先日三越の雪肌精へ娘と行ってきたときのこと。
買い物がすんでからランチに行ったのだが、そこでRE_PRAYのプレイヤーズガイドの話になった。
この本のことはまだ書いてなかった。
あまり本の類は買わない娘がこれは買ったって。攻略本だもんね。さすがゲーマーだわ。
羽生さんが初めこの半分のサイズで作ろうとしたのわかるよ。攻略本てA5だもんね。でもうまくまとまらなくて大きくなっちゃった。(なら価格倍にしたっていいのに)
A5がゲームの攻略本なら、A4だとアニメの設定資料集になるねえ。アニメオタクとしてはその方がなじみがあるわ。オタクにしてクリエーターでもある母と子には特別な本であった。
では今更ながら、RE_PRAYプレイヤーズガイドについて、少し。
宮城初日公演の放送のときは、見ながらチェックしようという野望はもろくも崩れ去ってしまった。(テレビから目が離せないよ~)
それで娘と顔を合わせてこの本の話題になったときに二人ともが食いついたのが、そのありえない制作過程と羽生さんの才能の凄まじさだ。
私は元漫研部員。
娘は映像も使う広告デザイナー。
それぞれの立場で、あのアイスストーリーの制作過程を見て、ありえな~~~い!と叫んだのである。
まずあのストーリー、ナレーションというかモノローグというかのセリフの全てを、事前に全部書いていたこと。
イメージが湧きやすいようにと、それを自分で語って音声を作って渡していたということ。
その語りがほぼそのまんま使われたということ。
なんだそれはーーーーー!
それはもう「プロット」とはいわないぞ~~~
人それぞれにやり方はあるとは思うが、例えば私が漫画を描いていた頃は、物語の骨組みになる言葉や文章を箇条書きにしていた。冒頭から結末までの物語の流れだ。肝になるセリフとかはあるだろうけど、イメージの言葉の羅列。それがプロットだと思う。
そこから各キャラクターのセリフを全部書きだす、シナリオを作る。
そのセリフをこま割りの中にはめていくのがコンテ、ネームだ。
中には全部いっぺんにやる人もいるかもしれないけど、私はそんな感じでストーリー漫画を作っていた。
羽生さんがここで掲載している「プロット」とは、相手に渡すために事細かに書いてあるんだろう。でも読んでいくとショーの中で聞いたナレーションそのままだよ。
つまり、それが本番でそのまま使われているんじゃないか。じゃあこれはもう「シナリオ」だよ。それも一発で決定稿って。
あの完成度のストーリー、あの説得力のセリフを、編集、じゃねえスタッフと詰めて作り上げるんじゃなくて、羽生さんの原稿そのままを採用するって。すごい。
だってあのシナリオすごいじゃん。プログラムを組み込みながらちゃんと一本のストーリーになってるし。
1部のせきたてるように破滅に突っ込んでいく流れはまじですごい。
文章や言葉使いもだ。二人して、「区々たるものなんて初めて聞いたよね~」とその文学性にビビッていたもの。
あんなストーリーをあんなセリフを、アスリートに書かれるなんて、物書きの立場がない。私漫画あきらめててよかったわ。
さらに驚いたのが、イメージ用にと録音された羽生さんの声を、ほぼそのまま使ったって?多少いじって作ることはあっても、語りはそのままか。
これはてっきり作り上げた動画に合わせて、ちゃんとしたスタジオで、アフレコ状態で収録した音声だと思っていたのに。
逆。
羽生さんの語りに合わせて映像を作っていったというのか。
現地でショーを見たときは、羽生さんの語りがうますぎると思っていた。演技とか声の使い分けとか表現がすごいと。
映像に合わせて、念入りな演技指導のもとにアフレコしたんだと思っていたのに。なんかすごい衝撃だ。
ついでにいうと、神様と呼びかけるところの羽生さんの動きは、自分の語りにあわせてフリーで動いたって。音楽だけじゃなく語りにもあわせて動くのか。もう本当に天性の表現者なんだな。
語りも、演技も、表情管理も、なにもかもすごい。これで役者でも声優でもないってさ。びっくりだよ。
そしてデザイナーの娘が驚いていたのが、Vコン(ビデオコンテ)を羽生さんが作ってきたっていうことだった。
通常Vコンとは制作側がクライアントに対して、こんな感じでいかがですかというふうに作ってお伺いを立てるものなのだそうだ。なのにここではクライアントである羽生側から作成されたと?
娘がいうにはこんな楽なことはないと。こういう風に作ってと提案してもらえるのだから。
でもここまでやってこられたら、プロとして負けていられないと。うんそうだろうね。
すごいな、プロとプロ、一流と一流がぶつかりあって作り上げられた作品なんだな。
いやもう、制作の過程を知らされるにつけ、本当にあのアイスストーリーの物語部分をすべて羽生さんが書ききって語りきってから始まったのだと、衝撃を受けている。
あれは「攻略本」であるから、ここで明かされたいろいろな事項を実際のショーの流れと突き合わせる作業をやるともっとたくさんの気づきがあるのだと思うけれど。
今はまず、制作過程の驚きと、創作者としての羽生結弦の底なしのポテンシャルにおののくことでいっぱいいっぱいである。
制作総指揮って、伊達じゃない。
今更ながら、羽生結弦さん、とんでもないわ。
すごい人を好きになっちゃったもんだわ。
同じ時代に生きて、見て、聞いて、応援できることが本当にありがたいことだと思うのでした。