 

 

彼は広島県広陵高校出身で

高校から巨人に入団

 

 

 

広陵高校時代は

1年秋からエースで投げ

4季連続甲子園出場

1度の全国制覇

 

 

 

甲子園で投げていた時の

彼のイメージは

速いまっすぐと

キレのあるスライダー

 

 

 

スライダーと言えば

こんな会話を

したことがある。

 

 

 

プロに入って

そのスライダーを

投げようとしないから

 

 

 

西村に

「スライダーはどうしたの?」

って聞いたら

「曲がらないんです。」って

 

 

 

「投げ方忘れちゃったの?(笑)」

なんて話をした覚えがあるけれど

本当にいいスライダーを

持ってたよね。

 

 

 

そのプロ1年目

2004年シーズン後半

 

 

 

2軍から「西村がいい」

という報告を受け

すぐにピッチングコーチに

見に行ってもらった。

 

 

 

コーチの意見も聞き

1軍に上げてみた。

 

 

 

西村という男は

今の岡本和真みたいに

体が大きくて

 

 

 

話聞いてんのかい?

っていうくらい

のほほんとしてるんだけど

 

 

 

物事に動じない強さ

体の大きさのイメージにない

器用さがあって

クイックもできる。

 

 

 

これは1軍で使える

と思ったね。

 

 

 

まずは慣らせる

という意味でリリーフ起用した。

 

 

 

プロ初登板は

ほろ苦いデビューだったけど

その後すぐに

プロ初先発の機会を与えてみた。

 

 

 

コントロールがまだ甘かったから

打たれはしたけど

これは投げさせていけば

いいピッチャーになれる

 

 

 

そう思わせてくれる1年目だった。

 

 

 

俺の構想では

西村は先発ピッチャーとして育てよう

そう考えていた。

 

 

 

プロ2年目

2005年の前半は

2軍で鍛えてもらい

 

 

 

彼のプロ初勝利は

2005年9月1日対ヤクルト戦

松山坊っちゃんスタジアム

 

 

 

7回まで0点で抑え

8回に1点を失った。

 

 

 

8回投げ切って3-1

勝利投手の

権利を持って交代させた。

 

 

 

初完投は焦ることはない。

上出来ですよ。

 

 

 

この時は自分で

確か左中間だったかな

タイムリーツーベースまで

間違って打ってくれちゃってさ(笑)

 

 

 

忘れられない試合の1つだよ。

 

 

 

西村には

ピッチャ―に必要不可欠な

スタミナがあり

 

 

 

外からは見えないけど

甲子園で勝ってきたピッチャー特有の

内に秘めてる強いものがある。

 

 

 

来年は先発ローテーションの

一角を担うまで

大きく成長してくれよ

そう願って終わったシーズンだった。

 

 

 

彼のように馬力があって

万能型のピッチャーは

ベンチからすると

使い勝手のいいピッチャーだ。

 

 

 

チーム事情もあって

この15年間

巨人軍のために

 

 

 

先発・リリーフ・抑えと

なんでもこなして

どんな場面でも投げてくれた。

 

 

 

本当にありがとう。

 

 

 

万能なうえに

抑えに回っても

セーブ王を獲得して

記録を残すなんざ

やってくれるじゃないの。

 

 

 

近めに投げきれず

つまづいたこともあったけど

 

 

 

その後、シュートを覚え

自分の武器にしたりと

努力もしてきた。

 

 

 

そして

怪我も多かったし

苦労もしたね。

 

 

 

でも君は人間的にもいいし

このプロでの経験が

人生の肥しになるだろう。

 

 

 

「他球団で野球をやるという

選択肢は僕にはない。」

 

 

 

この心意気、痺れたねぇ。

 

 

 

15年間

本当にお疲れさまでした。

この次の人生の方が長いんだ。

ぜひ頑張ってほしい。

 

 

 

そして2年間

一緒にユニフォームを着て

戦ってくれたこと

俺は忘れないよ。

 

 

 

連絡くれてありがとう。